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副作用はこうして乗り切ろう!「味覚障害」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2015年10月
更新:2020年2月


おいしく食べられる味を探す

脳に伝達する神経にダメージを与える抗がん薬は、タキソールなどのタキサン系、シスプラチンやエルプラットなどのプラチナ化合物系、また悪性リンパ腫のCHOP療法に使われるオンコビンなどです。

ダメージを受けた神経の回復には、年単位の時間がかかることもあります。その間の対策としては、比較的感じやすい味、おいしく食べられる味を意識して見つけ、それを主体に献立を考えることです。

「味がしない」「味が薄い」と感じるときは、まず味付けをはっきりさせましょう。削り節を煮出したり、煮物にみりんや酒を加えたり、シチューにバターを加えてコクを出したり。その際、塩分の摂りすぎには気をつけて。柚子やレモン、酢などで酸味をきかせたり、からし和え、ごま和え、梅肉和え、生姜焼き、カレー風味など、味にアクセントをつけるのもよい方法です。

また、できたての熱々より、少し冷ましてから召し上がるほうが、味がはっきりしますので、試してみてください。

「すべて甘い」と感じる場合もあります。そのときは、砂糖やみりんの使用を減らすのはもちろん、塩、醤油、味噌などを少し濃くしたり、酸味を入れたりスパイスを効かせたりして甘味を隠します。汁物は、比較的甘味を感じにくい傾向があるので試してみてください。

「肉類や塩、醤油が金属の味」に感じられることもあるようです。塩味や醤油味の場合、食前にレモン水や果汁で味覚を刺激してみたり、塩や醤油の代わりに味噌を使ってみることをお勧めします。肉の味がまずく感じる場合は、あえて肉を食べなくても、チーズやヨーグルト、牛乳などでタンパク質を摂ればいいと思います。

「まずい」と感じた食品を、栄養のために無理して摂ろうとすると、かえってストレスになりますので、避けることをお勧めします。ストレスが強くなると味覚を感じにくくなるという研究結果も出ていますので、とにかくまずいものは食べない!

味覚は次第に回復しますので、そのときを楽しみに待つ、という気持ちで気楽に考えて、おいしく食べられる食材を探してみてください。

タキソール=一般名パクリタキセル シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ エルプラット=一般名オキサリプラチン CHOP療法=シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン オンコビン=一般名ビンクリスチン

あせらず、気長に回復を待つ

傷んだ神経の治療は「時間」。ひたすら待つことです。その間、いかに苦痛を減らして過ごすか、対策はこれに尽きます。中には、味覚異常が年単位で続く抗がん薬もありますし、その間においしく食べられる食材や食べ方がなかなか見つけられない、という場合もあります。とてもつらいですよね。食べる楽しみは、生きる楽しみにも直結しますので、味覚障害で食欲不振が続いたり、つらい思いをされている方は、早めに医師や看護師、栄養士に相談してみてください。

ともかく、味覚に異変を感じたら、おいしく感じられる味を見つけて、それを楽しく食べることがいちばん。皆とおしゃべりしながら食べたり、気分を変えて庭で食事をしてみたり。他にも、米飯をおにぎりやお寿司に、パンをサンドイッチにしてみるなど、目先の工夫だけで食欲が出たり、おいしく感じる場合もあります。食欲や味覚には、食べる場所や雰囲気も、大切なのです。

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