- ホーム >
- 患者・団体 >
- 患者会リレーインタビュー
社団法人銀鈴会 会長/久永進 不可能を可能に持っていく努力
まず食道発声をきちんと身につける
俵 ELのクラスも見せて頂いたんですが、ELというのは第二次世界大戦の頃からアメリカでは使っていたらしいですね。日本で普及したのはいつ頃なんですか
久永 この会が出来た頃ですから50年前くらいですか。
俵 ELには補助金が出るんですか?
久永 出ます。自治体によって給付率が違いますが、年収2千万以下でしたら全額補助してくれます。
俵 ところでELとは何の略ですか?
久永 エレクトロ・ラリンクス、電気喉頭です。
俵 私も先ほど試させて頂いたんですけれど、小さな声で『ファファ』と言えばそれがちゃんと音になるのでコミュニケーションはできますね。今日、訓練に来ている方は皆さんお持ちなんですか?
久永 持っていますが、先にELをやって食道発声を習うと成功率はほとんどないんです。これは原理が逆だからです。ELは機械を当てて口を動かすだけなんですが、息を入れてはダメなんです。ところが食道発声は空気を口から食道に入れなければならない。その音で喋る。『空気を入れてから口を動かすように』って指導しているのに、ELは『空気を入れずに口を動かして』というワケですから、逆の癖がついちゃうわけです。
俵 つまり食道発声をちゃんとやってからELを勉強したほうが良いわけですね。
久永 そうです。食道発声でも、壁にあたる人がいます。どうしても食道発声が難しいと。そういうときは、ELに移行すればスムースにいきます。
俵 ELがいろいろな声を出せるようになるといいですね。
久永 私たちもメーカーに開発を頼んでいます。そうすれば声に個性が出てより自然体になりますから。
声を取り戻して元の職場に

「失った声も必ず取り戻すことが出来ます。あ
きらめないで一緒に頑張っていく」と久永さん
俵 ところで、喉頭がんというのは、手術した後、転移などの心配はあるのでしょうか?
久永 転移の可能性は低いですね。喉頭は握り拳くらいの軟骨なんです。手術前にここから散ってしまうと食道やリンパに転移するんですけど、中にいる間に取ってしまえば転移しにくいです。声がかすれたり、変わったりするので見つけやすく早期に取れば治りやすいがんなんです。
俵 やはり前兆は声がかすれるんですか?
久永 そうですね。僕の場合は、ほとんど症状が出なかった。ちょっと声がかすれたくらい。でも42歳といえば働き盛りですからタバコは吸うわ、酒は飲むわで、声なんかしょっちゅうかすれていたんです。だから病気だなんて思いませんでしたね。ただ魚の小骨がつかえたような感じが続いて声も出ないのはおかしいと思って、やっと病院に行ったら即入院、手術でした。幸い軟骨の中にとどまっていてくれたので現在まで転移もなくきています。
俵 それはよかったですね。で���声さえ取り戻せば職場には復帰できますか?
久永 もちろんです。ほとんどの方は元の職場に帰っていきますよ。
俵 病院では手術の前に『訓練したら声が戻ります』とか『手術の前に銀鈴会を見学するといいですよ』とか言ってくれるんですか?
久永 そういう病院が増えましたが、全てではありません。耳鼻咽喉科の学会などで先生方にお願いしてはいるんですけど、なかなか浸透しないですね。
俵 声を取り戻すことができるんだと知って手術を受けるのと、何も知らないで手術を受けて、麻酔から覚めたら声が出ないというのとでは全然違うと思いますよ。
久永 そうなんです。でも今だに知らない方もいます。
俵 私も応援します。“最初に銀鈴会に行ってから手術を受けなさい”って声を大にして言います。医者は“がんをとる”ことだけが仕事だと思っている人が多いでしょうけど、患者にはそれからの人生があるんだということを考えてほしいです。『生命が助かったのだからそれでいいだろう』で終わらず、“声を取り戻すための患者会を手術の前に見学させる”という項目を手術前のコースとして入れてほしいものです。
久永 私たちもそう考えています。だから、それをずっと言い続けているんです。
俵 だってこうして2時間も久永さんと何の問題もなく対談ができるんですから。この事実をまだ声を取り戻していない方々に知ってもらいたいです。
訓練すれば必ず声は取り戻せます
俵 (会報を見て)喉頭摘出者団体アジア連盟というのは銀鈴会がリーダシップを取っているのですか?
久永 そうです。14カ国の喉頭摘出者の会をまとめています。初代会長の重原さんが『声を失って苦しんでいる人は日本人に限ったことじゃない。助け合いに国境はない』と言って、アジア諸国を回って食道発声を教えたんです。お伴をさせられてエライ目に遭いましたけどね(笑)。今や各国に患者会ができました。
その活動が国連に認められ、『あなた達とこのままお別れするのは惜しい』と言って頂き、国連との協議資格を有するNGOに認定されて今に至っています。
俵 素晴らしいですね。大変立派な活動をされていると思います。
久永 声を失うということは大変苦しいことですが、仲間はたくさんいて訓練すれば必ず声は取り戻せます。それが難しくてもELという機械もあります。一人で悩んで落ち込んでしまわず、ぜひ我々の所へ訪ねて来て欲しいです。
俵 心強いお言葉ですね。今日は貴重な皆さんの訓練風景を見学させていただき、ありがとうございました。
対談を終えて-俵さんの感想-
“生きる”ということは、“伝えあう”ということなんだ。“伝えよう”として懸命の努力をする人々を見て、涙が止まらなくなった。医師の皆さん。手術の前、患者にこの光景を見せてあげてください。
社団法人銀鈴会
〒105-0004
東京都港区新橋5-7-13 ビュロー新橋901
電話:03-3436-1820
Fax:03-3436-3497
ホームページ
私たちの会は喉頭・咽頭・甲状腺などの腫瘍のために、声帯を摘出しこえ(構言機能)を失った人たちがお互いに助け合い、親睦を深める団体です。先輩喉摘者が、新人喉摘者に食道発声を教えています。東京都障害者福祉会館で毎週火木土の3回(PM1:00~2:30)訓練教室を開いています。教室開催日の見学は自由です。
1・2の3で温泉に入る会
〒371-0101
群馬県勢多郡富士見村大字赤城山1789-64 俵萠子美術館内
電話:027-288-7000
Fax:027-288-8700
※俵萠子美術館には「1・2の3で温泉に入る会」の役員は常駐しておりません。伝言などを残していただければ、追ってこちらからご連絡させていただきます。
同じカテゴリーの最新記事
- ウィメンズ・キャンサー・サポート 代表/馬庭恭子 婦人科がん。その微妙な心のひだを分かち合う場として
- 日本骨髄腫患者の会 代表/堀之内みどり 最新の情報と会員の絆を武器に難病に立ち向かう
- NPO法人生と死を考える会 副理事長/杉本脩子 悲嘆の先に見えてくるもの
- 支えあう会「α」 代表/土橋律子、副代表/五十嵐昭子 がん体験から命を見つめ、自分らしく生きる
- NPO法人血液患者コミュニティ ももの木 副理事長/大橋晃太 入院患者の生活の場に人間的な温かみを
- 社団法人銀鈴会 会長/久永進 不可能を可能に持っていく努力
- リンパの会 代表/金井弘子 がん治療の後遺症「リンパ浮腫」を知る
- 内田絵子と女性の医療を考える会 代表/内田絵子 乳がんになって教えられたこと、出会ったこと 多くのことを人生の勲章に
- 財団法人財団法人がんの子供を守る会 会長/垣水孝一、ソーシャルワーカー/近藤博子 がんと闘う子供を育み、サポートする社会環境を目指して
- 社団法人日本オストミー協会 会長/稲垣豪三 内向きの活動ではなく外に向けて発信する患者会の活動を!!