「腹膜偽粘液腫」に難病認定と 温熱化学療法の保険適用を!
7年経ってわかった病名

東京・練馬区在住の坂口稔さん(仮名、70歳)の場合も、最初はヘルニアといわれて手術を受けました。
その後も再発を繰り返すので詳しく調べて、腹膜偽粘液腫とわかったときは最初のヘルニアの診断から7年が経過していたのです。
「私も米村先生のところで手術し、今は元気になりましたが、3カ月おきに米村先生のいる草津まで行っています。治療費より交通費のほうが3倍ぐらい高くかかっています」
東京・多摩地域に住む奥谷秀雄さん(仮名、67歳)は、妻(64歳)が腹膜偽粘液腫の治療中です。
最初、地元の病院で「卵巣嚢腫です」といわれて手術したが、がんが疑われたため、がん専門病院に転院。ようやく腹膜偽粘液腫と診断された。しかし、担当医はこう説明したのです。
「この病気は粘液をとるしかないのですが、3年に1回とっていって10回もとれば80歳まで生きられますよ」
ところが、がん専門病院の手術で最初に粘液をとって3年後に受けた2回目の手術では、粘液がおなかの中でコールタール状に固まっており、処置が施せない状況でした。
「病院からは『これ以上、できることはありません』といわれました。がっかりしているとき、テレビの番組でこの病気の専門家として紹介されていたのが、米村先生でした。すぐに連絡して診察後、手術を受けましたが、最初の手術から5年がたってしまっていました」
医師の側からもっと治療情報を

これらの患者さんたちに共通しているのは、みなさん最初は別の病気と診断された点です。さらに、腹膜偽粘液腫とわかっても、多くの場合「治療法はない」とされ、症状軽減のためおなかにたまった粘液を抜く対症療法しか行われていません。
腹膜切除と腹腔内温熱化学療法という新しい治療を行うのは、米村さんを中心にごく限られた医師だけというのが現状です。
藤井さんらはこう訴えます。
「おなかに腹水がたまるだけなら定期的に抜けばいいかもしれないが、粘液質のものが腹腔内にたまると、腸閉塞を起こしたり、臓器にくっついて固まってとれなくなってしまいます。
完全切除しなければ再発を繰り返し、死につながってしまいます。エビデ���スがないという理由で米村先生らの治療法を『勧めない』という先生が多いのですが、生きたいと思って患者が納得するのなら、試す価値のある治療法ではないでしょうか。
ところが、そういう治療法があるのに医師は教えてくれない。医師が治療法を選ぶのではなく、生きたいと願う患者にすべての情報を提供し、患者に選択させるべきです」
難病認定を求める64万人の署名
支援する会では、病気の原因などの研究開発を進め、有効な治療法の普及、また、患者さんの負担を少しでも減らすために、難病認定をしてほしい、と署名活動を進めており、すでに合計で64万人もの署名が集まっている。
また、治療法のうち腹腔内温熱化学療法は保険の適用外であるため、今のところ病院側が費用を負担し、赤字覚悟で治療を行っているという。
「いま体調が良くて毎日元気に暮らしていても、完治は不明だし、何より再発が一番心配。だからこそ1日も早く治療法を確立してほしいが、まずは術式を学会で認めてもらい、そして腹腔内温熱化学療法が保険適用になってほしい。
海外では同じ術式が標準治療となっているものの、研究者が少ない日本ではまだまだです」
患者さんたちの祈りのような訴えに、医療は応えるべきなのです。
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