副作用はこうして乗り切ろう!「性機能への影響」

監修●山田みつぎ 千葉県がんセンター看護局通院化学療法室看護師長
構成●菊池亜希子
発行:2016年3月
更新:2020年2月


回復には個人差が大きい

手術や薬物療法が引き起こした性機能障害がどれくらいで回復するかは、かなりの個人差があります。

男性の場合、高齢、糖尿病などの持病の有無、治療期間なども大きく影響します。バイアグラで改善する方もいますが、血栓症や心臓病などの副作用を伴う可能性もありますので、必ず医師と相談してください。

女性は、男性以上に年齢による違いが大きいと思います。若いほど性機能が戻りやすく、10代なら8割以上が半年から1年で治療前とほぼ変わらない状態に戻るといわれています。しかし、40歳以降で抗がん薬による治療を受けた場合は、そのまま月経が停止し閉経に至る方が9割以上といわれています。対処法として、女性ホルモンのエストロゲンを外から補充するホルモン補充療法を試みることはできますが、副作用もありますので、医師との相談が必要です。

治療を決める前に医療者とよく話し合う

性機能に関する副作用を、患者さん自身が治療前にきちんと説明を受けて理解しているかというと、残念ながら日本ではまだ不十分だと思います。

治療前に医師から「神経障害が出るかも」としか説明されておらず、治療後、実際に性行為に至ったとき、以前のように勃起できず、不安と焦りで1人悩み続けた患者さんがいました。まずは、きちんと説明を受けて、納得して治療を受けなくては、不安や動揺は必要以上に大きくなるだけです。

海外では、当然のことながら、しっかり説明を受けた上で納得できるまで話し合い、「それなら、そんな治療は受けない」と患者さん本人が選択することも珍しくないそうです。

「治療によって性機能にどれほどの影響を及ぼすのか?」「治療前に予め予防する方法はあるのか?」「性機能が温存できる他の治療法はあるのか?」「性機能に影響が出た場合の治療法は?」など、勇気をもって医師に尋ねてみることがとても大切です。

今は、予め治療前に精子や卵子を採取して保存しておく方法や、手術時に神経を温存できる場合もあります。できるだけ性機能に影響を及ぼさない抗がん薬を選択する可能性も残されていますので、とことん医療者と話し合ってみることをお勧めします。

気持ちを言葉にして伝え合おう

性機能への影響に関しては、残念ながらなかなか良い対処法が見つからないのが現状です。そうなると、重要なのは心の問題、つまり、相手との関係性と言えるでしょう。

男性の中には、ご自分が理想とする性行為ができなかったことにより、「男性としての自尊心や価値観」が大きく揺らぎ、自信を失う方もいます。そのようなとき、何より支えになるのは相手や家族です。

「あなたは私のかけがえのない夫、大切な唯一の頼れ��男性、一家の大黒柱です」という妻の一言で男性としての自信を取り戻せたり、絆を深められた夫婦もたくさん知っています。

女性にとっても、ホルモン減少に伴う性欲低下や性交痛は相手に伝えづらいものですが、これは副作用による体の変化です。それを相手に理解してもらうためにも、痛いときは「痛い」と伝えて、一緒に考えて欲しいのです。性交時に、体位を工夫したり、膣に潤いを与える水溶性潤滑ゼリーや保湿剤をうまく使うことで不快感がなくなったという夫婦もいます。今はこれらのゼリーも店頭やインターネットで容易に購入できます。

何より大切なのは、自分の気持ちを言葉にして相手に伝え、相手の声にも耳を傾け、互いに理解しようとすることです。それが、性機能に関する問題を乗り越える唯一最良の方法だと私は思います。

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