副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の便秘」
自己判断で便秘薬を飲まない
というわけで、便秘でおならがたくさん出る場合は、腸の蠕動運動はいいけれど便が固くなって出づらくなっている場合が多いので、緩下剤で便を柔らかくして出してやり、同時に、崩れた腸内環境を整えるために、ビフィズス菌を含む整腸薬や乳酸菌飲料で、腸内の細菌バランスを安定させるという方法をとります。
一方で、オンコビンなど神経に作用する抗がん薬は、腸の動きを支配する自律神経を障害するため、腸そのものの動きが鈍くなって便秘を起こします。その場合は、下剤を使って腸を動かしてやることが必要になります。
つまり、同じ便秘でも、抗がん薬の種類や便秘の状況によって、選ぶべき薬が異なるのです。勝手に判断して間違った薬を飲むと、強烈な腹痛にみまわれ、大変なことになりかねません。くれぐれも自己判断せず、医師や看護師、薬剤師に相談していただきたいと思います。
ところで、みなさんは下剤の飲み方に男女差があるのをご存知でしょうか?女性は、女性ホルモンの影響で、もともと便秘になりやすい体質のため、ある意味、便秘薬に慣れておられるので、それほど抵抗なく下剤を飲まれます。ですが、男性はホルモン的にも、骨盤内の臓器の配置的にも、本来便秘になりにくいため、抗がん薬治療で初めて便秘を経験する方が多いです。そのため下剤を飲むことに抵抗感を持たれる方が多いように思います。便が出ないからといっても大したことあるまいし……と、便秘薬を処方されても飲まない人が多いのです。
「たかが便秘、されど便秘」です。
抗がん薬の影響で腸の蠕動運動が弱まったまま、もしくは便が固くなって出ないまま便秘を軽視して放置しておくと、腸が全く動かなくなる腸閉塞(イレウス)になる危険性もあるのです。そうならないためにも、薬を怖がらずに、早めの対処を心掛けましょう。
便秘の不快感を我慢しない
便秘になりやすい、という面からみると、腸の開腹手術をしたことがあるか否かでも大きく異なります。
腸は、一度空気に触れると動きが鈍くなる特徴があるため、過去に、大腸や胃の切除術を受けたことのある人は便秘になりやすいのです。ですから、その情報を医療者に伝えてください。そして、便秘になりやすい抗がん薬を使うときは、あらかじめ便秘薬を処方してもらうことをお勧めします。同じ大腸でもS状結腸切除術を受けた方は、逆に下痢になりやすいです。手術をした医師に、腸のどの部分を切除したのか、どれくらい便秘になりやすいのかを聞いておくとよいでしょう。
抗がん薬治療の副作用としてのつらさを、下痢と便秘で比べると、つらくてやっかいなのは下痢。けれども、圧倒的に頻度が高いのは便秘です。
便秘になりやすい抗がん薬を使う方は少なくても、制吐薬は、ほぼすべての患者さんが使用しています。ですから、制吐薬が原因で起こる便秘は、程度の��こそあれ、抗がん薬治療を行う患者さんの多くが、悩まされるのです。
しかし、便秘がひどくて抗がん薬治療を中断しなくてはならない、ということはまずありません。ですから、便秘の不快感を1人で我慢したりせず、気軽に医師や看護師に相談していただきたいと思います。
腹部マッサージや便秘に効くツボ刺激など、ちょっとしたコツもいろいろあります(図3、図4)。生活上の工夫も含めて、一緒に考えていきましょう。


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