がんの治療中・治療後の食事 毎日の食事を楽しみに変える工夫って?!
抗がん薬治療中の食事
抗がん薬治療によって引き起こされる様々な副作用が、食事を妨げ、体力を低下させる場合がある(図4)。

そのようなときは、薬剤の副作用への対処と調理法の工夫という両面から食事を支えることが必要だ。また、須永さんは食事の妨げとなる理由について栄養士に相談するのも有効だと話す。
「食事が食べられない原因を整理することで、どんな対応ができるか考えられます」
いくつか例を挙げてみる。
食べ物の「におい」が気になる
食欲不振の原因の1つに、食べ物の「におい」が挙げられる。たとえば、温かい白飯、魚料理、煮物料理などだ。
「そのような場合には、ご飯は、冷めても食べられるように「おにぎり」にしたり冷茶漬けを試しても良いでしょう。パンや麺類でも同様にサンドイッチや冷やし中華・焼きそばなどを試しても良いでしょう。魚料理はショウガや香味野菜を使って臭みを抜いたり、洋風にしてトマトソースやホワイトソースをかけてみるのも良いでしょう」
食欲がない
1回の食事の量が多いと、見ただけで気持ちが悪くなる人もいる。1回の量を減らすと同時に、脂っこいものを避け、消化の良いものにする。また口当たりのよいさっぱりしたものに変えるのも1つの方法だ。また、食欲がないときは、酢などの酸味を加えて目先を変えてみるのも良いだろう。卵かけご飯や冷やし中華などの、のどごしのよい料理も良いだろう。
体重減少が気になる
体重の減少が気になるときは、効率よくエネルギーを摂ることが必要となる。脂肪やタンパク質を強化した食品を摂るとよい。
水分補給は、お茶などエネルギーの少ない食品ではなくミルクティーや果汁などエネルギーのある食品にしたり、ドレッシングやマヨネーズはカロリーハーフのものではなく、通常のものを用いたり、いわゆるダイエットとは逆のことをして、、高カロリーにする。汁物は、具沢山の味噌汁やポタージュに代えてみもよいだろう。
トーストは、卵、ミルク、砂糖を使ったフレンチトーストとすると���少量で高エネルギーの食品になるので、良いだろう。果物を食べるときはヨーグルトを加えて栄養価を上げる。
間食も重要になってくる。タンパク質も補給できるアイスクリームも良いだろう。
口内炎が気になる
濃い味、酸味、柑橘類、香辛料、固いもの、熱いものは刺激が強いので避けたほうがよい。
浸透圧の高いリンゴジュースなどは柑橘類でなくてもしみてしまうので注意する。
一方でマヨネーズは、脂肪分が粘膜を保護するので、口触りがマイルドになり、刺激を和らげる効果も。「あん」でとろみを付けたり、ゼリー寄せにすることも、炎症部分を保護する工夫になる。
食事の温度を人肌程度にすると、刺激になりにくい。
吐き気や嘔吐
吐き気や嘔吐は、消化管の通過障害や閉塞、化学療法や放射線療法の副作用、便秘、胃内食物の停滞による膨満、胃の痛みのほか、脳に腫瘍があるとき、また血液中のカルシウム値が高くなっているときなどに起こる。
また、吐き気や嘔吐の原因によっては、食べないほうがよい場合もあるので、医師への相談が必要だ。
吐き気、嘔吐があるときは、冷たく、口あたりが良く、飲み込みやすいものが食べやすいだろう。冷麦、卵豆腐、茶わん蒸し、絹ごし豆腐、ヨーグルト、プリンなどが代表的だ。味付けは食べやすさを優先する。
「におい」は、嘔気・嘔吐を助長するため、気になるものは避けるようにする。また、脂肪の多い食品や、脂っぽい料理は避ける。水分はこまめにとり、温かいものと冷たいものを同時には食べないようにし、ゆっくり食べる。
味覚異常
塩味や醤油味を苦く感じたり、金属のような味に感じたり、甘味に過敏になり、何を食べても甘く感じる場合もある。逆に甘味を全く感じない場合もある。また、味がない、砂をかんでいるように感じると表現されることもある。
味の感じ方は、個人差が大きく、自分自身で対処法を探ることも大切である。例えば、塩味で苦味、金属味がする場合は、塩分を控えめにしてだしを効かせたり、胡麻や柚子などの香り、お酢などの調味料を使ったりしても良い。
なんでも甘く感じる場合は、みりんや砂糖を使用せず、柑橘類やお酢などでさっぱりとした味付けを試して見ても良いし、塩・醤油・みそ味など濃いめの味付けを試しても良いだろう。
味を感じにくい場合は、お寿司のように醤油(調味料)を付けて食べると、視覚的な効果と、醤油が舌に直接触れるため、味を感じやすくする工夫になる。味覚異常を訴える患者さんは、臭覚も変化していることがある。個人差が大きいが、肉や青魚、納豆、野菜の煮物、香り強い野菜などの「におい」に敏感になるようである。
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