リンパ浮腫について知ろう、語ろう、「リンパカフェ」
医療者の想像を超える患者さんの提案も
リンパカフェでは、まず医療者がトピックス的なテーマで話をする。
「例えば、リンパ浮腫のケアに保険が適用されたこと。夏なら日焼け対策や虫さされの後の注意事項、冬なら乾燥対策など、季節的な話題もよく取り上げます」
続いて、自宅でもできる運動をみんなで行ったあと、いよいよグループワークの開始。毎回テーマを決め、サバイバーがファシリテーター(進行役)となって、それぞれが意見を出し合う。テーマは「リンパ浮腫になったきっかけ」、「リンパ浮腫になってつらいこと」、「自分がやってみてよかったケア、よくなかったケア」など。❶人の話を否定しない、❷個人情報を持ち出さないという2つのルールがあるが、あとは自由に話してもらう(写真2、3)。


「『自分でやってみてよかったケア』がテーマだったとき、腹巻とストッキングを組み合わせて、弾性着衣を手作りしたという患者さんがいました。悩んでいるからこそ出る生活の知恵でしょう。『みんなに合うわけではないけれど、こうするといいかも……』という提案がたくさんあり、それらは私たち医療者の想像を超えていました。また、婦人科がんの方は下着選びで悩みがちですが、『縫い目のないショーツがどこのメーカーから出ている』など、生きた情報も飛び交います。カフェの時間は2時間程度ですが、短すぎるという意見も患者さんから聞かれるほどです」
グループには必ず医療者が加わるが、基本的に書記兼アドバイザーで、あまり発言はしない。誤った情報が一人歩きしそうな場合に介入する程度だそうだ。
「ほかの人の話が聞けてよかった」という参加者の感想が多数
リンパカフェは、各地域の施設や患者会から依頼され、熊本、大阪、埼玉などでも開催した。がんの啓発運動のイベントなどで開催することもある。
つらさを理解してくれる仲間と情報交換したり、悩みを相談できるリンパカフェは、参加者に強く支持されている。それはアンケートを見ても明らかだ。非常に多いのは「ほかの人の体験が聞けてよかった」という感想だ。このほか、
• 術後の経過がよかったのに、10カ月後に���腫が出て大ショック。カフェに参加して本当に役に立った
• リンパ浮腫と診断されたが、医師には情報が一切なかった。患者が自分で情報を集め、向き合い方を決めている現状は、せっかくがんが完治しても乱暴に放り出されている感じで、生活者として普通に暮らすことは困難
• 医療者として働いていたころ、患者さんに一番必要なのはこういう場だと感じていた
――など、熱く切実な声も多数寄せられている。
地域で開催したカフェでは、「是非また参加したい」、「定期的に開催して欲しい」といった意見も多く、「定期的に開催されるなら手伝いたい」という声も増えた。田端さん自身、リンパカフェが必要とされていることを強く感じているが、休日に医療者がボランティアで行うには限界があり、将来的にはリンパカフェを運営するNPO法人が設立できないかと考えている。また、カフェのときに患者さんから挙げられた悩みやその対処方法などをまとめて、『リンパ浮腫の生活の悩みハンドブック』といった小冊子も作る予定だ。
「リンパ浮腫で悩んでいる患者さんは、リンパカフェに来ていただきたい。そして、リンパ浮腫と付き合ううちに、少しゆとりができたら、同じ悩みを持つ人に体験談を語っていただきたいと思います」と、田端さんはリンパカフェへの参加を呼び掛けている。
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