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がんになっても快適に暮らすヒント Vol.17 ニューヨーク乳がん視察ツアーvol.2 現地報告
宿泊施設もある「アメリカン・キャンサー・ソサエティ」を見学
ビルの高層階にある「アメリカン・キャンサー・ソサエティ」は全米で一番大きい非営利がん患者サポート機関です。入口を入ってまず驚くのが、重厚でゆったりしたリビング。テーブルには大きな花瓶に美しい花々が生けられ、その向こうにはテラスが広がっている。テラスへ出てみると、高層ビルの狭間からエンパイア・ステートビルも見え、まるでホテルのパーティ会場に来たかのような気分です。

ここでは様々なイベントが行われ、そのための広いキッチンスペースもありました。でも、キャンサーソサエティ最大のサービスは、60部屋もある宿泊スペースにありました。なんと、ニューヨークの病院へ通院が困難ながん患者や家族が、無料で滞在することができるのですって!
入居の条件は自宅からニューヨークの病院へ行くのに90分以上かかり、抗がん薬治療や放射線治療で週3日以上通院しなければいけない人が対象だそう。最低3日から、最高で1年間利用できるとか。入院している方は対象外ですが、家族が急変した場合、遠方に住む家族のみでも利用が可能な場合もあるというフレキシブルさ。ただ、いつもウエイティングがあるので、早めに病院のソーシャルワーカーなどに相談しておくことが大切です。
ここニューヨークの施設が最大規模ですが、提携施設が全米に3,000カ所以上あるそうです。
日本でも通院が難しくて病院近くにアパートを借り、経済的な負担に困っている人もいます。こういった施設があったらどんなに助かるでしょう。

世界26カ国に広がるがん患者の美容のサポートプログラム「L.G.F.B.」

さてこのアメリカン・キャンサー・ソサエティで月に1度開催されているのが「L.G.F.B.」です。今回の私たちのために、担当者のアニタさんが来てくださいました。
「L.G.F.B.」はアメリカで1989年に発祥したがん患者のための美容サポートプログラム。ワシントンD.C.を拠点に、全米化粧品工業会とアメリカ対がん協会、全米コスメトロジー協会の共催で「ルック・グッド・フィール・ベター・ファウンデーション(Look Good Feel Better Foundation)」を設立し、現在は米国以外にも世界26カ国にまで広がっています。私のようにがん患者の美容ケアを行っている者の間では知られる存在ですが、残念ながら日本には入ってきていません。多くの組織が横つながって協力し美容サポートをするという点でも、私はとてもいいなと思っています。
レッスンは定員10名。ウィッグや脱毛ケア、スキンケア、メイクアップまで指導してもらえますが、テキストブックと一緒に支援メーカーの豪華コスメセットが一式もらえることも、患者にとっては気分が上がることだと思います。
日本では国立がん研究センターが舵をとり、アピアランス(外見)ケアについて研究が始まっています。近い将来、どこにいてもがん患者(男性も含め)が美容や外見ケアについての相談ができる体制が整うことを願っています。(http://lookgoodfeelbetter.org/)
「メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター」のブティックでお買い物!
さて、最後にご紹介するのは、全米でも最も人気が高いがん専門病院の1つとして知られる、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター。
今回の案内人、ブロディー愛子さんが通う病院でもあります。ここでは団体見学を受けていませんが、ブティックがとてもイケていると聞き、個人的に行ってきました。
エレベーターを降りてすぐ、目の前に現れたショーウィンドウはまさにピンク一色の世界。花でできたピンクのブラにウィッグ、小物。本当にがん専門病院? という華やかさで、見るだけで気分が上がります。
店内は帽子やスカーフ、ウィッグ、下着にピンクリボングッズなどが豊富に陳列されていて、つけ毛や帽子付きウィッグをかぶったりして、なんと1時間近くも滞在。
病院のブティックだからこそ、オシャレで楽しい気分になれるほうがいい! にきまってます。
でも実は日本でも、同じ思いを抱えた乳がんサバイバーが、会社「㈱tokimeku japan」を興し、病院内におしゃれなケア用品を置く、セレクトショップをプロデュースし始めているのをご存知ですか?(https://www.facebook.com/tokimekujapan/)
今回、ニューヨークを視察しながら、日本のがん患者の環境はこの10年で本当に大きく変わったのだなと実感しました。大きな変化はがん対策基本法案の成立をはじめ、患者らが自ら声を上げて行動したことがもたらしたのだと思います。これからもアメリカのいいところを吸収しつつ、日本らしい体制で、誰ががんになっても、自分の人生をしっかり歩める環境になって欲しい。その小さな一助が自分も担えるよう、考えて行動していきたいと思ったのでした。


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