がんに伴う心の問題 落ち込み、うつ状態と上手につき合うには
治療法の主体は、カウンセリング、薬物療法

専門家が治療する場合は、カウンセリング、薬物療法、またはそれらを組み合わせて用いられます。
これらの方法がなぜ有効なのか、そのメカニズムはまだはっきり解明されていませんが、がんに伴う心の苦痛に対しても効果を上げることがわかっています。心理的な治療で生存期間が延長したという研究報告もいくつかありますが、それを否定する研究もあり、現在のところ結論は出ていません。
●カウンセリング
精神科医や臨床心理士などの専門家が、患者さんの話を理解、共感しながら傾聴し、患者さん自らが問題を乗り越えるうえでのサポーターとなる方法です。患者さんは、感情をおさえずに言葉を吐き出せますし、それをまるごと受け容れ、理解してくれる人に悩みを聞いてもらうだけで、ストレスが軽減し、癒され、気持ちがラクになります。
●薬物療法
不安やうつが強くなったときは、抗不安薬や抗うつ薬が有効なことが多いものです。薬を好まない方にはカウンセリング主体の治療が行われますが、一般的には、薬剤と併用したほうがより効果的であることが知られています。こういった薬を飲むと、やめられなくなるのでは、量がどんどん増えていってしまうのでは、と心配される方も多いようですが、現在は常習性の心配がない安全な薬剤が広く使われており、専門家と相談しながら使えば、ほとんど心配はいりません。
最近、いくつかの医療施設では、グループ療法などを取り入れているところもあるようです。
●グループ療法
カウンセリングの応用で、患者さん同士が専門家を交えて話し合い、治療に役立てる方法です。同じ体験、同じ悩みを持つ患者さん同士がお互いに話をし、聴き合って体験を分かち合い、悩んでいるのは自分だけではないと知るだけでも、孤立感から解放され、心の苦痛は軽くなります。また、日常生活に関する情報を交換できるのもメリットです。
家庭でできる落ち込み防止法
がんと上手につき合う11の工夫

専門家にかかるほどではないけれど、再発の不安が頭から離れないとか、どのように日々を過ごしていけばよいのかが気がかりな場合、アメリカでがんの患者さん向けに作成されたガイドラインを日本の事情も加味してアレンジした11の工夫を試してみてはいかがでしょうか。
1 「がん=死」と思い込まないようにしましょう。今日では、がんの多くが治癒可能ですし、新しい治療法が実用化されるまで長い期間コントロール可能ながんもあります。医師に完治は難しいと言われた場合でも、長期生存を果たしている方は多いものです。
2 自分のせいでがんになったと思わないようにしましょう。がんを進行させてしまうような性格や心の状態の存在は証明されていません。
3 気持ちが動揺したときは、情報を集めたり、人に話したり、気分を落ち着かせるために過去に助けになった方法を試してみましょう。
4 いつも前向きな考え方ができないからといって、自分を責める必要はありません。適応能力がある人でも、なかなかそうはいかないものです。
5 自分にとって助けになるものをどんどん利用しましょう。患者会やサポートグループに参加して、気持ちがラクになった方、意欲的に生活できるようになった方など、よい経験をしている方もたくさんいます。
6 心の専門家に相談することをためらう必要はありません。それは精神的に弱いということではなく、むしろ強さなのです。
7 リラックス法や音楽など、自分の気持ちをコントロールすることに役立つ方法を積極的に利用しましょう。
8 何でも質問できて、尊敬と信頼のできるような関係を医師との間に築いていき、治療上の「パートナー」になってもらえれば理想的です。
9 親しい人には病気に関しての悩みを打ち明け、医師と治療について話し合うときは、その人に一緒に来てもらうとよいでしょう。心の支えにもなりますし、医師の説明を聞きもらしたときや、理解しにくいときにも援助してもらえます。
10 自分の精神的なよりどころを考えてみましょう。過去につらい状況から救ってくれたことを行うのも一法です。
11 健康食品などの代替療法に気持ちをひかれたら、科学的に効果が証明されているのかなど、利点と欠点を客観的に判断できる人と話し合ってみましょう。効果のあるものがまったくないとはいいきれませんが、むやみに採り入れるのは賢明ではありません。