副作用はこうして乗り切ろう!「むくみ」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2016年4月
更新:2020年2月


発症してしまったら早く治療を

バンテージを使ってリンパ浮腫を予防する

リンパ浮腫の治療は、リンパドレナージ、弾性ストッキングや弾性包帯などを用いた圧迫療法、圧迫した状態での筋肉や関節の運動、そして蜂窩織炎ほうかしきえんを予防するためのスキンケア、を行っていきます。

リンパドレナージとは、腕や脚に溜まったリンパ液を流してむくみを改善するためのマッサージ。末梢から中枢に向かって、なでるようにさすります。指圧と違い、必要以上の圧をかけず、ゆっくり優しく。ただし、自己流ではなく、正しい知識と技術を持つ医療者の指導を受けてください。リンパ浮腫外来のある病院を紹介してもらったり、日本医療リンパドレナージ協会に相談してみるのもよいと思います。

圧迫療法は、皮下組織を圧迫して、リンパ管から漏れ出て滞留したリンパ液をリンパ管に押し戻します。弾性ストッキングや弾性グローブ、バンテージなどを使います。リンパドレナージと同様、専門的知識が必要なので、まずは主治医に相談し、リンパ浮腫外来を訪ねましょう。

さらに圧迫した状態で適切な運動をすれば、効果が上がります。腕のむくみには、掌を大きくゆっくり握ったり開いたり、肘や手首の関節の曲げ伸ばしを、脚のむくみには、膝や足首の曲げ伸ばしをゆっくりしましょう。ただし頑張り過ぎは禁物。あくまでも、ゆっくり大きく、がポイント。

リンパドレナージやバンテージ使用は、むくみが出る前から予防的に行うことをおすすめします。バンテージはきつくてつらいと思いがちですが、今は心地よく包み込むタイプも出てきていますので、ぜひ試してみてください。ちなみに、リンパドレナージは保険適用外、圧迫療法に使う弾性ストッキングやバンテージなどは、医療費申請することで一部支給されます。

日本医療リンパドレナージ協会=TEL:045-325-9891

線維化まで進行させないために

リンパ浮腫がおきている個所に、虫刺されや擦り傷など些細なことで細菌が侵入し、腕や脚全体に炎症が拡大してしまうことがあります。これが蜂窩織炎ほうかしきえん蜂窩織炎ほうかしきえんを合併すると、リンパ浮腫がさらに悪化するという悪循環に陥ります。

蜂窩織炎ほうかしきえんになったときは、治療が必要ですからすぐに受診してください。抗生物質の内服か点滴をしながら、炎症が治まるまでは、リンパドレナージや圧迫療法などは中止し、安静を保ちます。

結局、むくみは避けられない副作用でもあるわけですが、仕方ないと諦めてケアしないと、3~4カ月で線維化(象皮化)してしまうのが落とし穴。むくみだけなら改善しますが、線維化してしまうと元には戻りません。まずは患者さん自身に「むくみぐらい我慢しなくては」という意識を改めて欲しいと思います。手術や放射線治療、抗がん薬治療後も快適に過ごすためには、むくみを起こさないようセルフケアで予防を心がけてください。

それでも、むくみの自覚症状が現れたら、すぐに医師や看護師に相談して、治療を開始しましょう。初期に対処して、軽い状態をできるだけ維持しつつ、むくみとうまく折り合いをつけてつき合っていくこと、それがいちばんの対策だと思います。

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