大切なのは自己管理。下肢リンパ浮腫のセルフケア
進んだ症状には 圧迫療法と運動を
Ⅰ期~Ⅱ期前半の患者さんは、0期の患者さんのような注意のほかに、日中のむくみを軽減させるために③の下肢を圧迫して症状を改善・維持するように努めます。圧迫には、弾性ストッキングや弾性包帯を着用します。これらの弾性着衣は療養費申請することで保険が適用されます。
弾性ストッキングは図4のように様々な形状があります。30㎜hg ~50㎜hg 位(中圧から強圧)までの圧の違いがあります。
浮腫の症状をみながら、自分に合った弾性ストッキングを選ぶことが大切です。患者さんの中には、履きやすいという理由で自分の体に合わない商品を選んでしまうことがありますので、リンパ浮腫外来を受診して専門家に適切な圧やサイズを選定してもらい、実際にサンプルを装着した上で購入しましょう。弾性ストッキングは、図5のような手順で履くことでスムーズに履けます。指先にしびれのあるような場合には、ゴム手袋を使い、すべらないようにして履くと便利です。
また、弾性ストッキングを履くことが難しい高齢者や手にしびれのある人の場合は、弱い圧の弾性ストッキングを重ねて装着したり、後述の多層包帯法を行います。
また、弾性ストッキングや多層包帯法を使用して、下肢に圧をかけている際に散歩などの適度な運動することも、リンパ浮腫の改善に効果的です。散歩などで、身体が負担にならない程度の適度な運動を積極的に取り入れると良いでしょう。

図5 弾性ストッキングの履き方

進行した患者さんには より強い圧を
Ⅱ期の後半やⅢ期の患者さ
んは、集中的に治療する時期には多層包帯法による圧迫を行います。多層包帯法は皮膚の保護のための筒状包帯を装着し、その上から綿包帯を巻いて、さらにその上に伸縮性の少ない弾性包帯を装着する方法です。多層包帯法を日中や夜間に装着します。正しい巻き方の習得には練習が必要ですが、一度覚えれば、役立つので覚えましょう。外来での治療も可能ですが、入院可能な施設であれば入院での集中治療も非常に効果的です。

仕事をされている方の場合には、日中の仕事時には弾性ストッキングを使い、就寝時や休日には多層包帯法を行い、症状の軽減を目指します。弾性ストッキングや多層包帯法には、表6のように利点と欠点があります。
リンパドレナージは慎重に
最後に、浮腫の治療では、滞っているリンパ液の流れを改善するためにリンパドレナージというマッサージを行います。リンパドレナージ単独での治療���果は証明されていません。上述の5つのケアの1つとして、複合的に集中的なケアを行うことの効果は示されています。
正しいリンパドレナージの指導を受けるには、がん診療を専門でやっている病院や、リンパ浮腫外来のある病院などで専門のセラピストの指導を受けて行いましょう。
リンパ浮腫は、これらのケアを複合的に行うことで多くは改善します。日常生活の中で、しっかりと浮腫の自己管理ができるようになることを目標に取り組みましょう。
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