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がんになっても快適に暮らすヒント Vol.7 すべてのがん患者を支えるために…… がん患者団体のネットワーク組織「全国がん患者団体連合会」
患者の意見を反映した「がん対策」へ
志半ばで亡くなった先輩方の努力をつないでいきたい
山崎 最後にひっくり返されては、これまでの努力が水の泡ですからダメ押しですね。ここに至るまで相当苦労をされたようですが、天野さんをそこまでして突き動かすものはなんなのでしょうか?
天野 正直言うと、もともとは自分ががん患者団体の連合組織をつくるつもりはなかったんです。しかし、せっかく先輩方が作ってくれた「がん対策基本法」とがん対策が、このままでは何も変わらない。つくらないと本当に先に進まないという危機感はもっていました。それと、「いつになったら、がんの患者さんは団結するのか」と、何人もの医療者や患者さんから言われていました。より良いがん医療やがん患者支援を実現するために、がん患者がまとまらないと話にならないと。
山崎 がん患者がまとまらなければ、患者不在の議論になってしまうということですね。
天野 そうです。僕が2009年に30歳代で「がん対策推進協議会」の委員になったときに、日本経済新聞の「ひと」欄に僕のことが紹介されたのです。ある記者の方から「天野さん、新聞読みましたよ」と声をかけられたので、「読んでくれたのですね。恐縮です」と答えたら、「何か勘違いしていませんか? あなたが協議会の委員になったのは、あなたが優れているからではない。これまでたくさんの患者さんが命を削ってがん対策基本法を通し、がん対策推進協議会ができて、その場にあなたがたまたまいるだけじゃないですか。恐縮ですなんて言っている暇があったら、この記事を活用してがん対策を国に訴えるのがあなたのやるべきことですよ!」って本気で怒られてしまって。頭を殴られたようでした。確かに僕は努力が足りませんでした。それを記者の方は見逃さなかったのです。
山崎 その記者の方もよく言ってくれましたね。
天野 本当です。その一言は今も僕の指針になっています。その記者の方も、がん対策基本法が成立するまでの血のにじむような努力や無念や志半ばで亡くなっていった人たちをずっと見てきたから、僕にガツンと言ってくれたのです。その先輩方に比べれば僕はまだまだ甘いですが。正に汗と涙と血の結晶が、がん患者が委員として協議できる「がん対策推進協議会」です。僕はたまたま生きているから、亡くなった先輩方の無念を胸にやっているにすぎないのです。
山崎 いやいや、想いを引き継ぐ人が出てくれたことに感謝���ます。なにより「改正がん対策基本法」に全がん連がかかわった成果は大きいですね。
天野 ある全国紙の記者の方から、今回一番の成果は、面倒くさい団体と思わせたことだと言われました(笑)。面倒くさいと思わせないとがん対策が軽んじられますからね。
がん患者団体の経験や知識を共有して
いましんどい思いをしている患者に届けていく
山崎 全がん連は、他県のがん患者団体のお2人と一緒につくられたのですね。
天野 はい。最初は少人数から始めようと、がん対策推進協議会の患者委員も一緒にやって気心の知れた愛媛の松本洋子さん、鹿児島の三好綾さん、そして監事に千葉の櫻井公恵さんに声をかけて4人体制で始めました。
山崎 いまはどれくらいの患者団体が加盟しているのですか?
天野 現在、全国の35がん患者団体が加盟しています。数をどんどん増やすというより、しっかり患者支援をしている団体の仲間を増やしていきたいと思っています。
山崎 今後、要望活動以外に、どんな活動をされるのですか?
天野 がん患者団体が互いに経験や知識をシェアしてみんなで質を高めていくことも、全がん連をつくったもう1つの大きな目的で、今後はその部分もしっかりやっていきたいと思っています。
山崎 先日は、がん患者学会を開催され、子どもたちに向けた「がん教育」のセミナーも主催しましたね。このページでも取材させていただきました(vol.6「いのちの授業がん患者が子どもたちに伝えたいこと」)。
天野 自分たちが学ぶことは大切です。がん診療連携拠点病院が整備され、相談支援センターもできましたが、医療の場だけで解決できることには限りがあります。地方ではがんに対して偏見を超える差別があるのも事実です。社会全体の中で患者さんを支えていくために、がん患者さんが置かれている現実を医療者や国、そして一般の人に広く問うていきたいですね。大きな話だけでなく、いましんどい思いをしている患者さんを救っていくことが僕らの一番の使命であり、原点です。
山崎 設立から間もないですが、このような成果を積んでくれた全がん連をとても心強く感じます。これからの活動に期待し、応援していきます。





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