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ひと工夫で乗り切ろう!化学療法時の味覚障害に対する食事

監修●鍋谷圭宏 千葉県がんセンター消化器外科部長
監修●前田恵理 千葉県がんセンター栄養科 管理栄養士
取材・文●池内加寿子
発行:2016年1月
更新:2019年7月


苦味が強いときはレモンなどの酸味を、味を薄く感じるときはスパイスをプラス

この調査結果を受けて、同栄養科とキッコーマンが、食事のレシピを共同開発し、公開している。

「うまみ以外の味を強く感じるFEC療法を受けるときには、薄味でもうまみのある白だしを利用したり、苦さへの対応として、酢やレモンなどの酸味を加えることなどをお勧めしています。レシピとしては、例えば『豆乳茶碗蒸し』や『ラタトゥイユ レモン風味』などを患者さんには紹介しています。一方、味を弱く感じるTC療法の場合には、FEC療法よりも口腔粘膜障害が少ないので、ゴマ油や味噌でコクを出し、ラー油やユズコショウで辛味を効かせた『ピリ辛ごま味噌そうめん』や『鶏肉ソテー柚子こしょう風味』などがお勧めです」(前田さん)

FEC:アンスラサイクリン系薬剤を想定

●予想される症状:苦い ●工夫:「和風・だし」「すっぱい」

●材料(2人分)
卵 1個、無調整豆乳 200㎖、白だし 大さじ2、銀あん(白だし 小さじ1、水 60㎖、片栗粉 小さじ1)、カニかま、三つ葉
●作り方
❶茶碗蒸しを作る
卵・豆乳・白だしをよく混ぜて、茶こしやザルでこす。2つの器に注ぎ、ふんわりラップをかけ(1㎝くらい隙間をあけて)、電子レンジ200Wで10分加熱する
❷銀あんを作る
小鍋に銀あんの材料を入れ、よくかき混ぜながら弱火にかけ、煮立ってとろみがついたら火を止める
❸①に②をかけ、カニかまと三つ葉を添える

●材料(3人分)
豚ももスライス肉 150g、ナス 4本、サラダ油 大さじ2、「なすと豚肉のラタトゥイユ」(デルモンテ・洋ごはんつくろ)1袋、レモン汁 適量
●作り方
❶フライパンにサラダ油を熱し、乱切りにしたナスを中火で4分炒める
❷ナスに火が通ったら、一口大に切った豚肉を加え、さらに2分炒める
❸惣菜の素を加え、1分炒め合わせる
❹器に盛り、レモン汁を振り掛ける
TC���タキサン系薬剤を想定

●予想される症状:味が弱い(口内炎などは少ない) ●工夫:スパイス・薬味を利用

●材料(2人分)
素麺 3束、長ネギ 1/2本、ゴマ油 小さじ2、水 100㎖、薬味(長ネギ 1/4本、キュウリ 1/2本、ミョウガ 1個)、「キャベツのごま味噌炒め」(キッコーマン・うちのごはん)1袋、ラー油 小さじ1/2
●作り方
❶鍋にゴマ油を熱して、みじん切りにした長ネギを炒め、惣菜の素と水を加え、ひと煮立ちさせる。あら熱をとって、冷蔵庫で冷やしておく
❷素麺をゆで、流水で締めて器に盛る
❸薬味の長ネギは小口切り、キュウリとミョウガは薄切りにして器に盛る
❹①のつけだれにラー油を加え、器に注ぎ分ける。③を②に添える

●材料(4人分)
鶏もも肉 2枚、酒 大さじ3 、油 大さじ1、レタス 1/2個、たれ(長ネギ 1/2本、サラダ油 小さじ1、酒 小さじ1、ユズコショウ 大さじ1)、プチトマト 4個、レモン 適宜
●作り方
❶鶏肉は2~3㎝角に切り、酒をからめる
❷たれを作る。フライパンに油を熱し、みじん切りにした長ネギをさっと炒め、酒、ユズコショウを加え、火を止める
❸鶏肉をフライパンで色良く焼く
❹器にソテーした鶏肉と2㎝幅のざく切りにしたレタスを盛り合わせて、たれをかける。飾りに1/2にカットしたプチトマトを添え、お好みでレモン汁をかける

このレシピでは、調理の手間がかからないように惣菜の素(キッコーマン「うちのごはん」シリーズなど)も利用している。

●苦味など味を強く感じるときは

・苦味、塩味、甘味などの味を強く感じる場合は、香りとうまみが際立つ白だしを活用し、苦味に対しては、酢やレモン、ユズ、スダチなどの柑橘類、ポン酢などで、酸味と爽やかさを加える。

・醤油を苦く感じるときも、和風だし、洋風だし、中華だしを塩で調節するとよい。

・汁物やゼリーなどは口の中を通過しやすいので、苦味を感じにくい。

・オクラなども苦味を感じやすいので、他の材料で代用する。

●味を感じにくいときは

・口腔粘膜障害がない場合は、トウガラシ、ラー油、ユズコショウ、サンショウ、ショウガ、カレー粉、ウメ、カラシなどでアクセントをつける。

・塩や醤油などの調味料は料理全体ではなく、素材の表面につけると味を感じやすい。

・濃い目のだしや、酒、みりん、味噌、ゴマ、バター、乳製品、サワークリームなどを使い、コクを効かせる。

●口腔乾燥で飲み込みづらいときは

・口の中が乾く場合には、飲み込みにくくなるので、のどごしの良いものを。

・米2~3合にオリーブ油大さじ1杯を加えて炊くと、しっとりとして飲み込みやすく、おいしいご飯に。

・パサつく鶏ささみは、片栗粉をつけて湯引きする(さっとゆでる)と、つるりとした食感になり、飲み込みやすい。

・カニ玉などあんかけご飯、フレンチトースト、温野菜、ポタージュスープもお勧め。

千葉県がんセンターで配布されている「化学療法中の食事のレシピ」(左)および売店などで販売している「がん患者さんのためのレシピと工夫」。簡単に作れる食事のレシピが掲載されている

「ご家族や、外来で対応している医療スタッフは、化学療法中の患者さんに、食物の味を強く感じるか、弱く感じるか、口が渇いていないか、この3点を聞いてみて、対策を助言するとよいでしょう」と鍋谷さんはアドバイスしている。

ここで紹介したレシピのほか、化学療法中の食事レシピは、千葉県がんセンター栄養科やキッコーマンのホームページでも閲覧できる。また、同センター作成の『がん患者さんのためのレシピと工夫』にもレシピが掲載されており、医療系の通販サイト(メディカルスマイルウェブ)で購入も可能だ。

千葉県がんセンター栄養科
キッコーマン・千葉県がんセンターとの取り組みによるレシピの紹介
メディカルスマイルウェブ

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