肝・胆・膵がんの食事 退院後も栄養指導を利用し、食事で上手に体のサポートを
膵がんと食事

膵臓の仕組みと働き
膵臓は、胃の後ろに隠れるように位置している長さ20cmほどの長細い臓器だ。十二指腸に囲まれている3分の1を膵頭部、中央部3分の1を膵体部、残りの3分の1を膵尾部という。
膵臓は、消化液を分泌する外分泌機能と、血糖を調整するホルモンを分泌する内分泌機能の大きく2つの働きをもつ。
膵液と呼ばれる消化液には脂肪、炭水化物、タンパク質の分解酵素が含まれる。
またランゲルハンス島と呼ばれる組織のα細胞からは血糖を上げるグルカゴン、β細胞からは血糖を下げるインスリンというホルモンが分泌されている。
膵がん手術と食事への影響
膵がんの術後の食事状況は、1.膵体部・膵尾部の切除、2.糖尿病の有無、3.十二指腸や胃への侵襲の程度、4.膵臓全摘――によって異なってくる。
1.膵体部・膵尾部を切除した場合
「膵尾部、膵体部を切除した場合、消化管への影響がとくになければ、術後に厳しい食事制限をかける必要はありません」と高嶋さんは話す。しかし、残った膵臓の機能によっても影響してくるという。
「術後、血糖値や便の状態を観察して、患者さんにより対処法を変えます」
膵臓の機能が低下している場合は、脂肪便や脂肪肝になったり、糖尿病を合併することもある。
2.糖尿病がある場合
たとえ部分的な切除でも、膵臓の働きが弱くなるので、引き続き糖尿病の食事指導を行う。インスリン治療を指導するケースも出てくる。
3.胃や十二指腸なども切除した場合の食事
膵頭部を中心とする手術は、一般的に膵臓と周辺臓器(十二指腸、胃など)も切除することがある。その場合は、「消化機能と血糖コントロールに影響が出ることが多いために、脂肪とエネルギー摂取の制限が必要となる。
十二指腸や胃などの消化管への侵襲があるため、術後しばらくは1日5~6回の分割食にする場合もある(図4)。
糖尿病を合併していると、血糖値の管理も必要になってくる。二重、三重の食事制限は、術後の患者さんの大きな負担となるが「個人差はありますが、だいたい術後3~6カ月くらいで食欲が戻ってきます。術前と同じくらい食事が摂れるようになってきたら、糖尿病の食事に切り替えます」と高嶋さん。
目の前の問題に1つず���取り組み、普通の食生活に戻っていくために高嶋さんらはサポートしている。
4.膵臓全摘と食事への影響
膵臓の全摘では、外分泌機能も内分泌機能も同時に失われるため、術後はインスリンの投与が必須であり、消化酵素の服用を続けることもある。
「消化酵素を服用していても、脂質は過剰に摂らないほうがいいので、油の多い食事は控え、なるべく消化の良いものを摂るように」と高嶋さんは患者さんに話すそうだ。
復帰に向けて栄養管理の指導は欠かすことができない。
手術をしない場合の食事
進行膵がんで、抗がん薬などの内科的な治療を受ける場合の食事では、抗がん薬の種類にもよるが、食欲不振で食べられない患者さんは少なくない。食欲不振のときは、食べやすい果物などが勧められるが、膵がんの患者さんでは糖尿病を合併しているケースが多い。
「甘いものに偏るのはよくありませんが、食欲がないときは食べられるものが限られてしまうので、治療期間で一時的に食欲がないときは優先しても良いと思います」
とくに、食欲不振時の血糖のコントロールは、食事だけでは行うことは難しいため、インスリンや、薬を併用して行うことも大切である。
退院後も栄養指導を
膵がんの手術後は、膵臓機能の低下や喪失、糖尿病の有無、消化管の侵襲などによって、エネルギーや脂質制限、あるいはインスリンや薬での血糖コントロールなど治療後の課題は多岐にわたる。
高嶋さんによれば「糖尿病を合併している膵がん患者さん、膵頭部切除、膵全摘をした患者さんのほとんどは、栄養指導を受けている」という。
病院には、必ず管理栄養士が配置されており、栄養指導を受けることができるが、食事に困ったり疑問を抱いたりしても、なかなか栄養指導を受ける機会がないのが実情ではないだろうか。食事の摂り方に戸惑いを覚え、悩むケースもあるに違いない。
高嶋さんは「入院期間中はもちろんですが、外来でも継続的に管理栄養士と患者さんがお話しできればいい」と感じている。
外来で受診する患者さんは、どのようにして病院の管理栄養士に相談すればよいのだろうか。
「外来患者さんの情報は管理栄養士のもとに必ず入ってくるわけではありません。患者さんは、主治医や看護師に相談して、栄養相談の時間を確保してもらってください。主治医からの紹介があれば、管理栄養士が介入しやすいはずです」
同じカテゴリーの最新記事
- 高血糖や肥満は放っておかない インスリン増加とがん化促進の関係がわかってきた
- 腸内細菌、歯周病菌が大腸がんの進行にも関与⁉︎ 大腸がん再発予防は善玉菌を減らさない食事とリズム感ある生活で
- 高齢進行がん患者の悪液質を集学的治療で予防・改善 日本初の臨床試験「NEXTAC-ONE」で安全性と忍容性認められる
- 第3回(最終回)/全3回 夫が命をかけて私に残してくれたもの
- 体力が落ちてからでは遅い! 肺がんとわかったときから始める食事療法と栄養管理
- 第2回/全3回 〝噛めなくてもおいしく食べられるごはん〟 アイデアが次々に沸いてきた!
- 第1回/全3回 ある日突然、夫が普通のごはんを食べられなくなった――
- がん悪液質に対する運動介入のベスト・プラクティス
- 進行・再発がんでケトン食療法が有効か!? 肺がんⅣ(IV)期の介入研究で期待以上の治療成績が得られた
- 栄養補助食品を利用して食べる意欲へつなげる