副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の吐き気」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2015年6月
更新:2020年2月


つわりがないと、吐き気もない⁉

なかには、吐き気が出やすい方もおられます。たとえば、つわりが強かった人、乗り物酔いの強い人、そして、お酒をまったく飲めない人。こうした方は、吐き気が出やすいというデータがあります。

逆に、毎日お酒を飲んでいた方は、不思議なほど、抗がん薬による吐き気そのものが軽度です。つわりがなかった方も、吐き気がほとんど起こりません。つわりの有無がいちばん顕著なように思います。

ですので、私たちは、抗がん薬治療前の患者さんには、体質的なことも聞くようにしています。前もってわかっていれば、制吐薬を増やしたりリラクゼーション法や心理面談など、さまざまなアプローチを考えることもできますから。患者さんからもぜひ積極的に、ご自身の体質や心理状態などを医師や看護師に伝えていただきたいと思います。

食べたいものを食べたいときに

抗がん薬治療中の食事は、満腹にしないほうがよいでしょう。少しお腹がすいているくらい、6~7分目をお勧めします。

一番気をつけていただきたいものは、脂っこいもの。油は胃の中に長時間残り、かつ胃もたれしやすい。うなぎや天ぷらは、胃の中に6時間も滞在するそうですから、とくに要注意です。

たばこ、汗、芳香剤など、香りの強いものも吐き気を誘発します。逆に、レモンやライムなど爽やかさを思い浮かべる香りは心地よく感じることが多いので、そうした香りを漂わせたり、マスクにつけるのもお勧めです。また、熱い食べ物は匂いが飛んで吐き気を誘発することもあります。お椀物は蓋を開けた瞬間、匂いで気分が悪くなる方もおられます。ご飯が炊けたときの匂いもしかり。症状の出方は、不思議なほど、つわりに似ているようです。

さらに、温かいものより冷たいもの、冷たくて口当たりのよいものが食べやすいようです。ざるそば、冷しうどん、アイスクリーム、ゼリーなど。それから、ちょっとした目先の工夫で食べられることも。ご飯は食べられないけど、おにぎりにしたら、食べられた、とか。サンドイッチならいけた、とか。食事の工夫、盛り付けの工夫もぜひトライしてみてください。

とにかく抗がん薬治療中は、食べたいと思ったものを、食べたいときに、好きなだけ食べる。どんな食べ物でもよいので、食べてみることが大切。栄養バランスは、吐き気がなくなってから考えればいいのです。

そして、楽しく食べることですね。好きな人とおしゃべりしながら食べたり、お笑い番組を見ながら食べたり。生活全般において、自分が心地よいと感じることにたくさん触れ合う。吐き気からうまく気をそらす、それがコツのように思います。

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