リンパ浮腫と感染症 婦人科系がん手術後に起きるリンパ浮腫 | ページ 3

取材・文:月崎時央 ジャーナリスト
発行:2004年1月
更新:2013年7月

虫刺されや水虫も感染源になってしまう

――リンパ浮腫が起きた脚は、より感染症の危険が高いのでしょうか?

佐々木 リンパ節にあるリンパ液というのは、栄養に富んだ培養液のようなものです。だからここに菌が入ってしまうと細菌、真菌が激しく繁殖してしまうわけです。流れが悪いから、菌をやっつける白血球もこないし。

――感染を起こす元々の菌はどこから来たわけですか? やはり傷が原因?

佐々木 実際に、蚊に刺されただけで腫れた脚に菌が入って、足が真っ赤になった(蜂窩織炎という炎症)例もあります。

――その他には?

佐々木 水虫を掻いているうちに、細菌や真菌が入るというようなことも多いです。水虫がある人は、たとえ現在症状がなくても手術した後は動けないわけですから、あらかじめ皮膚科に行って治療し、がんの手術前に治しておいたほうがいいですね。

――それ以外に、気をつけたほうがいいことはありますか?

佐々木 腟のカンジダ症ですね。カンジダ症を自分が持っているかどうか、あるいは帯状胞疹があるか、などです。帯状胞疹になった経験などがあったら、主治医に言っておいたほうがいいですね。

――病院では性器に関連した感染症などの検査は、必須になっていないのですか。

佐々木 とくにおりものに異常がないかぎり、検査はしないですね。余分な検査はしないことが、最近の医療の方針ですから。

――でもそれが、あとで面倒な事態を引き起こす危険性も、あるわけですね。

佐々木 そうですね、患者さん側のリスクを回避するには、自分で必要に応じて医師に言うことです。検査をしてください、とね。

感染防止にも効果的な弾性ストッキングの着用

――効果的な予防法はありますか?

佐々木 感染が起きないように水虫の手入れをするとか、蚊に刺されないようにすることです。

――平凡なことが大事なのですね。しかし、蚊に刺されないようにするのは難しいですね。蚊は日本脳炎のウイルスや西ナイルウイルスも運ぶといいますから、恐いものではありますね。

佐々木 そう。蚊に刺されないようにするためにも、弾性ストッキングの着用はぜひ必要です。弾性ストッキングは高価なものですが、私は必ず使うように指導しています。

――虫よけスプレーはどうでしょう。

佐々木 あまり効果は期待できませんね。1回でも脚を刺されたら困るわけですから。

――マッサージは有効ですか?

佐々木 うーん、それをすることで、肌に傷がつかないようにできればいいのですが、傷つけたりすると困ります。気をつけて自分でマッサージするのは悪いことじゃないですね。

皮膚や粘膜のこすれに注意しよう

――あとは何に気をつけたらいいですか?

佐々木 リンパ浮腫を起こした皮膚は、しわが伸びてしまっているので、入浴時などにゴシゴシこすると危ない。皮膚面は傷つきやすいので。ビタミンAは粘膜を保護します。脂溶性ビタミンA、食物では肝油とかレバー、薬剤ではチョコラAなどが有効かもしれません。ただ飲み過ぎもよくないので注意してください。

――手術後には、腟などに、どんな変化があるのでしょう。

佐々木 婦人科的に問題なのは、がんの手術の後、卵巣がなくなっていますから、卵巣欠落症状として、女性ホルモンがでないわけです。そうすると腟壁が薄くなる。この状態で絶対にタンポンなどを使ってはダメなんですよ。こすれて、そこから菌が入る。
それから運動したときにも、腟壁が薄いと、出血してそこから菌が入る。これが理由でリンパ浮腫になる人もいます。黄色いおりものが出たりしたら、注意したほうがいいですね。腟壁からの感染というのはみんなあまり気にしないのですが、可能性はあるのです。

――聞きにくいことなのですが、性生活はどうなってしまうのでしょう。

佐々木 夫婦生活でも、やはり腟壁がこすれる心配があります。手術後にダンナさんと仲良くしたいと思ったら、こすれても大丈夫なように腟の中に弱いホルモン剤を入れれば大丈夫です。感染症の予防からも大事なことですね。そういうことは婦人科医に気楽に相談してください。

――そうなのですか。なかなか言いにくい話ですが、産婦人科ではこういうことも、相談に乗っていただけることがわかりました。今日はありがとうございました。

〈資料提供:株式会社アズウェル〉


今回のテーマ、リンパ浮腫を予防・改善する手段のひとつとして「弾性ストッキング」がとりあげられている。

文中資料は、スイスの圧迫ストッキング専業メーカー、ガンゾーニ社の製品を取り扱う(株)アズウェルより提供してもらった。製品は部位別、症状別、素材別にさまざまな種類がそろっており、製品の概略や使用上の注意点などについて、同社東京支店・メディカル2グループの片山さんに聞いてみた。

圧迫ストッキングは製品の選択、そして正しい使用法が大切です
ストッキングの種類

左よりパンティーストッキング、片足ストッキング、ストッキング、ハイソックス

「弊社取扱商品は『シグバリス』圧迫ストッキングといいます。いわゆるサポートタイプのストッキングとは異なり、交互編みの間に強力な弾性糸を編み込んでおり、段階的圧力が正確に再現されるのが特徴です。素材により4タイプがあり、とりわけ天然ゴム芯を使用した「厚地」製品は復元力が強く、毎日はいても約半年間は新品同様の圧迫力を正確に再現でき、耐久性にも優れています。このタイプの場合、価格は1万500円~1万4700円(税込み希望小売価格)で各種そろっています。

厚地タイプのほか、ポリウレタン芯のスタンダードな『薄地タイプ』、極薄で見映えの良い『グラマータイプ』、綿糸を使って吸湿性・通気性に優れる『コットンタイプ』があります。形状はひざまでの『ハイソックス』、ひざ上の『ストッキング』、片足用でウェストベルト付きの『片足ストッキング』、一般的な『パンティーストッキング』からお選びいただけます。

ただし、これらのストッキングはマッサージなどによって細くなった脚が、太くならないために用いるもので、それ自体で脚を細くする効果があるものではないことを申し上げておきます。

500シリーズ パッケージ
500シリーズ パッケージ

圧力にはライト(クラス1)、ノーマル(クラス2)、ストロング(クラス3)、エキストラストロング(クラス4)と4種類あり、このうち、ノーマル以上は非常に強い圧迫力がありますので、ご使用に際しては専門の医師とご相談のうえ、慎重にお決めいただく必要があります。ご利用される方の状態により、予期せぬ悪影響が発現することも考えられます。

これらのストッキングを保険適用の対象とするよう、関係者が各方面に働きかけをしておりますが、残念ながらまだ実現にいたっておりません。したがいまして患者さんの自己負担になることを付け加えておかねばなりません。

また、当社では『リンパ浮腫の治療――乳がん、子宮ガンの術後のむくみの予防と治療のために』(広田内科クリニック 廣田彰男院長作成・A4判16頁)の小冊子を発行、無料配布しています。ご希望の方はどうぞお問い合わせください」


〈問い合わせ先〉

●東日本地区
 (株)アズウェル 外国部メディカル2グループ 
 〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-6-2 小津本館ビル
 TEL(03)5695-4192
 FAX(03)5695-4193

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 (株)アズウェル 外国部 メディカル1グループ
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