婦人科がん化学療法における食欲不振に 六君子湯が効果発揮
食欲を亢進させるホルモンが分泌される
「化学療法を受けて、制吐薬でも抑えきれない悪心・嘔吐が現れている人でも、六君子湯を併用することで、ムカムカする日数が減ったり、食事量が増えたりすることがわかりました。六君子湯を併用したことによる変化は、そうした数値だけに限りません。食べられるようになると、患者さんの表情が明るくなります。そうした変化も、とても印象的でした」と齋藤さんは述べている。
六君子湯で効果が現れる薬理的なメカニズムも明らかになってきている。
「食欲亢進作用をもつグレリンというホルモンが関係していると言われています。化学療法を行うとグレリンの血中濃度が下がるのですが、六君子湯にはグレリンの分泌を促す作用があるのです」
六君子湯にはこれ以外に、消化管の血流を改善したり、胃からの排出を促したりする働きがあり、1剤で多岐にわたる作用を有している(図3)。

筋肉痛、手足のしびれ、体力低下も改善
齋藤さんによると、抗がん薬の副作用で現れる以下のような症状にも、漢方薬は非常に有用だという。
◆筋肉痛に芍薬甘草湯
*パクリタキセルという抗がん薬の副作用で、筋肉痛が起こることがある。投与2~3日目から筋肉痛をきたすようになり、一般的な痛み止め(NSAIDs=非ステロイド性抗炎症薬)はまったく効かない。
「痛くなってからではなく、パクリタキセルの点滴の前に服用を始めるほうが効果的です」
◆手足のしびれに牛車腎気丸
パクリタキセル、*オキサリプラチン、*シスプラチンの副作用で、手足がしびれたり、感覚が鈍くなったりすることがある。足の感覚が鈍くなって、よく転んだりする。
「治療の回数が増えると現れてくる副作用です。ビタミンB6製剤などが使われることがありますが、効果は期待できません」
この副作用は、
◆体力低下に補中益気湯、十全大補湯
化学療法を続けていると、抗がん薬の種類に関わらず、次第に体力が低下し、免疫力も低下してくる。このような状態になると、倦怠感を覚えるようになり、治療に対する意欲も下がってしまう。この状況を改善するのに
「元気がなくなったときに効果を発揮する漢方薬です。副作用対策だけでなく、がんの末期となった患者さんも有用です。がんの末期には、極端に体力が低下した状態になりますから、補中益気湯や
がん治療における漢方薬の役割は、がん化学療法の副作用対策や緩和ケアなど、がん患者さんのQOLの維持・向上にますます重要になってきている。
*パクリタキセル=商品名タキソール *オキサリプラチン=商品名エルプラット *シスプラチン=商品名ブリプラチン、ランダ
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