乳がん体験から医療を考える会 イデアフォー 世話人/光延真知子、中澤幾子 「まず、目の前にいるこの私を、納得させてください」そこからが始まりです!

撮影:坂本政十賜
発行:2004年3月
更新:2019年7月


治験勉強会は「危ない橋」それでも知識を得たい

乳がん体験から医療を考える会イデアフォー

 治験の勉強会にも取り組んでおられますね。

中澤 97年に「UFTとCMF無作為化比較試験」が実施されていることを知りました。

乳がんの術後補助療法で、標準治療として世界中に認められている多剤併用の抗がん剤治療と、効果の認められていない単剤の経口抗がん剤による治療の効果が、同じであることを証明するための臨床試験です。

再発するリスクの高い患者の半数が、効果が証明されていない治療を受けるのは問題だ、と私たちは発言したのですが、「そもそも臨床試験について知識がないままに発言したのでは、ただのイチャモンになってしまう。きちんと勉強しよう」ということになったのです。

当時、東京医科歯科大学臨床薬理学助教授の津谷喜一郎さんをアドバイザーに、98年2月、患者会として初めての臨床試験ワークショップを開催しました。

 よくこんなむずしいことをお始めになったなあと思います。

中澤 初日の勉強会で、津谷さんに「臨床試験は人体実験なのです」といわれて、びっくりしました。「治験は目の前の患者の治療ではなく、多くの患者のための最善の治療を見つけることを、目的としているのです。だからこそ、科学的根拠に基づいた、倫理的に正しい試験でなければ、実施してはいけない」と。目からウロコでしたね。

でも実際には、医師は治療的要素を強調して、実験であることをぼかしたがります。治験をきちんと理解していない医師が多い、という問題もありますが、あいまいなままに行われてきた過去があるから、正しい理解が広がらないのですね。

 彼らがほしいのは治療効果ではなく、データですからね。

光延 たしかに良質のデータでないと、臨床試験の結果を治療に反映できません。ですからきちんとした臨床試験を受けることは、患者にとってきびしいことなんです。ダブル・ブラインドなら、どちらの薬を使ったかなど、自分の治療の効果がわからないまま何年も過ごさなければなりませんし。

 イデアフォーとしては勉強会を通じて、そうした知識を広めていきたいということなんですか。

中澤 そうした気持ちもありますが、まず自分たちが知りたいんですね。

ただ、日本製薬工業協会のシンポジウムに呼ばれたり、厚生労働省の治験3カ年計画のヒアリングに出席を��められたり、「イデアフォーは治験賛成派だ」ということにもなりかねない危ない橋でもあるんです。ですから、シンポジウムなどでも、まず私を説得してくださいという批判的な立場で話を聞きます。そうでなければ、利用されてしまいます。会としての見解を出そうという話もありましたが、きちんとした治験なら参加したいという人もあれば、標準治療でいいという人もいるなど、個々の価値観が違いすぎて出せませんでした。

UFT=結腸、直腸がんや胃がんの術後に、再発予防目的で多く使用されている経口抗がん剤。一般名・テガフール・ウラシル
CMF=乳がんの術後に、再発予防目的でもっとも多く行われている、多剤併用化学療法
ダブル・ブラインド=二重盲検臨床試験。2つに分けられた治験参加者の、誰がどちらの治療を受けているか、試験が終了するまで医師にも本人にも分からないようにしたもの

いろいろな会があって、時には力をあわせて

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いろいろなカラーを持った患者会が、
力を併せることも必要です

 私もいつも同じ問題で悩むんですが、会の民主的合意を取りつけるのに時間がかかり過ぎるという問題を、どう解決していますか。

光延 一応、世話人に役割分担があり、各自責任をもってやっています。たとえば、私は渉外担当なので、取材の依頼に対してはある程度自分の判断で対応しています。判断に迷う場合は、今はメーリングリストがあるので、すぐに採決をとることができます。

 全員の意思を確認しているの?

中澤 世話人会で決めるので、誰かが独断で決めることはありえませんが、会員全員にはかることはないですね。規約でそう決まっています。

 でないと動けないのよね。今後の活動は、どんなふうに広げていきたいですか。

光延 私自身は乳がんに限らず、治療が大きな手術に頼るのではなく、集学的になってほしいという気持ちがあります。

中澤 でも、乳がん手術が縮小手術になってきたら、ほかのがんも切らないようになってきたんじゃない?

光延 やっぱり、医師の教育や情報開示に問題があるということでしょう。外国では手術室の上で家族が見ているし、ビデオの貸し出しもするのに、日本ではしませんものね。

 私も、個人の手術のビデオを販売しろと主張しているのよ。

中澤 今ではみんな乳房温存療法があることは知っていますが、医師によってその内容が異なるのが現状です。医師が学ぶシステムも作る必要があると思います。

 その通りだと思いますね。

それにしても、会にもカラーがありますね。私はそれぞれの会が特徴をもって、入る人が掛けもちしたらいいと思うの。ひとつの会が多くの要素を満たすのは無理ですから。

光延 内容や目的が違うからこそ、いろいろな患者会があるわけでしょう。それで何かが起きたとき、協力してまとまってもいいと思います。

 本当にそうですね。今日の対談をお願いしたのは、そういう気持ちもありました。今後とも、協力できるところはぜひ協力しあいましょう。今日はありがとうございました。

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