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医療費相談:がん相談支援センターを活用して、使える制度を知る 公的支援制度を賢く利用して、病気と向かい合う

監修●菊池由生子 都立駒込病院医事課医療相談係・ソーシャルワーカー
取材・文●常蔭純一
発行:2013年7月
更新:2019年10月

家計を支援する傷病手当金

■都立駒込病院相談支援センター患者サロンが隣接し、医療情報室もある同センター。医療費など「医療福祉相談」のほか、「看護相談」「こころの相談」などを専門家から個室で受けられる

がんになって治療費がかさむと、家計にも影響がおよぶ。病気が原因で働けなくなった場合はなおさらだ。そうしたケースでは、どんな制度を利用すればいいのか。菊池さんに、大まかな制度利用の流れを説明してもらおう。

「会社に勤めていて雇用は継続しても、給与が支払われない場合には、まず健康保険制度で傷病手当金を利用してもらい、適用期間が過ぎて障害年金が受給できる人は請求します」

傷病手当金の適用期間は最長1年6カ月で、給与の約3分の2の金額を受給できる。受給期間が終わっても、障害が残って働けない場合は障害年金制度が利用できる可能性がある。具体的な金額は、3段階のなかで2級に認定された場合で、基礎年金として年間78万6,500円が支給され、18歳までの子どもがいればその分が加算される。

このように健康保険加入者の患者さんに対しては、手厚い支援制度が用意されている。それに対して、自営業者など国民健康保険加入者の場合は、傷病手当金などの制度がなく、支援制度の実情は心細いといわざるを得ない。

生活が厳しくなった場合には貸付制度もあるが、その場合は、保証人などが必要だ。生活保護制度の適用を受けるとしても、住まいの状況、資産などについて基準がある。

「生活保護は、他の制度を活用したあとの最終的な支援制度です。収入が国で決めた生活保護基準に足りないときに、その不足分だけが支給されます」

そのことを考えると、自営業者は「もしも」の場合に備えて、民間の年金制度などによる準備が不可欠だ。

さらに経済面での支援でいえば、とくにがん患者さんのためだけの制度というわけではないが、母子家庭あるいは父子家庭を対象にした「ひとり親支援制度」もある。

この制度では、児童扶養手当、児童育成手当、医療補助など多くの支援メニューが用意されている。

介護保険も積極的に活用する

がんになった場合には、こうした治療費、家計支援とは別に個々の患者さんの身体状況に対応した、さまざまな支援制度も用意されている。

もっとも一般的なのが、日常生活に困難が生じた場合の介護保険制度だ。がん患者さんのなかには、入院治療がひと段落したあと、通院治療を続ける人も少なくない。そうした場合には、介護保険制度が適用されるケースもある。

「介護保険というと、ヘルパー制度だけをイメージして抵抗を感じる人もいます。しかし、実際には歩行器や介護用ベッドのレンタルほか、多様な支援が用意されています。自宅療養者は、ぜひ活用したい制度ですね」

もっとも、この制度を利用する場合に知っておきたいこともある。年齢が65歳以上の場合には疾病を問わず制度が適用されるが、65歳未満の場合には、適用が「がん末期」など特定疾病に限られていることだ。

「患者さんは、がん末期と言われることに抵抗を感じる人もみられます。しかし、現実にはがん末期と認定されて介護保険を利用して、安定した療養生活を送っている人もいます。言葉にとらわれず主治医と相談し、申請をしてもよいでしょう」

また、治療後の後遺症によっては「身体障害者手帳」が交付されることもある。がん患者さんでは、大腸がんで人工肛門を造設した場合、喉頭がんで失声した場合などが該当する。治療に関連したさまざまな用具の補助が受けられるので、該当者はぜひ活用したい。

このようにがんになっても、多様な支援制度が用意されている(表4)。それらをうまく活用するには、まず、制度の存在を知ることが肝心だ。

「最近では、がん拠点病院はもちろん、中規模程度の病院でも相談窓口が設けられています。治療費や家計に不安を感じたら、そうした窓口で疑問や不安をぶつけてみることです」

多様な支援制度を賢く利用して病気と向かい合うために、まずはあなたの病院の相談窓口をチェックしたい。

■表4 経済的負担を軽減する公的社会保障制度

目 的 制 度 窓 口 内 容
医療費負担の
軽減
高額療養費制度 加入している
医療保険窓口
1カ月間の医療費自己負担額が、一定の限度額を超えた場合、超過額が払い戻される制度
医療機関窓口
での一時支払助成
高額療養費
貸付制度
加入している
医療保険窓口
高額療養費として払い戻される額の8割(保険者によって異なる)相当額を無利子で貸し付ける制度
医療機関窓口
での支払軽減
限度額適用認定証 加入している
医療保険窓口
医療機関窓口での支払額を自己負担限度額とすることができる制度
その他 高額療養費
受領委任払い
加入している
医療保険窓口
外来治療時、医療機関窓口での支払額を自己負担限度額とすることができる制度
生活福祉
資金貸付制度
市区町村の
社会福祉協議会
低所得者世帯・障害者世帯・要介護高齢者世帯・失業者世帯に、都道府県の社会福祉協議会が貸し付ける制度
ひとり親家庭等
医療費助成制度
市区町村担当窓口 父親・母親・養育者が、1人で子どもを育てている家庭の医療費を助成する制度
身体障害者手帳 市区町村担当
窓口・福祉事務所
身体に障害が残った方の生活を助成する制度
小児慢性特定疾患
医療費補助制度
市区町村健康福祉
センター・保健所
担当課など
がんを含む小児慢性特定疾患の治療にかかった費用のうち、世帯の所得税金額に応じて支払う自己負担額を超えた額を助成する制度
重度障害者(児)
医療費助成制度
市区町村福祉課など 心身に重度の障害がある方に、医療費が軽減される制度(自治体によって年齢・所得制限がある)
生活保護制度・
医療扶助
福祉事務所 病気で仕事ができない、収入が乏しいといったことから生活が困窮している場合に行われる制度。あらゆる手段を尽くしても最低限度の生活が維持できない場合に適用
傷病手当金 加入している医療
保険窓口
会社員や公務員などが保険加入中に、病気やけがで報酬を得られないときに保障してくれる制度。退職後も、条件を満たしていればもらえることもある
障害年金 市区町村年金窓口・
社会保険事務所・共済組合事務局
病気などで障害が残った65歳未満の方に、早期の年金支給を行う制度
医療費控除 税務署 1年間に一定以上の医療費の自己負担があった場合、税負担を軽減する制度
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