がん体験者の悩みを解決する 「モノづくり」を社会に生かす!
バングラデシュと心を1つに

試作が重ねられ、完成したのは参加メンバー全員の熱意がこもったものでした。
ショルダーストラップは幅を広くし、厚みをもたせました。ふかふかの低反発クッションが入っており体をやさしく守ってくれます。金具の位置も体への接触が少ないよう工夫しました。
「手提げバッグを肩にかけようとするとずり落ちる」との声には、レザーのひもを編むことで滑りにくい形状にして解決。ファスナーの引き手も長く、つかみやすい形にしました。
完成した商品の名前は「cocokara(ココカラ)」。“心と体が軽くなる、ここから始まる商品企画”の思いが込められています。
「一緒につくりましょう」と始めて、完成まで約半年。「多分大手のメーカーだったら数年かかったと思う」と桜井さんはいいます。
「とにかく動きが速かった。マザーハウスの工場はバングラデシュにありますが、打ち合わせが終わるとマザーハウスの人がすぐ向こうの工場に電話して、工場のほうも一生懸命にやってくれました」
何よりうれしかったのは、マザーハウスのスタッフたちが熱心にがんのことを勉強してくれたことだといいます。
「乳がんの治療をした人は、なぜ、どうしてこういうバッグがほしいの?」
「乳がんってどんな病気? どんなつらさがあるの?」
バッグづくりを通して、日本とバングラデシュとの“がん”をめぐる交流が続けられました。
一般の人にも魅力的なバッグ
この秋からマザーハウスなどの店頭に「cocokara」の商品が並ぶようになって、大きな反響が寄せられています。
「乳がんの患者さんだけじゃなくて、一般の人に普通に買われています。男性にも人気で、高齢の方も、これはいい、使いやすい、と買ってくれています」
がん患者が使いやすいもの、それは一般の男女にも、高齢者にも、若い人にも使いやすいものに違い��りません。
「高齢の方たちの声がつくり手に届きにくいのだとしたら、同じような問題で困っている乳がん患者の声を反映して、社会のさまざまな人に役立つモノづくりができればいいと思います」
これこそが本当のユニバーサルデザインといえるでしょう。
「バッグだけでなく、ほかにも洋服とか、杖、車イスにしても、ユーザー目線で見直せばもっともっと使いやすい、使って楽しくなるものはたくさんあるはず。できれば地場ブランドとも一緒になって、地域の産業振興にもつなげていきたい。患者支援と社会的なイノベーションが一体になって、小さな不具合をなくし、次なるアイデアを形にしていきたい。がん患者と企業や社会とのコラボレーションは、足し算でなくて掛け算だと思っていますから」
がん患者の経験を社会に活かしていく夢は、ますます広がっています。
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