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社団法人日本オストミー協会 会長/稲垣豪三 内向きの活動ではなく外に向けて発信する患者会の活動を!!
温泉文化にもバリアフリーを!

改革、温泉文化のバリアフリーを」
稲垣 温泉っていうのは我々オストメイトにとっては大きなバリアーと言うかハードルと言うか、難しい問題です。
俵 それは私たちもまったく同じです。
稲垣 しかし「1・2の3で温泉に入る会」ってとてもいい名前ですね。思いきって入ってしまえばどうってことないんですから。
俵 そう、入るまでが大変。
稲垣 私どもの支部で年に1、2回温泉旅行に行くんです。初めて手術して自分の家の風呂にも入れない人がいるんですね。それで皆で『大丈夫だよ!』って言って「ドッボン」って入っちゃう。皆さんとても喜びますよ。
俵 実は私、その“温泉場の脱衣場の設計を変えてもらう”運動をやろうと思っているんです。どこの温泉場でもしきりがガラス張りになっていて脱いでいるところが丸見え。おまけに脱衣場の隅で籐椅子に座った温泉名主のようなおばさんがいる。あんな広い所でじっと脱いでいる様子を見られるのはイヤですよ、女同士でも。お風呂に入るときより勇気がいる。
稲垣 そうですよね。
俵 そこを個人ブースにすれば、脱いだ後手ぬぐいを胸に当てて入っていける。それが軌道に乗ったら次は“ピンクの手拭いをもった人は湯舟でも手拭いをとらなくていい”運動をしたい。私たちの会ではピンクの手拭を作っているので、これをシンボルとして定着させたいんです。
そうすればどんなに入りやすいか。これは「1・2の3で温泉に入る会」の運動ですけれど、同時に“温泉文化を改革する運動”にもしたいんです。“温泉の中にもバリアーがあるんだ”と。そしてさらに私たちの心にもあるバリアーを粉砕していきたい。一緒にやりませんか!?
稲垣 それは、ぜひやりたいですね。
俵 日本の温泉は健常者を念頭において作っていると思います。病んだ我々が人目につかず脱げる場所もない。脱いでから風呂場に行くまで皆に見られて歩きづらい。お風呂に入ったら身体をじろじろ見られる。オストメイトの方も同じでしょう。
稲垣 そうですね。我々の場合は入浴用のキャップがあるんですけど、やはり興味本意に見られることが辛くて温泉には入れない方が多いですね。一人では。
俵 断固やりましょう。“温泉文化のバリアフリーを!”そして“自分自身の内なるバリアフリーを!”。人間は不本意にも障害をもった身体になるときもある。人さまざまです。それらすべてをひっくるめて人間です。そして温泉に入る権利は誰にでもあるはず。健常者だけが温泉の楽しみを得られるのではなく、どんな人も楽しめる環境作りをしたい。
大事なのは“健常者も障害(病気も含めて)を負った人も、それぞれを認め合い、温かく受け入れあっていこ��よ”ってこと。障害を負っているからと言って、楽しみを断念することなんてないんだ、と声を大にして言いたい。
声をあげなければ環境は変わらない
稲垣 やはり言わなければいけないんですね。言わなければ永久に分かってもらえない。今まで病気を隠そうとするあまり、不都合や不具合を訴えることをせず、閉鎖的になり、その結果自分たちを苦しめていました。先ほどのトイレ問題にしてもね。何度も言いますが、本当に習志野の女性には頭が下がります。
俵 私も拍手を送りたい。女性にとって“乳房がないこと、人工肛門をつけていること”を公表するのは、男性以上に勇気がいりますからね。さらにもっと要望を出してもいいんじゃないですか。
私たちも“乳がんは切除するもの”と医者に決めつけられて何も言えないまま乳房を失ってしまったけど、やっと『温存療法を!』と声をあげて、それがかなり浸透してきています。たとえば『外に出ているのは不便だから体内で処理できるようにして!』とか『手術をした後苦労しないような治療を!』と訴えるべきですよ。今の医療はまだまだ医者本意です。患者にとって都合のいい医療でなければ意味がないじゃないですか。
稲垣 でも当事者としては『そこまで言っていいの?』って思ってしまうんですよ。
俵 遠慮しちゃうのね。でも本人が不便だったら不便だと言うしかないと思う。排泄は一生の問題ですから。
稲垣 ある新聞記者の方に“遠慮の固まりだ”って言われたことがあります。自分たちはそう思ってないんですけど、やはり私達自身の内なるバリアフリーを実現しなければ進歩はないんですよね。
オストメイトの介護問題

稲垣 私たちが抱えている問題の一つに介護があります。年をとって手が動かなかったり寝たきりになったりしたら、自分で交換ができなくなります。
俵 そうですね。
稲垣 ところがストーマ装具の交換をヘルパーはできないんですよ、医療行為だからという理由で。外して捨てるだけが何で医療行為なんですか。おむつの交換と全く同じなのに。
俵 どうして? それは厚労省の解釈ですか?
稲垣 そうです。しかし先日、日本看護協会に行って話したら、『厚労省と交渉しましょう』って言ってくれました。トイレの問題がとりあえず改善に向けて歩き出したので、今度は介護問題をやらなければと思っています。
俵 家族がいればいいけど、配偶者に先立たれたりシングルの人もいますからね。そういった患者の現実に無頓着だから“ストーマ装具の交換は医療行為だ”なんて解釈が生まれるんですよ。また、介護とは別の問題ですが、インポテンツになる人が多いでしょう。もし子供を作る前に病気になってしまったらどうするんですか? 体外受精とか?
稲垣 それは聞いたことないですね。正確な統計数字は把握していませんが、手術を受けた人の半分程度が影響を受け、その中で子供のいない方は諦めてしまうケースが殆どじゃないでしょうか。
俵 この前、朝日新聞の若い記者が本を出しましたね(上野創著『がんと向き合って』)。精巣がんの方。その中で、手術を受けるときに病院が『念のために精子を保存しましょう』と、精子保存をしたという記述がありました。オストメイトの方々にもそういう措置がとれれば、子供を諦めなくてもいいわけですよね。
稲垣 そうですね。今オストミー協会の平均年齢は70歳なのでなかなか話題になりにくいですが、もしそういう方がいたらぜひ応援したいですね。
発展途上の地域にも援助の手を
俵 今後、会としての活動はどのようにしていく予定ですか?
稲垣 今、日本オストミー協会としてどうしようかと模索しているんです。東南アジアの国々に対して手を差し伸べる必要があるんじゃないかと。特に貧しい地域に。
それらの国ではさっきお見せしたパウチなんかは手に入らなくて、空き缶にティッシュを詰めて使っていたり、非常に悲惨な状態なんです。現在オストミー協会の会員で余ったパウチを集めて中国に送るプロジェクトを10年続けている方々がいるんですけど、行政側からは『余っているなら支給を減らす』とか言われていて暗礁に乗り上げる可能性もあるんです。
俵 貧しい地域はたくさんあって、それこそ満足な医療を受けるのも難しい。この病気を患っていたら本当に辛いですね。
稲垣 そうなんです。患者会がNPO法人を別に作って実績をつくれば、賛同してくれる企業や応援してくれる人が出てくるんじゃないかと考えているんですけど。
俵 ご自分たちのことも歩き出した途中なのに、他の国の支援に着手なさる姿勢はすばらしいですね。頑張ってください。
社団法人日本オストミー協会
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当会では、オストメイトが相互に助け合って力強く生きていく道を模索し、オストメイトの幸せな生活を願って活動をしています。情報の収集、実態調査およびこれらの提供。会員の体験交流や医療相談・講習会、福祉政策の改善活動などを行っています。
1・2の3で温泉に入る会
〒371-0101
群馬県勢多郡富士見村大字赤城山1789-64 俵萠子美術館内
電話:027-288-7000
Fax:027-288-8700
※俵萠子美術館には「1・2の3で温泉に入る会」の役員は常駐しておりません。伝言などを残していただければ、追ってこちらからご連絡させていただきます。
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