サバイバーの保険:完治後は緩和型保険に入れる可能性も 加入している医療保険やがん保険をしっかり活用
がんになっていない人の選び方は
ちなみに、がんと診断されていない人たちには、次のようにアドバイスする。
「最近は入院日数も短いので、入院日額などの基本保障を厚くしてしっかりカバーし、特約は内容を吟味して最小限にするのが合理的です。たとえば、先進医療特約は月100~200円前後のわずかな負担で、自己負担分の高額な費用が保障されるので(限度額1,000万円が主流。2,000万円までの保険も登場)付けておくと安心です」
では、医療保険とがん保険、どちらに入るべきか。
一般の医療保険に、がん診断給付金やがん通院の特約を付けると、そのぶん保険料が高くなる。そのため、医療保険とがん保険の両方に入るのとさほど変わらなくなる。
「最近人気があるのは、診断給付金だけで主契約が作れるユニークながん保険です」
このタイプなら、手頃な保険料負担で、診断給付金だけを受け取れる。また、入院・手術の給付金、死亡保障など、必要なものを自由に選んで組み合わせることも可能だ。
がんサバイバー向き緩和型保険
A社 | B社 | C社 | |
入院・手術 | ○ | ○ | ○ |
退院後の通院 | × | × | × |
死亡 | × | × | ○ |
生存給付金 | × | × | ○ |
加入時診査・告知 | 告知 | 告知 | 告知 |
保障期間 | 終身 | 終身 | 終身・10年定期 |
入院給付金支払い 限度日数(一回/通算) | 45日・60日・ 120日/1,095日 | 60日・120日/ 1,000日 | 60日/ 1,000日 |
先進医療 | 先進医療給付金、 先進医療一時金 | × | × |
加入方法 | 対面 | 対面 | 対面 |
そのほか | 特約に、退院後180日以内の通院保障、がん一時金保障あり(ただし、条件あり) | 加入年齢:20~80歳。特約に先進医療給付金、死亡保険金あり | 加入年齢:40~75歳 |
※「がんサポート」調べ(2013年5月30日現在)
がんの経験者は、一般の医療保険やがん保険に新規には入れない。しかし、可能性はないのか。
「がんの治療、検査、経過観察、指導、通院が不要となった時点を完治として、完治後約10年経過して初めて入れる可能性が出てきますが、さらに診査がありますので、現状は引き受け基準が非常に厳しくなっているようです」
高橋さんは残念そうに話す。とはいえ、がんの完治後2~5年経過すると、加入条件の緩
「緩和型の医療保険」「緩和型のがん保険」に入れる可能性が出てくるという。
●緩和型医療保険
「厳しい状況のなかで、がんの手術や入院歴のある方でも入れる可能性があるのが、緩和型の医療保険や緩和告知型のがん保険(引き受け基準緩和型保険)です。緩和型という名のとおり、通常の医療保険やがん保険より加入の条件が比較的緩やかで、3~4の告知項(質問事項)のすべてが『いいえ』の場合、診査なしで入ることができます。ただし緩和型保険は、一般の医療保険やがん保険と比べると、保険料が1.7~2倍と高く、保障内容も限定され、契約後1年間はすべての保障が半分になります」
緩和型の医療保険はいくつかあり、それぞれ告知項目や保障内容、保険料等が異なる(表3)。
A社の場合は、「最近3カ月以内に、入院または手術を勧められていない」「5年以内にがんの入院・手術をしていない」「1年以内にほかの病気やケガで入院、手術を受けていない」など3項目。B社の場合は、「最近3カ月以内に入院、手術を勧められていない」「過去5年以内に、がんなどの病気で治療、診察、検査などを受けていない」「過去2年以内に糖尿病、脳卒中、心筋梗塞などの病気で入院していない」など4項目が必須条件となっている。
これらの告知項目すべてがクリアできれば、新規に加入して今後の入院・手術等に備えることも可能だ。がん以外の病気やケガも対象となる。
入院給付金日額1万円で、手術保障、先進医療特約を付けた場合の保険料は、A社の場合、50歳男性で1万756円、女性で9016円。E社の場合は、50歳男性で1万 238円、女性で7518円となる。
●緩和告知型がん保険
D社 | E社 | |
入院・手術 | ○ | 無制限 |
退院後の通院 | ○ | 5年ごとに1,000万円まで。入院を伴わない通院も保障 |
死亡 | × | × |
生存給付金 | × | × |
加入時診査・告知 | 告知 | 告知 |
保障期間 | 終身 | 5年間 |
入院給付金支払 限度日数 (一回/通算) | 無制限 | 無制限 |
先進医療 | × | 協定病院での 自由診療 |
加入方法 | 対面/ インターネット | 対面 |
そのほか | 加入年齢20~80歳。退院時一時金を保障 | 加入年齢:20~65歳。乳がん手術日からの経過期間、年齢、病期ごとに保険料が異なる |
※「がんサポート」調べ(2013年5月30日現在)
最近では、がん経験者が、がんの再発や再入院時に保障を受けられる「緩和告知型がん保険」という商品も登場している(表4)。
D社の場合4つの告知項目(①最近6カ月以内に病気で入院・手術をしたり、医師に入院・手術を勧められていないか②過去2年以内にがんで入院・手術をしていないか③過去2年以内に、がんまたは肝硬変、肺気腫等の病気と診断されたことがないか④女性の場合、乳房のしこり、乳腺から異常な分泌物や出血がないか)のすべてが『いいえ』なら、申し込み可能だ。診断書や査定不要で、インターネットでも申し込める。
基本保障は、がんの入院、手術(日帰り可)、退院時の一時金(20日以上入院した場合)、退院後の通院がセットで、がん診断時の一時金、先進医療特約は付けられないが、再発時に備えて最低限の費用を準備できる。保険開始後1年間は、保険金の額が半分になるのは、ほかの緩和型医療保険と同様だ。
保険料(月額)は、入院日額1万円、手術保障、入退院の一時金(10万円)、通院1日5,000円のコースだと、50歳男性なら4,719円、50歳女性なら2,808円となる。
●乳がん経験者のがん保険
初めてかかったがんが乳がんで、その後再発転移がない20~65歳の女性が対象の保険がある。がんで入院した場合の治療費(無制限)、通院費(1,000万円まで)、乳房再建やセカンドオピニオン外来などの自由診療分まで保障される。診断給付金はない。
病期ごとに加入可能な経過年数が設定されており、病期0なら6カ月、病期Ⅰなら1年、病期Ⅱだと3年、病期Ⅲ~Ⅳなら6年を過ぎると加入できる(診断書が必要)。保険料は、病期と手術日からの経過期間、年齢によって異なり、病期Ⅱで3年6カ月経過している50歳の人なら、1万 4730円となる。
「がん経験者が新規に保険に入る場合は、緩和型の保険から自分の条件と合うものを探すといいでしょう。なお、保険の給付金は請求しないと出ませんから、治療後や退院後など一段落したときに、すみやかに請求してください。請求せずに忘れていると3年で時効になり、保険金が支払われないことがあります」
保険商品内容:「がんサポート」調べ