癌と共に生きる会 会長/橋本榮介 患者と医者が真に平等であるために、患者自身ができることをする

撮影:坂本政十賜
発行:2004年1月
更新:2013年4月


第二、第三の平岩先生が出てきてほしい

癌と共に生きる会 会長 橋本榮介

 橋本さんにとって、最後に自分を賭けてみたい治療を実現してくれるのが、平岩さんだったということね。

橋本 治療もですが、そういう心づもりで患者に接してくれる医師、ということです。平岩先生は、医療行政はがん患者のためにどうあるべきかということを、治療を通じて発言されている。平岩先生ほど患者の立場に立って治療を行い、行政にも患者にも発言する医師はいないと思いますね。

 具体的に、会としてはどんな活動をされているのですか。

橋本 うたっているのは3点です。

患者同士の親睦を図ることは大前提ですが、平岩先生の治療方法を多くの人に知ってもらうこと。必要な薬品や使用方法などを早く認可するよう、関係機関に働きかけること。平岩先生の治療方法を研究・実践するよう、病院や医師に訴えること、です。

私自身は、平岩先生の治療が広がる環境を作ることが、日本のがん治療を変え、民主主義を定着させることと考えています。つまり、第二、第三の平岩先生が出てほしいというのがひとつ。もうひとつは、自分の命は自分で守るという気持ちで、行政と対等に渡り合うことが、患者の当然の権利だと言える土壌を、日本の文化として確立したいのです。

 そこまで患者に思わせる医師がいることに、感動しますね。ある意味ですべての医師が平岩さんだったら、医療行政はどんどん変わっていきますね。

橋本 当然、患者に対してもはっきりものを言われますしね。

 そうですか。どんなふうに?

橋本 自分のデータは自分で理解し、たとえば患者から「アメリカのこういう最新治療を一度やってくれませんか」と提案できるくらい、自分も勉強しろと言われます。

 そういう医師がもっと増えてもいい、とは思う。でも、私個人についていえば、一生懸命茶碗を作って美術館を経営しないといけないし、そのための雑用も片づけなければならない。病気に専念して本ばかり読んではいられない。だから、医師と同じだけの情報を持てと言われたら無理です。それを要求されるのなら、その医師にかかる資格はないということになってしまう。

橋本 けれど、患者が殺到する医師にどうしてもかかりたい場合に、だれかのツテよりも、どれだけお金を積んだかよりも、勉強したら診てもらえるというのは、ひとつの方針だと思うんです。

 たしかに、お金を積めば診てくれる医者とか、ゴマをすれば診てくれる医者とかいろいろいるけれど、勉強したら診てくれるという医者は少ないわね。

ご利益がないと動けないというのでは貧しい

 橋本さんは「癌と共に生きる会」の会長として、今後、新しい方向性を打ち出していかれますか。

橋本 平岩先生の治療法を広めていくという方向性はすでに出ていますし、会としてはそれでいいと思います。ただ、私個人としてやりたいことがあるんです。

先に少しお話ししましたが、日本社会の不十分なところを変えたいということです。

日本は縦の序列でなければ落ち着かない、という社会構造があります。でも、社会を変えていくには、全体を見ながらも、個人が個人として発言することが必要だと思います。私が元教師であり、民主主義をそれなりに意識して、がんばってきたという思いがあるから、そう考えるのかもしれませんが。

平岩先生が「気がついた者、必要だと感じた者が、まず実行せよ」と言う、この「偉い人」に頼らず、自分で解決するために動け、という考えが、「行政が認めていない治療を私に望むなら、なぜ厚労省にいって、ハンガーストライキでもなんでもしないのか」という言葉になるのだと思います。

こんなこともありました。母親ががんだという人に、私たちの活動に理解を示してくれる代議士を応援する手紙を書いてほしい、と頼んだんです。ところが、「半年待ちと言われた入院が、この人とこの人に話をしたら1週間で入れた。そういうメリットはあるのか」と聞かれました。ご利益がないと動かない。でも、それでは民主主義として貧しいと思うんです。

政治を動かすのは数。でも、そのまとめ方が問題

癌と共に生きる会 会長 橋本榮介
個人が個人として発言する、
そんなあたりまえ の社会を目指したい

 それでも、患者会ができて、がん雑誌ができて、ずいぶん変わりました。橋本さんのところも「癌と共に生きる会」で個人がまとまり、JCPCという全国組織を育てていこうとしているのは、とても大きな動きだと思います。JCPCでは厚労省に陳述書を出し、文書にして回答をくれ、という活動までされていますね。

橋本 政治を動かすのはやっぱり数です。けれども、その数にまとまるのにどんなまとまり方をするかということが大事で、そこに個人が目覚めてかかわっていくことが必要なのだと思っています。

でも、21世紀は女性の世紀だと思いますね。イヤをイヤと言えるのは女性。男性は何かとしがらみが多い。多くのことを変えていく時代に、女性にがんばってほしいという気がします。

 私は、女性解放運動や教育改革運動を、いつも先頭に立ってやってきた人間です。最後は医療行政の矢に当たりながら、旗を振らなければいけないのかなあと思います。でも、土いじりをして、やっと居心地のいい場所を作ったのにね。しんどいなあ~(笑)。

対談時には橋本さんが「癌と共に生きる会」会長でしたが、現在では佐藤均さんと交代されています

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