遺族年金について知っておきましょう その2 年金加入履歴を調べてみよう
事例-2 転職回数が多く年金加入履歴に空白の時期がある場合
Dさん(40歳)が死亡。遺族は妻C子さん(39歳)長男(10歳)次男(9歳)。
C子さんは大きくため息をついた。先日、夫の四十九日の法要が終わり、今日やっと年金の手続きについて聞きに社会保険事務所の年金相談を訪れたのだ。C子さんは社会保険事務所に行く前に電話で何を持っていったらいいのか聞いてみた。すると「ご夫婦両方の年金手帳と認印を持ってきてください」とのこと。探してみると、C子さんの年金手帳は1冊だけだったのだが、夫の年金手帳が全部で4冊もでてきたのだ。すべてを持って、社会保険事務所へ行った。
「ご主人は保険料をきちんと払うという条件にあてはまらないので、このままでは残念ながら遺族年金を受けることはできませんね。他にどこかにお勤めだったことはありませんか?」
年金相談窓口での話によると、病気退職してから死亡までの半年間ほど国民年金を滞納していた期間があるため、特例の死亡前1年間の滞納がないことという「保険料納付要件」は満たしていない。したがって全加入期間(Dさんの場合20歳から40歳までの20年間)のうち滞納が3分の1未満でなければならず、Dさんの場合、4冊の年金手帳の番号を総合しても年金加入履歴で、あと1年ほど保険料を納めた期間が足りないとのことだ。あと1年……。
その後
C子さんの夫であるDさんにはたくさんの職歴がありました。転職が多かったのです。会社に勤めていて厚生年金に加入していたときもあるし、国民年金を納めていた期間、国民年金の保険料を滞納していたと思われる期間もありました。Dさんの年金手帳が何冊もあったのは、転職のときに以前の年金手帳を会社に提出して手続きするべきところを出さないまま、新しい年金番号の年金手帳を発行してもらったからなのでしょう。
Dさんの年金加入履歴には空白の期間が8年間ほどありました。この8年間のうちどこかに勤務して厚生年金に加入していたということがわかれば、「保険料納付要件」をクリアすることができるかもしれないとC子さんは考えました。C子さんはDさんの両親はもとより、古い友人、知人に協力を求めました。その結果、C子さんとの結婚前にDさんが2年間勤務していた会社を見つけ出し、なんとか遺族年金(遺族基礎年金と遺族厚生年金の合計で月額約14~15万円)につなげることができたのでした!
考えるべきこと
平成9年1月に基礎年金番号という制度が導入されました。これは一人にひとつの基礎年金番号が振り出されて、一個人の国民年金、厚生年金の年金加入履歴がそこにすべて記録され、年金履歴が一元管理できるというものです。しかし、実際には何回かの転職をしたDさんのように���一人で複数の年金番号を持っていることは決して珍しいことではありません。
このようなときには、いくつかに分かれている年金加入履歴を整理統合する作業が必要です。年金手帳が複数あっても、それぞれの番号がわかるときの統合作業は簡単ですが、手帳を紛失して年金番号がわからない場合は、本人の記憶だけが頼りとなります。
何十年も前に少しだけ勤めた会社など、本人でも思い出すのが大変なのに、その本人が亡くなっているような場合の調査は非常に困難です。特に転職を何回か経験されている方は、遺族年金のためだけではなく、自分の老齢年金のためにも一度職歴を整理して書き出しておくことをお勧めします。
また、国民年金の保険料滞納についてですが、「国が悪いから払わない」のではなく、是非「自分や扶養する家族のために」保険料を納めることを考えてほしいと思います。