効果が高いほど出やすい手足症候群 予防ケアと早めの対処が大切
スキンケアの基本は清潔・保湿
対策としては、症状が現れる前の予防が大切。薬の投与を開始する前から肌のケアをしっかりとやっておけば、症状が出たとしても軽くすむ、という。
スキンケアのポイントは、まずは肌を清潔に保つこと。そして肌に潤いを与える保湿。乾燥は皮膚の敵。乾燥するとバリア機能が損なわれ、皮膚が傷つきやすくなってしまう。
清潔を保つため、石鹸を使った朝夕の洗顔、毎日もしくは隔日の入浴を励行する。低刺激の石鹸、または弱酸性~中性のシャンプー・ボディーソープをよく泡立て、やさしく洗う。風呂から上がったらタオルで体をこすったりせず、軽くたたくようにして乾かす。
洗ってきれいにしたあとは、低刺激の保湿クリームを塗る。保湿クリームでお勧めなのは尿素軟膏。ほかにワセリンやヘパリン類似物質も勧められる。
日常生活では強い刺激を避けるため次のことを励行したい。
・長時間の歩行や立ち続けることを避けて、足に力がなるべくかからないようにする。
・靴は柔らかい材質で足に合ったものを履く。
・厚めの靴下やジェル状の靴の中敷きを使い、足を保護する。
・きつい靴下を履かないようにする。
・熱い風呂やシャワーは控える。
・直射日光になるべく当たらないようにする。
また、タコやウオノメがあったり、手足に硬いところ(角質)がある人は、手足症候群が起こったときに悪化しやすいため、あらかじめ皮膚科医に削ってもらっておくほうがいい、と言う。
意外と気づきにくい足の症状
手足症候群が起こってしまったらどうするか。症状に気づいたら、できるだけその部位に刺激を与えずに安静を保つようにして、すぐに担当医に相談する。セルフケアに加えて、必要に応じて保湿剤や、腫れを抑えるステロイド外用薬などで治療する。「皮膚が赤くなって硬くなり、痛くなったときはステロイド薬のグレードを上げて治療しますが、いったん起こってしまったものはステロイド薬だけでは収まりません。何といっても最初に保湿剤で予防しておくことです」
意外と見逃されがちなのが足だという。「外来で治療する場合は素足になることがないので、医師も看護師もなかなか気づかない。患者さん本人の日ごろからの観察が大事です」
爪の周りが赤く腫れて痛くなる爪囲炎にも注意が必要だ。
手足症候群は普通、手のひらや足の裏に症状が現れるが、ひどくなってくると反対側にまで症状が現れるようになる。すると爪のあたりでも炎症が起こって、爪囲炎と似た症状が現れるが、これは爪囲炎とは違う、という。
「手足症候群は薬を休めば1週間から10日ぐらいで症状がよくなるのに対して、爪囲炎はなかなかよくならず、ときには何カ月もか��ることもあり、ある程度爪が生え変わるまで待つ場合もあります」
なお、爪囲炎のケアにはテーピングが有効(図6、7)。看護師がやり方を教えてくれるので、自分でできるようになるという。


参考情報
従来の抗がん薬と分子標的薬による「手足症候群」については、平成22年3月に厚生労働省から「重篤副作用疾患別対応マニュアル」の一環としてがん領域では「手足症候群」が作成・発行されている(山﨑さんもマニュアル作成委員の一人)。
内容は、患者さん向けには、家族の方も含めて、副作用の概要、初期症状、早期発見・早期対応のポイントなどを理解してもらうために、わかりやすい言葉で記載。
医療従事者向けには、副作用の早期発見・早期対応に資するために、ポイントとなる初期症状や好発時期、医療従事者の対応などが記載されている。
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