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婦人科がん手術後の排尿トラブル 賢いセルフケア
症状、尿の勢い、残尿の有無など
4つのタイプに合わせてセルフケア
排尿ケアは、症状、尿の勢い、残尿の有無などに合わせて対処するのがポイント。梶原さんは、症状を4タイプに分け、それぞれの症状に応じた対処法をアドバイスしています。下の表も併せてご覧ください。
尿意を感じない、排尿しにくいとき
「尿意を感じにくい場合、手術後1年くらいまでに自然に改善する方もありますが、それまでの間や、改善されない場合は、時間を決めてトイレに行き、排尿の練習をしましょう(このときに排尿状態がわかるように排尿の記録をつけてみましょう)。尿が出にくい場合は、腹圧排尿(下表参照)を。あまり強くいきみ過ぎると、膀胱に変形をきたして膀胱の働きが悪くなったり、ときに腎臓に逆流したりすることもあるので、注意が必要です」
宇津木さんはこの点について「病院や医師によって指導に差があるようですが、ある程度いきんだり、下腹部をゆっくり押したりしないと出ないことも多いもの」とアドバイス。おなかをゆっくりへこませるようにして、時間をかけて排尿するのがコツです。
残尿、尿もれには、自己導尿やパッドで対応


「腹圧排尿しても、残尿がいつも100cc以上あるときは、自分で尿道にカテーテル(細い管)を入れて排尿する“自己導尿”(右の写真参照)を検討します。泌尿器科で、エコーなどで残尿の有無を調べてもらいましょう。残尿を放置しておくと、膀胱内で細菌が増え、膀胱炎や腎盂腎炎などを起こす危険も出てきます」(梶原さん・以下同)
尿意もないのにだらだらと尿がもれるときは、残尿が多量にたまっている証拠。膀胱が満杯になり、行き場のない尿があふれる“溢流性尿失禁”です。
「膀胱には200~400ccためることができるので、普通は100ccたまったくらいでもれることはありません。膀胱が充分広がらないため十分に尿がためられず、少しの尿がたまっただけで膀胱の内圧が上がり(高圧膀胱)もれてしまう、トイレが異常に近くなるなどの症状がある場合は、尿が腎臓に逆流して腎臓機能障害を起こす可能性もあるので、泌尿器科で必ず��療管理を受けてください。同時にパッドなどの製品を上手に利用しましょう」
生理用品は尿を固める機能がないので、尿取り専用のパッドを尿量に合わせて使うのがおすすめ。尿もれの程度は、泌尿器科などでパッドテストを受けるとわかります。最近では、ショーツにテープではれる薄型タイプも各社から出ています(下の写真参照)。
「インターネットや電話でサンプルを請求して実際に試してみて、自分に合うものを探すといいですね」
各メーカーのお客様相談室、尿もれ相談室などに電話して相談するのも方法の1つです。
「もれる量が多く、大きなパッドを使う場合は、サポート用ネットパンツでおさえてから、普通のショーツを重ねてはくと、ムレもズレもなく快適です。失禁用のパンツは、もれるのが心配な人が予防的に使うにはよいのですが、多量に尿もれがあると縫い目からしみ出すことがありますから、長時間の使用には向きません」
なお、薬剤を併用する場合、症状や原因によってまったく逆の作用の薬剤を使うこともあるので、必ず、専門医の指導にしたがってください。漢方薬の場合も同様です。
症状 | 対処法 |
---|---|
(1) 尿意がない ・尿意を感じにくい ・尿がたまった状態がわからない | 「時間排尿」をする。 2~3時間に1度、時間を決めてトイレへ。 排尿できない場合は(2)へ |
(2) 尿が出ない、出しにくい ・いきまないと出ない ・尿の勢いが弱い ・残尿感がある ・1回の排尿量が少ない | 「腹圧排尿」をする。 下腹部に手をあてておじぎ(前傾)し、少しお尻を上げ、軽くいきむ。 (泌尿器科などで残量を確認し、100cc以上なら(3)へ) |
(3) 尿がもれる、あふれる ・いきんでも、尿が出ない | 泌尿器科などで指導を受け、「自己導尿」をする |
(4) 尿をためにくい ・トイレが近く、尿もれもある ・排尿回数が多い ・排尿が我慢できない(切迫性尿失禁) | 泌尿器科で定期的に受診。 腎臓障害を防ぐため薬剤を併用することも 尿もれの量に合わせて、パッドを使用 |



軽失禁用尿取りパッドの問い合わせ先
花王 03-5630-5010(消費者センター)
リブドゥコーポレーション 0120-271-361(お客様相談室)
ユニ・チャーム 0120-041-062(いきいきダイヤル)
女性に多い“腹圧性尿失禁”“切迫性尿失禁”には
骨盤底筋体操が有効
女性の場合は、出産や加齢などの影響で骨盤を支える筋肉=骨盤底筋や、それにつながる排尿括約筋がゆるむことが多いもの。くしゃみをしたとき、笑ったときなどに尿がもれる“腹圧性尿失禁”や、尿意を感じたらがまんできない“切迫性尿失禁”などの原因になります。
「これらの尿もれが、婦人科がん手術後の“神経因性膀胱”による排尿障害と年齢的な関係からも合併することもあります。出産まもなくから行う骨盤底筋体操は、骨盤底筋とそれにつながる尿道括約筋などを引き締めるので、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁の予防や改善には有効です」(梶原さん)
宇津木さんも、同意見です。
「骨盤底筋体操をすれば排尿障害がすべて治る、というわけではありませんが、尿導や肛門を締めたり緩めたりすると、骨盤底の筋肉、尿道括約筋、肛門括約筋などを鍛えることができるので、加齢に伴う排尿障害にはよい方法だと思います」(宇津木さん)
下の図を参考に、さあ、スタート! 婦人科がんの患者さんでなくても、お尻周辺の筋肉の若返りをめざせます。
なお、婦人科がんの治療法、後遺症と対策を詳説し、患者さんの手記も付した『子宮がん・卵巣がんは手術で治す――534人の暮らし方』(宇津木久仁子著/講談社刊)が出版されています。
腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁を予防・改善
<骨盤底筋体操>で骨盤底筋(尿道括約筋)を鍛えよう
基本のやり方
(1) イラストのような姿勢をとり、腹式呼吸をしながら、リラックス
(2) 肛門や膣を3~5秒間、締めたままにする
(遅い収縮)
(呼吸を止めずに)
(3) 緩めて10秒休む
(4) (1)~(3)を5~10回繰り返す

・ゆっくり複式呼吸を。おなかに手をあて、極端に上下しないか、硬くないか確認。
(5) 肛門や腟を締めて緩めてを繰り返す
(早い収縮)
(普通の呼吸)
(6) (5)を10~20回繰り返す
※尿もれの予防なら「遅い収縮」と「早い収縮」を1日3~5セット、もれがある人は5~10セットに分けて行うのが理想的。

・肩とおなかの力を抜き、背筋をのばす。

・背筋を伸ばす。
指導/日本コンチネンス協会
日本コンチネンス協会
排尿・排便に関する電話相談・FAX相談を行っています。
ボランティア組織のため、相談員不在でクローズすることもあります。
電話相談 03-3301-0725(東京本部)
FAX相談 076-23-7303(北陸支部) 020-4665-7858(北海道支部)