財団法人財団法人がんの子供を守る会 会長/垣水孝一、ソーシャルワーカー/近藤博子 がんと闘う子供を育み、サポートする社会環境を目指して

撮影:板橋雄一
発行:2004年10月
更新:2013年4月


小児がんに罹った子供への告知の問題

財団法人 がんの子供を守る会

垣水 この会は、治癒率が向上し、思春期を迎える子供への対応をどうしたらよいかという親御さんの相談から平成7年に発足した患者本人の会です。

近藤 フェローは仲間という意味で“仲間と共に明日を築きあげていこう”という願いが込められています。活動には“仲間づくりを提供する”“お互いの経験、悩みを分かち合う”“小児がんに対する正しい認識を広める”という3つの柱があります。本人が自分の病気を知っていて自分の意思で参加することが条件となります。

 自分の病気を知るといっても小さな子供が多いわけでしょう? 何歳くらいから知らせるのですか?

垣水 ケースバイケースですね。それも病名を言うのではなく、身体の中でどんなことが起きているか、と説明するんです。

 あなた方の会の会報誌を読んだときに、こんな小さな子がこんなに素晴らしい理解をするのかと本当に驚きました。日本人は“親と子は一心同体”的な考えをしがちで、子供を一つの人格として認めることをしない文化を作ってきましたから、このフェロートゥモローの会はある意味で画期的な会だと思います。

垣水 そうなんです。今まで患者である子供の意見は親を通してしか聞けませんでした。だから本当の気持ちが分からなかった。親というフィルターを通してだけの判断は、ときとして過った方向に行ってしまうこともあります。

近藤 子供たちが『病気に罹ったのは僕達なんだから、親が背負うことはない。だから病気のことをきちんと知らせてほしい』と言ってくれたときには感動しましたね。子供たちは親が思うよりずっと強くたくましく受け止めているんだと。

子供に異変を感じたら躊躇せずにまず相談の電話を!

 現在“がんの子供を守る会”の会員はどのくらいですか。

垣水 3500人くらいです。小児がんは子供が罹るがん全部ですから、脳腫瘍、白血病、神経芽腫、網膜芽細胞腫、その他多数なわけです。

 それで会員数が多いんですね。お子さんが亡くなった後も会員でおられる方もいらっしゃるでしょうしね。それにしても私などは聞いたことがないがんがあるものですね。

垣水 そうですね。子供特有のがんがあるんです。私の子供がかかったのは“神経芽腫”といって、子供しか罹らないがんの一つです。他にも網膜芽細胞腫などがあり、小児白血病が一番多いですが、これも大人の白血病とは少し異なるようです。

 一般の方はなかなかそういう病気のことは分からないですよね。

垣水 分からないですね。私などは愚かにも子供にがんがあることすら知らなかったのですから。

 そうする��ね、子供に何か異変を感じたとき、どのように対応したらよいのでしょう。

垣水 うちの会では月曜日から金曜日の10時から4時までソーシャルワーカーが電話相談を受けています。少しでも心配なことがあったら、まず相談して欲しい。そうすればその症状が心配なものであるか、それならどういう病院に行ったらよいか、いろいろお教えできます。また実際に病院に罹っている方でもこの病院でよいのかなど、不安を感じたら電話して欲しい。

近藤 先ほど地方ほど偏見が強いという話がありましたが、電話さえもかけにくいようなんですね。切羽詰まった状態になると、それだけ選択肢も少なくなってしまいます。子供のがんは大人以上に時間を競いますから躊躇なさらずに勇気をもってお電話いただけたらと思います。

 親が気付いてあげて親が適切な行動をとらなければ生命にかかわるわけですからね。世間の目だとか医者に気を遣うだとかは親の問題です。そういうことは二の次ですよ。

垣水 子供のことは親が一番知っているのだというような考えが、結果として発見を遅らせたりするんですよね。そういう不幸な事態を避けるためにも躊躇は禁物です。またインフォームド・コンセントを受けても、狼狽してしまってきちんと理解できないまま時間が過ぎてしまうケースや、子供が亡くなってしまって心の整理がつかず苦しんでいる方も多いと思うんですね。うちの妻もそうでしたから。一人で苦しまないでぜひ相談して欲しいです。

小児がんには多くの人々のサポートが必要

財団法人 がんの子供を守る会
小児がん患者本人とその家族の生活の質
を高めるためにも、心理的・社会的支援を
含めた包括的なケアが必要になります

 がんに罹ったお子さんが退院して学校に戻ったとき、その生活の格差について、会として何か橋渡し的なサポートを行っていますか?

垣水 小児がんの教育支援のためのガイドラインを発行しています。これは医者、患者本人、両親、兄弟、そして学校の先生に読んで欲しいです。

近藤 子供が元の学校に戻れるようにそれぞれが役割を果たし、連係をとりあって対応していくことがとても大切になります。そのためには、子供が小児がんと診断されたときから配慮が必要なので、学校の先生にはガイドラインを読んでもらいたいですね。そして入院時も院内学級と学校の先生との情報交換が重要になります。やっぱり子供は元の学校に戻れることを夢見て一生懸命に闘病生活を続けているんですから。病気であっても子供は成長し続けているのです。

 以前、私が中野区の教育委員をしていたときに、院内学級のあり方について議論したことがありますが、今思えば委員たちがその実情をよく知っていたとは言えない気がしますね。

垣水 結局頑張らなければいけないのは親なんです。でもどうやって頑張っていけばいいのか分からない。そのためにガイドラインを作ったんです。その中には小児がん患者の心のケアのためのガイドライン、つまり将来自分が壁にぶつかったときにどう克服していけばよいか等も含まれています。

 私もいろいろながん患者会の方とお話ししてきましたが、小児がんのケースは、単に病気だけではない複雑な問題を抱えているのだと、改めてその難しさを感じました。患者本人、親、学校の教師、そして世間、実に多くの人々のサポートが必要ですね。傷ついた幼い生命を立派に育んでいける環境作りが望まれます。

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当会は昭和43年にがんで子供を亡くした親たちによって設立されました。患者とその家族が直面している困難や悩みを軽減することを目的に、相談事業や子供を亡くした親の交流会、治療研究助成、広報活動などを行っています。

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