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がんになっても快適に暮らすヒント Vol.13 がん治療と膣トラブル
治療法として潤滑剤の使用や 膣専用レーザー「モナリザタッチ」も有効
デリケートゾーンケア商品の例

図3 膣専用レーザー「モナリザタッチ」
山崎 そうなんですか⁉ 膣は子宮や卵巣との通路という感覚でしたが、とても大切な臓器なのですね。膣萎縮に治療法はあるのですか?
福山 膣を若返らせる治療として、膣錠やホルモン補充療法があります。これらは女性ホルモンを補充する治療ですが、乳がんや子宮体がんの患者さんは、基本的にできません。
山崎 乳がん治療のガイドラインでも勧められていません。ホルモン補充療法は乳がんや子宮体がんの再発を促さないというデータもあるようですが、患者からすると、絶対に大丈夫なのかわからなければ、命にも関わるチャレンジはできません。
福山 そうですね。それ以外ですと、性交痛に関しては先ほど山崎さんもおっしゃっていた「潤滑ゼリー」で保湿し、滑りをよくすることで痛みを和らげることはできます。クリニックでは、乳酸配合で膣内のpH値を酸性に保ち、膣の自浄作用を高め、潤滑剤にもなるジェルをお勧めしています(図2)。ただあくまで対処法で、完全に萎縮していると、ゼリーでも痛みを防ぐことはできません。
最新の治療法として、クリニックでは3年前から膣専用レーザー「モナリザタッチ」を導入し、ホルモン剤が使えない方にも使っています(図3)。
山崎 私もモナリザタッチが日本上陸した初期に、プレス対象の勉強会に参加したことがあります。当時はかなり斬新というか、膣の老化ケ��の必要性も含めて半信半疑でした。
福山 当時、医療者向けの勉強会でも男性医師は引いていました(笑)。モナリザタッチは、炭酸ガスのフラクショナルレーザーを膣内に照射して、血流をよくすることで膣内を若返らせる医療機器としてかなり有効です。年齢に関係なく(イタリアでは80歳の方も受けている)膣萎縮によって起こる様々なトラブルを解消できるので、ホルモン補充療法が行えないがん患者さんにも使える点もいいと思っています。
山崎 性交痛だけでなく、感染予防、臭い予防、膀胱炎、尿失禁にも効果が望めるそうですね。フラクショナルレーザーはもともと顔のエイジングケアとして開発され、膣に応用した機器。欧米は今、膣のエイジングケアが注目ですね。
福山 はい。イタリア製の医療機器で、ヨーロッパでは広く使われています。アメリカのFDA(米国食品医薬品局)にも2014年12月に認可がおりていて、がん治療による膣萎縮に良いのではと、研究も行われています。残念ながら保険は使えませんが、日本でも少しずつ導入するクリニックが増えています。
山崎 実際に膣萎縮にどれ位の効果が得られるのですか?
福山 1度の照射でも、即効的な効果が得られます。照射後、膣粘膜が完全に入れ替わる1カ月半をピークに厚みや潤いが戻り(図4)、性交痛は照射後1週間後でかなり軽減されます。1カ月半ごとに3回当て、あとは半年から1年に1度照射することで膣内を維持できると思います。1度の施術は5分ほどで膣内と外陰部も照射でき、外陰部のクッション性も戻ります。
山崎 膣内だけに作用して、女性ホルモンの分泌を促すなどはないのですね。がん治療を経験した方でモナリザタッチが使えない方はどんな方ですか?
福山 膣内に放射線を照射している方の改善は難しいです。乳がんや子宮体がんの治療で早期閉経による膣萎縮には適しています。もちろん年齢に関係なく加齢による膣萎縮全般に効果的ですので、悩んでおられるなら1度ご相談ください。若い年代でがんの治療後に妊娠が可能な方も、一時的に膣萎縮が起こっていて性交渉ができないという方の選択肢になると考えています。
山崎 モナリザタッチは自由診療で、まだ高額なのが残念です。誰でも受けられるような値段設定になるといいのですが。
福山 私のクリニックでは、がん治療による膣萎縮の方は特別料金の設定も考えていますので、ご相談ください(図5)。


洗いすぎには要注意 臭いや症状がある場合はすぐ婦人科へ
山崎 ところでこの数年、デリケートゾーン、つまり外陰部の専用ソープや保湿剤、膣用のオイルなど専用コスメが続々登場しています。欧米ではデリケートゾーンのケアはエチケットとして常識だそうですが、日本はこれからというところでしょうか。
福山 日本人は清潔志向ですが、デリケートゾーンのケアに関しては遅れています。膣萎縮が原因で痒みや臭いがあると不潔だと思いこみ、ボディソープでゴシゴシ洗いすぎて、さらに乾燥や荒れを引き起こしている人も少なくありません。
今までなかった臭いや症状がある場合はすぐに婦人科を受診してください。日常のケアは、低刺激なソープで優しく洗い、専用の保湿剤で保湿をするだけでも、違和感はかなり改善されると思います。
山崎 膣のトラブルで悩んでいるがん患者は自分だけではないと、多くの方に知っていただきたいですね。
*モナリザタッチを導入している全国のクリニックは、HPでも検索することができます
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