早く診断がつけば救える命がもっとある。だから、検査を保険適応に!

取材・文●増山育子
発行:2013年1月
更新:2013年5月

早期診断のため検査費用の負担軽減を!

2013_01_16_02
厚生労働省へ署名を提出後に、記者会見を行う奥中さん(右端)。2012年2月と同8月で、合計14万筆を提出

熱が出てリンパ節が腫れ、肝臓の数値がおかしいなどというEBウイルス感染と似た症状の病気はたくさんある。そんななか、もう1つの問題はこの病気の診断に欠かせない検査が手近でないという点だ。

診断には、まずEBウイルスに感染したかどうかを調べる抗体検査を行う。次にEBウイルスがどのくらい増えているかを血液中のEBウイルスのDNA量を測って調べる(EBウイルスDNA定量検査)。

この検査が保険適応となっておらず、検査費用は全額患者さんの自己負担で1~2万円程度かかる。高額な検査なので、発症の疑いが低ければ躊躇される。その結果、発見が遅れてしまう。

「風邪のような症状の人に対して疑いがあるからといって自費で2万円の検査をするかというとしないでしょう。でも、インフルエンザが疑われれば、検査はその場でします。ですから、高熱が続く場合には、先にインフルエンザの検査をして陰性だったら次はEBウイルスをというように、簡単に調べられるようになるといいのです」

安価で簡便に検査ができる状況ならば疑わしければ躊躇なく検査し、診断につながる。

奥中さんらSHAKEでは検査の保険適応を求めて署名活動を行い、2012年2月に集まった1万7千筆を、また同年8月には約12万3千筆を厚生労働省に提出した。今後も引き続き要望を続けていく。

「署名をお願いすると『この病気はなんですか』と聞かれるので説明させてもらいます。そうやってこの病気を知ってくれる人を1人2人と増やしていきたいです。知ってもらうことで理解が得られ、研究も進み、治療環境も整っていくでしょう。病気を知ってもらうことが、私たちの救われる道なのです」

小児の患者さんをとりまく厳しい現状

2013_01_16_04
11月18日、骨髄バンク21周年記念キャンペーンイベント「Show Bank Pay It Forward 2012」(東京・代々木公園)にて、SHAKEは病気の周知と署名の呼びかけを行った

発症した患者さんの年齢をみると、多いのは6歳~15歳の小児期だ。蚊アレルギーという代表的な症状で発見されることが多い。そして、小児の治療は大人にもまして悩ましい。

「成長期の体にダメージを与えかねない抗がん薬や移植の治療ですから、小児の場合は治療開始の判断が��らに難しいです。子どもが元気なだけにハードな治療に踏み出せない、とはいえ病状が急に悪化して手がつけられなくなる事態は避けたい。治療をするかどうかの決断を迫られる親御さんのプレッシャーははかりしれません」

知ってほしい疑ってほしい

2013_01_16_03
2010年4月に情報サイトの開設から始まった奥中さんらの活動は、同年12月にSHAKEという患者会となる。医師を講師に招いた研修会を行い、慢性活動性EBウイルス感染症の現状と今後を学ぶとともに、患者家族との交流を深めている

この病気になった患者さんが手にする情報は「治療法がなく死に至る」といったネガティブなものが大半。同じ病気で治療に成功した人と知り合いたいという思いは強い。奥中さんはそんな思いを主治医に相談。そこで患者会の立ち上げを提案されたことをきっかけに、情報サイトを開設、患者同士の情報交換や悩み相談を行っている。

寄せられる相談で多いのは「どこで治療を受けたらいいのか」というもの。希少難病ゆえの悩みだ。サイトでは専門医の研究会のサイトとリンクしてセカンドオピニオンの受け入れ施設を検索できる。現在、窓口があるのは全国で4カ所だ。

「専門病院に患者さんが集まると症例が増えていいのですが、遠方の患者さんとご家族の負担が大きいです」

ただし、数少ない専門医の外来に患者さんが殺到する事態は避けたいという。たとえば「蚊アレルギーが出たがこの病気ではないか」という疑問がある。これについては専門医に受診する前にまず皮膚科で相談して、解決しなければ血液内科で調べてもらうのがいい。そこで限りなく疑わしい、あるいは診断がついて治療が必要となると、専門医を受診する。

このような順序の定着が望まれる。それには、医療者や一般の人への知識の普及と、簡単に検査が受けられる仕組みが必要だという。奥中さんは、その実現のために、この病気への理解が広まってほしいと訴える。

慢性活動性EBウイルス感染症CAEBV患者会「SHAKE」代表:奥中咲江
ホームページ:http://caebv.com
メール:caebv@caebv.com
1 2

同じカテゴリーの最新記事