がんになっても快適に暮らすヒント Vol.4 日本女性の約8割? マンモで見えない「デンスブレスト」

山崎多賀子●美容ジャーナリスト
発行:2016年11月
更新:2016年11月


超音波よりもマンモのほうが 見つけやすい乳がんもある

山崎 ならば今は、マンモを受けたら検査結果を聞くときに「自分の乳腺濃度を教えてください」と聞くしかないですね。自由検診なら聞きやすいですが、自治体や職場で行う集団検診も受診したクリニックに問い合わせれば教えてくれるものでしょうか?

戸崎 そういった問い合わせは過去に皆無だったので、医療機関も戸惑うかもしれませんが、検診結果は受けた方の大切な情報です。それを教えないのはおかしな話です。

山崎 自治体や職場検診でも、予約する際や受診時に、検査結果と一緒に自分の乳腺濃度を教えてほしいと伝えるといいですね。面倒がられても、問い合わせが増えれば対応せざるを得なくなります。

または、値段は高いけれど、一度、自由検診で自分の乳腺濃度を確認しておくのも手。そしてデンスとわかったら、自費でも超音波を追加で受けることが大切ですね。

ところで、デンスとわかったら超音波だけでマンモは省略してもいいのですよね?

戸崎 いえ、決してそうではありません。そこが誤解されやすいのですが、マンモは、超音波で見つからない石灰化によるがんを見つけるのが得意で、デンスであっても必要です。

山崎 そうだ。私もデンスだけれど、私の乳がんはしこりを形成せず石灰化で広がるタイプで、マンモで見つかったのでした。やはりマンモも受けたほうがいいのですね。

40歳代まではマンモ+超音波のほうが がん発見率が高いという研究結果も

マンモ単独より超音波併用群のほうが明らかに乳がんの発見率が高いことが証明。ちなみに併用群では視触診単独陽性は0。併用すれば視触診を省略してもよいという結果に

戸崎 ではもう1つの理由、『過剰診断』について説明しましょう。過剰診断は、非浸潤性乳管がん(DCIS)の中でも、放っておいても悪さをしないタイプまで全て、マンモが拾ってしまうことを指します。現在は組織を調べておとなしいタイプではと捉えられても、悪性と診断されれば治療が行われるので、このことを過剰診断と呼びます。

山崎 乳がん患者が増えている理由の1つに、過剰診断が増えていることを指摘する医師もいるようですね。

戸崎 そうですね。膨大なデータから、将来的に悪さをしないタイプが確かにあり、ほとんどが石灰化で限局しているなど、およその特徴もわかってきましたが、まだ治療不要のがんを正確に特定する決め手に欠けています。

ただ遺伝子の特定など、世界中���研究が進んでいて、近い将来、「昔はがんと診断されていたけど、これはがんもどきなので放っておいて大丈夫ですよ」という時代が必ずやってきます。そうなると過剰診断の問題はなくなります。

山崎 「がんもどき」が早くわかるようになることを期待しています。ところで、日本は欧米に比べて乳がん罹患年齢が若いことから、日本人の40代を対象とした乳がん検診で初の大規模なランダム化比較試験「J-START」が実施され、結果が出ましたね。

戸崎 はい。J-STARTは、40歳代の若い世代を対象に、マンモグラフィ単独とマンモに超音波を加えた検診をそれぞれ3万5千人ずつ、計7万人というとても大規模なスタディで検証しました。その結果、マンモ単独群で見つかったのは2割弱。超音波を併用した群では超音波で見つかった人が3割強という結果で、若い世代はやはり超音波が有効であることが明らかになりました(表)。

乳腺濃度を知って 自分に適した乳がん検診を!

山崎 日本は若い世代で乳がんになり、デンスも多いので、見逃しを防ぐためにも、乳がん検診に「超音波」という選択肢も積極的に提示されることは、重要ですね。

つい先日、患者会の方から聞いた話ですが、乳がん検診にマンモか超音波を選べる企業があって、ある女性はマンモのほうが完璧だと思い、ずっとマンモを選択していたそうです。でもそのあと、自分で乳がんを見つけてしまったそうです。

やはり、乳がん検診に完璧はなく、自分に適した検診を選ぶことが大切だと広く伝えないといけないと思いました。

そしてそれ以前に、いまや先進国の乳がん治療にそれほど差がないのに、乳がん死数が下がらないのは日本だけ。他国に比べて乳がん検診の受診率の低さは、無視できません。

検診についてまとめると、40歳以上の乳がん検診は、最低2年に一度受診。日本人はデンスが多いので自分の乳腺濃度を知ることが大切。そしてデンスの人は超音波を追加するか、マンモと交互に受ける。

それでも乳がん検診に完璧はないので、自分の乳房の変化に気を配る。という感じでいいでしょうか?

戸崎 はい、それでいいと思います。

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