副作用はこうして乗り切ろう!「抗がん薬治療中の口内炎」
口内の乾燥を防ぐ工夫を
いざ抗がん薬の治療が始まったら、こまめなうがいを続けて、口の中を乾燥させないことが大切です。そして、唾液の分泌をよくするために、口の中が傷んだりしみたりしていなければ、酸味のあるものを食べることをお勧めします。飴をなめるのも効果的。ただし、甘い飴は口腔内の菌を増やしてしまうので、避けてください。
熱いもの、辛いものといった刺激物は粘膜を刺激しやすいので、できるだけ食べないでほしいのですが、辛いものが好きな方に「食べちゃダメ」なんて、ナンセンス。ですから、私は、刺激物はできるだけ少なめに、あるいはいつもより薄めて、とお願いしています。そして、食べるときは、乾燥した口の中に突然入れるのでなく、まずはうがいをして、口の中が潤ったところで食べる。これだけでずいぶん違います。食べるな、ではなく、工夫して食べる。食べる楽しみは、いつのときも大切ですから。
痛みを伴う口内炎には軟膏を

それでもできてしまう口内炎。そのときは、刺激しないことが一番です。加えて、うがいによる保湿と口の中を清潔に保つこと。ですから、歯磨きは続けてほしいのです。その際、歯ブラシの毛は超軟毛、ヘッドは小さいものを選んでください。口内炎の部分を避けて、歯と周辺の歯茎を力を入れず丁寧に磨きます。粘膜は必ず再生しますから、口内炎は通常2週間ほどでおさまってきます。
痛みを伴う口内炎には薬が処方されます。即効性があるのはステロイド軟膏。炎症を速やかに抑えてくれるので、短期間使用するにはとてもいいものですが、落とし穴も。
ステロイド軟膏は、長期的に使うと、カビ発生の原因になるのです。口内炎で苦しんだことのある患者さんに多いのですが、ステロイド軟膏の即効性を知っているからか、継続的、予防的に使ってしまう人がいます。抗がん薬の治療を始めたら、そろそろできそうだからすぐに塗る、そうした使い方をしていると、あっという間に口の中に真っ白く苔が生えたようにカビが生えます(写真)。カビと気づかずにステロイドを続けるとすぐに広がり、気道や食道にまで達することも。そうならないためにも、口内炎ができたときは、自己判断で市販薬を使わず、医師の診察を受けてください。
口腔内にカビが発生している場合は、まずカビを除去するうがい薬が処方されます。カビがなければ、ステロイド軟膏を塗ることで速やかに改善させる方法が1つ。
もう1つは、うがい薬。*アズレンスルホン酸ナトリウムは、保湿作用、粘膜保護、痛んだ粘膜の早期回復などの効果が期待できます。
ちなみに、うがいといえば市販の洗口液を思い浮かべる方もおられますが、製品によってはアルコール成分が含まれていて刺激が強すぎるため、かえって口腔内を乾燥させたり、粘膜を傷めてしまったり、回復を遅らせてしまうものもあります。
抗がん薬治療中の患者さんが口内炎予防や炎症を抑えるために使うには強すぎる洗口液もあるので、薬局の薬剤師と相談しましょう。
*アズレンスルホン酸ナトリウム=商品名アズノール®、ハチアズレ®
看護師に気軽に相談を

最後に、粘膜回復のために栄養をしっかりとることを心がけてください。抗がん薬治療中は貧血になりやすく、体内の総タンパク値も減ることで、全てにおいて健常者より回復が遅くなります。だからこそ、良質のタンパク質を意識的にとってほしいのです。
痛いときに固いものは噛めないので、コーンスープやプリン、ゼリーもいいですね。栄養補助食品やスポーツ飲料を利用してもよいと思います(図2)。
私たち看護師も栄養士と相談しながら、食べやすく栄養豊富なレシピを集めていますので、気軽にご相談いただけたらと思います。
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