副作用はこうして乗り切ろう!「感染症」
ペットボトルは直飲みしない
よく、お刺身やサラダなど生ものを食べないように、と言いますが、これはさほど気にしなくても、新鮮であればほぼ大丈夫です。まな板や包丁、お皿を清潔にすることが大事です。
ペットボトル飲料などは、口をつけて飲むと、あっという間に菌が繁殖します。できるだけ、コップに移し替えて飲むようにしましょう。口をつけた場合は、飲みきるか、もったいないですが廃棄してください。
性交渉にはコンドームを
性交渉で感染を起こすこともかなりあります。そもそも、男性は性器にカンジダなどカビを持っていることがあるので、白血球値が低い時期は、できれば性交渉は避けてほしいですが、パートナーとの関係性の中でそうはいかない場合もあるでしょう。そのときは、お互いにシャワーなどで体をきれいにして、必ずコンドームを使いましょう。ただし、肛門や口を使う性交渉はやめてください。こうしたことは聞きづらいからか、1人で悩む女性が多いのです。
がん治療は長期間に及ぶため、夫婦関係そのものに影響するケースも少なくありません。もちろん、体がつらいときはちゃんと話して相手にわかってもらうことが大切ですが、お互いにスキンシップを望むなら、リスクを最小限にする選択肢もあるのです。
急減した白血球を増やす薬

抗がん薬治療の期間中は、ほとんどの場合、定期的に採血して、白血球の数値を測ります。正常時の白血球は、血液1㎜³中に4,000~8,000個ありますが、抗がん薬投与後は1,000~2,000個まで減少することもあり、1,000個以下の期間が続くと、感染症のリスクが非常に高まります。
そのため、白血球が減ったタイミングで、*G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を白血球が増えるまで使用し、白血球の成分の1つである好中球を増やすことがあります。そして、少しでも早く白血球を正常値に近づけ、抵抗力の回復を目指すのです。
最近、*ジーラスタという持続型のG-CSFが登場しました。これは、白血球値が下がって発熱してから使用する従来型のG-CSFと違い、抗がん薬投与後24時間以降の白血球が減り始める前に、1回だけ予防的に投与して、白血球値を下げないようにするお薬です(図2)。
特殊な加工をしており、効果は2週間も続きます。その間は抗がん薬投与ができないので、3週間以上間隔をあけて投与するタイプの抗がん薬、しかも、白血球値を極端に下げる抗がん薬にしか使えません。毎週や2週ごとに投与する抗がん薬に使ってしまうと、増え始めた白血球が影響を受けてしまい、かえって白血球を減らしてしまうことがあります。
どちらを選ぶかは、抗がん薬の種類や患者さんの年齢、合併症の有無などによりますが、多���の場合は従来型のG-CSFを使用します。骨髄抑制が強く出るタイプの抗がん薬、かつ、もともと抵抗力が弱く重症感染症を起こしやすい高齢の患者さんにはジーラスタを使うことが多いようです。ジーラスタを予防的に使っても感染症を起こした場合は、G-CSFを追加するのではなく、抗生物質を投与することになります。
*G-CSF(Granulocyte-Colony Stimulating Factor)製剤=好中球の機能を高める作用がある *持続型G-CSF製剤ジーラスタ=一般名ペグフィルグラスチム
異変を感じたらすぐ病院へ
感染症になったら――。そのときは、抗生物質で菌をやっつけます。感染症は、発熱で気づくことが多いのですが、その他に、どこか痛いところ、化膿しているところなど、随伴症状が現れます。そこが菌の入口の可能性が高いので、ご自分の体をよく観察することが非常に重要。なぜなら、菌が入った場所によって、どこが感染しているかがわかるからです。
喉が腫れていれば上気道、咳が止まらないなら気管支か肺、下痢や胃痛、嘔吐なら消化管が感染しているということ(図3)。

感染場所がわかれば、菌の種類がほぼ特定でき、使うべき抗生物質が決まります。軽いうちに菌に合った抗生剤を使えば、重症化せずに治癒します。ですから、38度以上の発熱が続く場合は、病院に連絡をしましょう。その際、随伴症状を必ず医師に伝えてください。また、発熱時はどう対処したらよいのか、医師に確認しておくと、いざ熱が出たときも安心です。
たとえ感染しても、軽いうちなら抗生物質であっという間に回復するので、ほとんど大丈夫です。大切なのは、入院しなければならないほど重症化しないように、あれ?と思ったら、すぐに病院に連絡することです。あとは、感染を怖れて家にこもったりせず、外の空気をたくさん吸って、毎日を気持ちよく過ごしてほしいと思います。
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