がん発生を抑え、免疫力を強化する知られざる植物パワー ファイトケミカル。野菜や果物の強力な抗がん作用に注目!
発がん原因の3分の1は食生活に由来する
ガーリック、キャベツ、カンゾウ、大豆、しょうが セリ科(にんじん、セロリ、バーズニップ) | ↑ 重要性の増加の度合い |
たまねぎ、茶、ターメリック、全粒小麦、亜麻、玄米 柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ) ナス科(トマト、ナス、ピーマン) アブラナ科(ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ) | |
マスクメロン、バジル、タラゴン、カラス麦、ハッカ、オレガノ、キュウリ、タイム、アサツキ、ローズマリー、セージ、ジャガイモ、大麦、ベリー |
[デザイナーズフーズ・リストから学ぶこと]
1 | にんじん、キャベツ、セロリ、たまねぎなどの野菜類にがん予防の可能性 |
---|---|
2 | 野菜は淡色野菜より緑黄色野菜のほうが健康的と思われがちだが、淡色野菜も強いがん予防効果 |
3 | トップに位置する食品には、抗酸化作用のある成分が含まれる |
4 | がん予防以外にも免疫力を高め、生活習慣病を防ぐ作用 |
がん対策先進国のアメリカでは、1990年代にがん予防の見地から、「デザイナーフーズ・プログラム」という国家プロジェクトが行われている。
膨大な疫学調査データをもとに、約40種類の食品の抗がん作用を調べている。
この研究は世界的な反響を呼び、世界の研究者がこの報告を受け継ぐ形で、さまざまな研究に取り組んでいる。実は高橋さんもその1人。ランキング上位に位置づけられている食品の効用の由来を探り続けた結果、高橋さんが到達したのがファイトケミカルだったわけだ。このデザイナーフーズ・プログラムには、がんを予防するうえでも、また抑制をはかるうえでも学ぶ点が少なくないと高橋さんはこう語る。
「まず理解したいのは私たちが日常的に利用している野菜や果物に、実は強力な抗がん作用が含まれていることでしょう。とくに野菜に関していえば、従来は緑黄色野菜が健康的といわれていましたが、淡色野菜にも強い抗がん作用が潜んでいます。また上位にランクされている食品は、作用のしくみはまだ解明されていないものの、いずれも強力な抗酸化作用を持っていることも判明しています」
これまでのアメリカ、ハーバード大学などでの研究により、発がん原因の3分の1以上は食生活に由来することが判明していると高橋さんはいう。と、すればこのデザイナーフーズ・プログラムから得られた教訓はより重みを増すはずだ。
ファイトケミカルの働きとは
では、この研究で上位に示された食品の抗がん作用の主体となるファイトケミカルの働きとはどんなものなのだろう。
高橋さんはファイトケミカルは大きく(1)赤ワインに含まれるアントシアニン、緑茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボンなどのポリフェノール類、(2)キャベツやブロッコリーに含まれるスルフォラファンなどのイオウ化合物、(3)スイカ、トマトに含まれるリコピンなどの脂質関連物質、(4)キノコ類に多いβグルカンなどの糖関連物質、(5)アミノ酸関連物質、(6)香気成分―の6タイプに区分されるという。
そのなかでまず、ポリフェノール類を見るとアントシアニンやカテキンには強力な抗酸化力が含まれている。たとえばカテキンの活性酸素の除去力は同じように抗酸化物質として知られるビタミンEの20倍にも達しているほどだ。また同じポリフェノール類のイソフラボンは、乳がんのプロモーターとなる女性ホルモンのエストロゲンの過剰分泌を抑える作用があり、発がんを抑制する。
イオウ化合物で注目したいのがスルフォラファンとともにワサビに含まれるアリルイソチオシアネートやニンニク、ネギの刺激成分であるメチルシステインスルホキシドだ。これらは免疫細胞を活性酸素から守り、がんの発生、増殖を防ぐ働きを持っている。
一方、糖関連物質では、ニンジン、カボチャなどに含まれるβカロチンには、皮膚や粘膜を健康に保つ免疫バリアーを強化する働きがあることがわかっており、リコピンには前立腺がん、肺がんを予防する作用があることが確認されている。また糖関連物質であるβグルカンは腸管免疫に働きかけて、全身の免疫を活性化することも明らかになっている。さらに香気性成分の一種であるバナナに含まれるオイゲノールには、TNF-α(腫瘍壊死因子)の産生など免疫細胞を強化する作用があることも判明している。
赤ワイン・紫芋・赤しそ (アントシアニン) | ポリフェノール | 強力な抗酸化作用 |
---|---|---|
クランベリー (プロアントシアニジン) | 抗酸化作用は ビタミンEの50倍 ビタミンCの20倍 | |
お茶 (カテキン) | ビタミンEの約20倍の 活性酸素除去力 | |
トマト・スイカ (リコピン) | カロチノイド | ビタミンEの100倍の抗酸化力 |
[免疫力を高めるファイトケミカル]
キャベツ (イソチオシアネート) | イオン化合物 | 免疫細胞の数を増し活性化 免疫細胞を活性酸素から守る |
---|---|---|
ニンニク、ネギ類 (システインスルホキシド) | ||
クランベリー、松樹皮 (プロアントシアニジン) | ポリフェノール | 抗ヒスタミン効果炎症の軽減 |
キノコ類 (βグルカン) | 糖質関連物質 | がん細胞を攻撃する 免疫細胞を活性化 |
バナナ (オイゲノール) | 香気成分 | 免疫細胞の数を増し活性化 |
[抗がん作用を持つファイトケミカル]
ブロッコリー、キャベツ (スルフォラファン) ワサビ (アリルイソチオシアネート) ニンニク、ネギ (メチルシステインスルホキシド) | イオン化合物 | 免疫細胞を活性酸素から守り、がんの発生や増殖を防止 |
---|---|---|
大豆 (イソフラボン) | ポリフェノール フラボノイド類 | 女性ホルモン様作用、乳がんや前立腺がんに有効 |
スイカ、トマト (リコピン) | カルチノイド カロチン類 | 前立腺がん、肺がんの予防効果 |
キノコ類 (βグルカン) | 糖質関連物質 | 免疫細胞を活性化して、がん細胞を攻撃 |
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