NPO法人グループ・ネクサス(悪性リンパ腫患者・家族連絡会) 設立発起人/津山あつ子、世話人/天野慎介 正しい情報、正しい治療を 患者を孤立させないために、だからこそ患者会を

撮影:板橋雄一
発行:2004年6月
更新:2019年7月


若い年代にも発症するという問題

悪性リンパ腫患者・家族連絡会「グループ・ネクサス」
悪性リンパ腫は、疾患の出方が多用で、
わかりづらいという特徴がありますね

 私の知識では、普通がんというのは、加齢とともに増加していく、高齢者に多い病気なのですけれども、悪性リンパ腫や白血病などの血液がんは、年齢を問わずに罹る危険性がある、というイメージがあります。それは間違っていますか。

天野 それは間違いではありません。高齢の方が割合としては多いというのは確かなことですが、年齢を問わない、というところも特性の一つです。

とくに「ホジキンリンパ腫」というタイプでは、発症のピークが若年者と高齢者の二つにあることが知られています。悪性リンパ腫のなかでも、たとえば胃にできるタイプなどは、ピロリ菌の感染が原因となって発生していることが、可能性としてかなり高いとされてるものもありますが、大半の悪性リンパ腫の発症の原因については、今まさに研究が進められているところです。

 原因もよくわかっていない。若い人でも罹る。若い患者さんにとっては、その後の社会復帰も大きな問題ですね。そのようななかで病気と闘うことの一番の難しさは、どこにあるのでしょう。

天野 悪性リンパ腫というのは、血液のがんですから、抗がん剤のみで治癒が可能な疾患です。

私自身も、CHOP療法という世界的な標準治療である抗がん剤治療と、放射線治療をしています。抗がん剤を大量に投与するための、「自家末梢血幹細胞移植」というハードな治療も受けています。これは簡単に言ってしまうと、自分の骨髄液をあらかじめ取って保存しておいてから、大量の、致死量をはるかに超える量の抗がん剤を投与して、がん細胞も、正常細胞も、全部根絶してしまって、その後に、保存しておいたものを輸血という形で戻すという治療です。

 そういうときは、職場は休暇を認めてくれたのですか?

天野 最初は休暇でいけるかと思ったんですけども、治療が予想以上に延びてしまいまして、そこの職場は結局辞めました。

 職を捨て、治療に専念したわけですね。

天野 そうですね。半年間治療をして寛解になりまして、3カ月後ぐらいに社会復帰したんですけれども、それから1年ぐらいしてまた再発してしまいまして、でも私が再発したときには、ちょうど分子標的薬の新薬、リツキサン(一般名リツキシマブ)が承認されていまして、これを使ってみようということになりました。

 承認されてなかったころは、リツキサンを使うと、大変な費用がかかったのでしょうね。

津山 私の母のときには、未承認だったので、個人輸入でした。1回で、大体4本でセット��んですが、4クール打ちますので。それで大体130万円ぐらい。

天野 別の種類の治療になりますが、ABVD療法という治療がありまして、そちらのダカルバジンという薬は、ずっと承認が下りてなくて、やはりつい最近下りたという事情があります。

 抗がん剤が治療の中心にある、という意味で、悪性リンパ腫の患者さんにとって、まさに新薬の承認は命綱そのものともいえますね。

ホジキンリンパ腫=発症すると特殊な細胞がリンパ節の中で増殖する
CHOP療法=エンドキサン(一般名シクロホスファミド)、オンコビン(一般名ビンクリスチン)、アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、プレドニン、プレドニゾロン(一般名プレドニゾロン)を組み合わせた療法
分子標的薬=がん細胞に特有の分子、もしくはがん細胞に特別に多い分子を標的にしてがん細胞を攻撃する薬
ABVD療法=アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、ブレオ(一般名ブレオマイシン)、エクザール(一般名ビンブラスチン)、ダカルバジン(一般名ダカルバジン)を組み合わせた療法

不足している血液内科の専門医

 血液内科、腫瘍内科の専門医の少なさも、問題でしょう?

津山 血液がんにとって抗がん剤専門医の存在は不可欠ですが、まだまだ不足しているのが現状です。内科があっても、血液内科の先生がいなくて、ほかの大学病院から週に1回だけ、血液内科の先生が来て治療するという病院も、かなり地方では多いですね。もともとあまり知られていない病気ですし、10万人に4、5人なるかならないかぐらいの発症率なんです。しかも病気の特殊性から診断が難しく、再発した後とか、標準以外の治療になると、専門医のなかでもいろいろ意見が違ったりもするものですから、どうしても専門的な病院へ患者さんが流れて集中してしまう。病院が混雑すれば、当然患者さんも先生もゆったり話せないし、殺伐としてしまうという事態も生まれます。

天野 しかし、その逆も実はありまして、まず自分自身が悪性リンパ腫であるかどうかを知らないという方も結構いらっしゃいます。

 告知をされてないという意味ですか。

天野 そうではなくて、ドクターが悪性リンパ腫であることが分かっていないとか、診断までに非常に時間がかかってしまうケースです。

われわれの患者会で、一番問題となるケースなんですが、悪性リンパ腫であることがわからなかったり、悪性リンパ腫であることがわかっていたとしても、適切な治療を受けていない場合がかなり多くあるんです。

錯綜する情報の選択に患者会が果たす役割

悪性リンパ腫患者・家族連絡会「グループ・ネクサス」
比較的珍しいがんであるだけに、
患者が孤立しないように。「ネク
サス」の役割は大きいですね

天野 抗がん剤の中には毒性が非常に強く、一生涯で投与できる回数が限られているものもあります。つまり、いいかげんな投与を受けると、その後の貴重なチャンスが失われてしまうことになる。そして専門的な病院に紹介されて来たときには、もうこれ以上使えないほど抗がん剤を使われてしまっているとか、すでに治療の選択肢が非常に限られてしまっている。そういうことから、われわれの会に駆け込んでくる患者さんもいます。

だから最初から知識があれば、そういうことは防げたはずなんです。悪性リンパ腫になった患者さんは、まず情報が必要。これはどの疾患でもそうですけれども、正しい情報がないと、治療機会、治るチャンスをみすみす失ってしまう。そこは非常に重要な問題です。

津山 移植の問題にしても、提供するためにバンクに登録していても、いざ移植を前にすると、提供者の家族の猛反対があるというようなことは、珍しくありません。実際に兄弟で提供者と患者の立場になったとき、深刻な家族間の対立問題となってしまって、その後もそのご家族が非常に関係が悪くなってしまわれた、ということもありました。

 移植に関しては、骨髄バンクにしても、臍帯血移植にしても、現状は第三者の好意に頼っているところが問題ですね。早く制度として、誰もが納得できる形で確立しなければならないはずです。だからこそ、患者を孤立させてはならない。「グループ・ネクサス」の役割は大きいですね。

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