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副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の下痢」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2015年11月
更新:2020年2月


大腸の切除部位で下痢の頻度も異なる

大切なのは、抗がん薬治療中の下痢を軽視せず、下痢の程度と頻度をメモし、医師や看護師に伝えて、その時々に適した対応をしていくことです。

その際、手術歴なども伝えてください。とくにS状結腸切除や人工肛門を造設している患者さん。S状結腸は便を溜める場所なので、ここを切除している人は、普段から下痢気味のことが多いのです。そこに抗がん薬の作用が加わると、あっというまに下痢が悪化します。また、人工肛門を腸のどこに造ったかで下痢の起こり方は変わります。

ちなみに、分子標的薬の副作用にも下痢はあります。がん細胞で過剰に発現するEGFR(上皮成長因子受容体)の働きを阻害するタルセバやイレッサ、ジオトリフなどです。

EGFRは腸管にもあるので、これらの薬を服用すると、腸管粘膜が刺激を受けて下痢を起こします。イレッサやタルセバは頻度も1~2割と低いので、カンプトやフッ化ピリミジン系抗がん薬に比べたら軽度ですが、ジオトリフはほぼ全員の患者さんに下痢が起こるので注意が必要です。

タルセバ=一般名エルロチニブ イレッサ=一般名ゲフィチニブ ジオトリフ=一般名アファチニブ

食物繊維を多く含む食品は注意

下痢になったときの対策は、早発性、遅発性とも同じです。

自己判断をしないで、まず、医師の診断を受けて、適切な時期に整腸薬や下痢止めを服用します。また、心身共にリラックスして安静にすることも大切です。そして、食事に気をつけ、水分を摂りましょう。

体を動かすことで腸が刺激されることもあるので、下痢のときはなるべく安静に過ごしましょう。腹部を温めると、腸の動きを落ち着かせるとともに、腹痛緩和にもよいようです。

食事は消化のよいものを少量ずつ、回数を増やして食べることを心掛けてください。脂っこいものや香辛料は、腸の動きを亢進してしまうので避けましょう。

食物繊維を多く含む食品も、消化が悪く水分を多く吸収してしまうので、下痢に拍車をかけてしまいます。全粒粉パンや玄米、生野菜、豆類、ナッツや菓子、果物などが食物繊維を多く含みます。逆に、白パンや白米、うどん、熟したバナナ、すりおろしたリンゴ、卵、鶏肉、魚、豆腐、などが繊維質の少ない食品です。

■図3 下痢のとき避けたい食べ物(右)とそうでない食べ物(左)

スポーツ飲料を薄めて飲もう

下痢のときは大量の水分を失うので、脱水症状を防ぐために水分補給を意識的に。ポカリスエットなど、カリウムが多くて吸収しやすいスポーツ飲料を2倍に薄めて飲むのがお勧め。リンゴジュースや味噌汁、ビフィズス菌を��れるヤクルトもいいでしょう。その際、冷たくせずに人肌くらいのぬるめのものが、お腹に優しいです。

コーヒーや紅茶などカフェインの入ったものやアルコールは、腸への刺激になるので、飲みたくてもグッと我慢!。牛乳や乳製品も腸管を刺激して、腸の蠕動運動を活発にしてしまうので、避けたほうがいいでしょう。

最後に、肛門のセルフケアについて。下痢が続くと、そのたびに肛門の粘膜が刺激されるうえ、肛門周辺の粘膜が常に湿った状態になるため、ふやけて切れやすくなります。

傷ついた肛門の粘膜から、あっという間に細菌が入って感染症を起こしてしまうこともあります。ですから、下痢のときこそ、ウォシュレットを活用しましょう。水圧は弱めにして優しく洗って、ゴシゴシふかないこと。乾燥機能付きだと、なおよいでしょう。もともと痔のある方は、下痢時に悪化しやすいので、早めに痔専用の軟膏を塗ることをお勧めします。

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