口の中が乾くドライマウス、痛い口内炎、気になる口臭・・・・・・ お口の副作用トラブルを改善するオーラルケア

監修・アドバイス:斎藤一郎 鶴見大学歯学部教授
取材・文:池内加寿子
発行:2004年10月
更新:2013年8月

洗浄や歯磨きで口の中を清潔に保ち、保湿ジェルやスプレーで、しっとりさせる

唾液の分泌を促す体操で、
ドライマウスを改善!

1 舌を上あごにあてて鳴らす

舌を上あごの歯茎寄りにあて、ラン、ランと舌を鳴らす。

2 ストローをかみ、息を吸う

イラスト:ストローをかみ、息を吸う

左右の奥歯でストローをかんだまま、息をスーッと大きく吸う。そのまま数回繰り返す。

3 ウィー、イーと発音する

口をとがらせて「ウィー」、左右に開いて「イー」と交互に発音し、口の周りの筋肉をトレーニング。

ドライマウスが起こったときは、どのような対策をとったらよいのでしょうか。斎藤さんは次のようにアドバイスします。

◆口の中を清潔にする
「原因にかかわらず、唾液が減少すると雑菌が増えて、歯周病や感染症を起こしやすくなるので、まず、口の中を清潔にしておくことが大切です」
食後や起床時、就寝前の歯磨きはもちろん、市販のうがい薬やお茶などで、こまめにうがいをするとよいでしょう。ドライマウス用の保湿成分入りのうがい薬も出ています。

◆水分補給も忘れずに
唾液は水分を原料として作られるので、お茶やミネラルウォーターなどの水分補給も必要です。ただし、腎臓の機能不全や糖尿病があるときは、それらの病気を改善することが先決。過剰な水分が逆効果になることもあるので、主治医と相談してください。

◆顎の体操で、唾液腺を刺激
唾液は、舌や口の周囲の筋肉を動かすことによって分泌されるので、筋力が低下すると分泌が減ってきます。唾液の分泌を促すには、食事に時間をかけ、よくかんで食べるのが一番ですが、それができないときには、筋肉の体操やガムをかむのも効果的。入院中や自宅療養中で食事が食べられないときなども、舌の体操や発声練習などをしてみてはいかがでしょうか。

◆保湿ジェルやスプレーを使う
「がんの手術や放射線治療後には、唾液腺がダメージを受け、唾液が作られなくなっていますから、唾液の代わりになるドライマウス専用の保湿ジェルを指で塗ったり、保湿スプレーで潤したりして、口の中が乾燥しないようにしておきましょう。がん治療以外の原因で口が乾いて困るときも、保湿剤を上手に使うと、かなりラクになります」
保湿剤にはジェルタイプ、スプレータイプなど、いろいろな種類があります。いずれも抗菌成分や、ヒアルロン酸などの保湿成分が含まれ、口の中に適度な潤いを保ちながら、雑菌の繁殖を抑えられるのが特徴です。

◆専門家の診察を受ける
「ドライマウスが3カ月以上続くとき、症状が軽快しないときは、歯科や口腔外科で専門家の診察を受けてください」
適当な専���家が見つからないときは、「ドライマウス研究会」のHPで最寄りのドクターを探せます。「ドライマウスの専門家を育成し、患者さんの受け皿をつくるためにスタートした“ドライマウス研究会”に登録しているドクターも全国で1000人になりました」
また、ドライマウスで悩む患者さんのために開設された「ドライマウス患者友の会」に加入すると、ニュースレターとドライマウスのQ&A集が、無料で送られてきます。

[ドライマウスを改善する製品を発売しているメーカー]
会社名 商品の内容 連絡先
キッセイ薬品工業株式会社 保湿スプレー飲料「ウェットケアプラス」 0120-753-666
パナソニックデンタル株式会社 保湿ジェル・スプレー「フィットエンジェル」 06-6386-2995
生化学工業株式会社
(販売・サンスター株式会社)
洗口液「絹水」 0120-008-241
ティーアンドケー株式会社 保湿ジェル・洗口液・歯磨き剤・歯ブラシ
「バイオティーン・オールバランス」
03-5640-0233


口のトラブルQ&A

Q:唾液の分泌が正常かどうか、どのようにして判断するのですか?
A:ガーゼを一定時間口に入れてかみ、ガーゼに含まれた唾液の量を測定するサクソンテスト、チューインガムをかんで唾液を測るガムテストなどの検査方法で、正常かどうかわかります。

Q:唾液の分泌を促す薬はありますか?
A:弱った唾液腺に刺激を与える唾液分泌薬(塩酸セビメリン。商品名はサリグレン、エボザック)を使うことがあります。1日3回服用するのが基本ですが、就寝前など乾燥しやすい時間帯や朝夕2回飲む場合もあります。

Q:保湿ジェルはいつ塗ればよいですか?
A:口の中に塗る保湿ジェルは、口内を潤して乾燥を感じないようにしてくれます。効果の持続時間は2~3時間ですから、乾燥が気になったら塗り直せばよいでしょう。話をするときにネバつくことがあるので、人と会うときはスプレータイプを利用しても。唾液分泌薬との併用もOKです。化学療法中や薬の服用中は、医師と相談を。

Q:甘いものや塩辛いものはよくありませんか?
A:塩分をとりすぎると口が乾き、高血圧や脳卒中の原因に。甘いもので口の乾燥がひどくなることはありませんが、虫歯を増やす可能性があります。

Q:口角がひび割れていますが、ドライマウスでしょうか?
A:ドライマウスやカンジダなどの細菌感染の可能性があります。専門家の診察を受けましょう。

化学療法による口内炎には鎮痛と感染予防を。
口臭が気になったら、歯磨きとうがいで雑菌退治!

口の中の粘膜にできる口内炎。たった一つプツンと発疹ができただけでも痛いものです。

「うっかり歯で頬の裏の粘膜をかんでしまったときや、ビタミン、葉酸、たんぱく質などの栄養不足、ドライマウス、抗がん剤の副作用など、いろいろな原因が考えられます」

とくに原因に心当たりがないときは、粘膜の保護に欠かせないビタミンB2、B6の錠剤を飲むか、これらのビタミンが豊富なマグロやカツオ、ウナギなどをメニューに加えてみるとよいでしょう。症状が続くようなら専門家に相談します。

「なかなか治らない口内炎に、自己判断で市販薬などをつけてしまうのは危険です。口内炎の薬に副腎皮質ホルモン入りの軟膏(ケナログなど)がありますが、副腎皮質ホルモンは雑菌のエサになるので、カンジダなどの菌がいるところに使うと、一挙に菌が増えてカンジダ症を引き起こしてしまいます。口内炎が治らないときは、必ず歯科や口腔外科などの粘膜の専門家に原因を特定してもらい、原因に合わせた治療を受けましょう」

化学療法中や経口抗がん剤の服用中は、副作用として口内炎ができることがよくあります。

口内炎を起こしやすい抗がん剤は、ブリプラチン(一般名シスプラチン)、エンドキサン(一般名シクロホスファミド)、タキソール(一般名パクリタキセル)、高用量5-FU(一般名フルオロウラシル)など。投与後、2日から2週間くらいの間に現れ、治療が終わると、白血球の回復とともに、2、3週間で治るのが普通です。

「化学療法中は、細菌と闘う白血球が減少し、感染症を起こしやすいので、歯磨きをしたり、抗菌剤入りのうがい薬を利用して、感染予防をすることが大切です」

口内炎の痛みが強く、飲食ができないときは、麻酔剤入りの薬剤やうがい薬を使う方法もありますから、主治医や看護師さんに相談してみましょう。

気になる口臭対策についてもうかがってみました。

「口臭の原因は、口の中の雑菌ですから、雑菌が繁殖しないように、常に歯磨きやうがいをして、口の中を清潔にしておくことがいちばんの予防法です」

年齢とともに口臭が増す、というのは根拠のない話です。

「よくかんで顎の筋肉を動かし、唾液の分泌を促し、清潔にするセルフケアを続けていれば、年齢に関係なく口臭は防げるものです」

鶴見大学歯学部付属病院ドライマウス専門外来
TEL 045-581-1001(代表)

「ドライマウス患者友の会」会報誌

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