手足を冷やすことで抗がん剤の影響を減らし障害を軽減する 抗がん剤の副作用、爪・皮膚障害はフローズングローブで予防!
間もなく改良型が

「将来的には病院の売店などにも置いていけたら」と、中山さんは話している
アメリカ製の「エラストジェル™」は代理店が仲介して販売しているため、日本での価格は3万円ほどする。そこで価格を抑えて普及を促進しようと、KMBOGと大阪大学ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(研究成果の製品化を進める部門)、株式会社エバンス(大阪大学発バイオベンチャー)、ニッポー株式会社の4者で改良型フローズングローブを共同開発。商品化にこぎつけた(写真5)。
間もなく販売も始まり、入手可能になる。販売価格は未定だが、従来品よりも安くなることは間違いないという。また、病院や研究機関だけでなく、患者さんでも主治医を通して購入できるというのは朗報だ。
今回開発されたフローズングローブは、従来のアメリカ製のものを改良したもので、ミトン型(親指が離れていて4本の指はそろえて入れる手袋)のカバーと、内側に入れる保冷剤のセットというシンプルなつくり。保冷剤はマイナス20度程度まで冷やすが、カチカチに凍らず、シャーベット状になる素材を採用している。

「保冷剤の組成物を工夫して、よく冷えるうえに保冷時間を延ばすことができたので、従来のアメリカ製の『エラストジェル™』では45分で交換しなければならなかったのが、これだと90分間もちます」(図6)
マイナス20度は家庭用冷蔵庫でふつうに冷やせる温度なので、超低温で保管する必要はない。
「従来型より保冷時間を長くすると保冷剤が少し重くなりました。女性が90分はめるには重量感があるかもしれませんが、不快になれば少し外してもかまいません。それで効果が下がるということはない印象です。また今後は、我々のグループでも足の爪の障害や脱毛を予防する目的で、ソックスやキャップなども開発していく予定です」
末梢神経障害の 予防・軽減も!?
今後、病院で導入されるようになることが予想されるがその場合、院内感染予防の点から、グローブの使い回しは避けるよう中山さんは注意を促す。
「可能なら個人で持っていただくのが理想です。改良型の新製品は保冷剤とカバーをそれぞれ別に購入できるので、病院で保冷剤を購入して冷凍庫に入れておき、患者さんがご自身のカバーを持参して投与時にセットするのが望ましいです」
フローズングローブにはほかにも可能性がある。冷却により末梢での抗がん剤の毒性を抑えるという考えから、末梢神経障害を予防・軽減できないかをみる臨床試験が近々開始されるのだ。
末梢神経障害も患者さんの生活の質を損なう副作用で、有効な対策が探られているものの決め手はない。良好な結果が出れば、患者さんの福音になるだろう。
感染に注意
「現在、フローズングローブのある病院は限られているので、ない病院に通う患者さんは、アイスノンやケーキを持ち歩くときに使う保冷剤などを持参するなど工夫されているようです。代用品ででも投与中は冷やすことをお勧めしますが、氷水に手を浸けると、手の甲などに点滴の針を刺している場合などでは、そこからばい菌が入ってくる可能性もあるので、感染を防ぐために避けたほうがいいでしょう」
また爪障害が原因で起こる感染にも注意が必要だ。
「患者さんが痛みを訴えるときには、すでに爪の剥離が始まっています。また、いったん剥がれてしまうと、爪と指の間を清潔に保つことが難しく、ときに細菌感染を引き起こし、膿が出てくることもあります。乳がん患者さんが指先に感染を起こすと、腕のリンパ浮腫が増悪する可能性がありますから、感染には十分気をつけてください」
膿など出ている場合には水道水でしっかり洗い流して乾燥させる。爪は短く切って、爪が浮いてきたらテープで止め、ひっかかって剥がれてしまうのを予防することが大切だ。
割れやすくなっている爪を保護するために、マネキュアを塗ることを中山さんは患者さんに勧めているという。また保湿クリームを手足の皮膚だけでなく爪にも塗ることで、皮膚や爪を守るようアドバイスしている。
同じカテゴリーの最新記事
- 症状が長く続いたら感染併発やステロイドの副作用を考える 分子標的薬による皮膚障害
- 進行肝がんに対するネクサバールのマネジメント
- 分子標的薬の皮膚障害は予防と適切な対応でコントロール可能
- 副作用はこうして乗り切ろう!「皮膚症状」
- 放射線治療開始前から副作用を推測して、患者に伝える
- 今後について決めるときに一番大事なのは「希望」
- 手足を冷やすことで抗がん剤の影響を減らし障害を軽減する 抗がん剤の副作用、爪・皮膚障害はフローズングローブで予防!
- 薬の効果が高い人ほど現れやすい副作用。適切な対処をして治療を続けるには 「手足症候群」の初期症状を知って、セルフケアしよう
- 皮膚障害が強く出るほど、薬が効いている証拠。だからあきらめないでケアを 分子標的薬による皮膚障害は出ること前提で、早めの対策を