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NPO法人血液患者コミュニティ ももの木 副理事長/大橋晃太 入院患者の生活の場に人間的な温かみを
病院でのボランティア活動

「命という場に居合わせたことによって、
人間からでてくる力をスゴク感じましたね」
と大橋さん
大橋 病院にいる人たちは、みんな時間的にも身体的にも心にも余裕がないんですよ。だからこそ“外部の人を病院の中に入れる”ということはすごく重要じゃないかなと思います。
知り合いがシアトルで入院したとき、まったく英語が分からなかったら、通訳ボランティアの方が面倒をみてくれて、単に通訳だけでなく、お子さんが亡くなって途方に暮れていたときにもあたたかく気遣ってもらった、と感謝していました。医療者が全部やるなんてとても無理なんです。それなのに日本では外部のボランティアを受け入れる体制が出来ていないように思います。
俵 乳がんの手術の後、退院する前日に患者会のボランティアの方が手製のパットを持ってきて下さったんです。入院するときに退院時のパットのことなんて思いもよらなかった。だから明日退院というときに患者会の方が来てくれてとても嬉しかった。
そのとき、やっぱり病院にはボランティアが必要だなあと思いました。ただ病院側からすれば自分たちの管理外にある人にうろうろされるのは迷惑なんだと思います。そんなお硬い病院で、大道芸などの活動がよく許してもらえましたね。
大橋 僕は入院しているときからそういうことを医者に話していたので、活動については比較的協力的でした、医療者の方は。病院の事務からすればあんまり嬉しくないと思いますけど。
俵 なにか事故でもあったときに誰が責任を負うんだって。
大橋 そうなんですよ。例えば大道芸で風船が割れたときにそれで心筋梗塞を起こすようなことがあったら誰が責任を負うんだって。それを言われてしまうと僕たちは何もできないんですけど。しかし、お世話になっている看護師長さんが『そのときは私が責任を持ちます』と口添えしてくれたお陰で実現しました。それからは東大病院でやったという実績で他の病院でやりやすかったですね。今は病院も、とても友好的に考えてくれていると思います。
俵 その大道芸というのはどのぐらいの頻度でやってるんですか?
大橋 3カ月に1回ぐらいなんですが、もっと増やしたいとは思っています。
俵 具体的には病院のどこで何をやるんですか?
大橋 最近は食堂が多いですね。大道芸サークルの人などを呼んでやって貰うんです。一番評判がいいのがバルーンショー。患者も参加できるので人気です。
俵 「ももの木」の人ではなくて外部の方を呼ぶんですね。
大橋 そうです。特に東大病院は大学病院なので、大学のサークルにお願いしたりしています。
俵 そういうことをさせてくれる病院というのはどのぐらいの割合でありま��?
大橋 そうですね、僕たちは東大病院と駒込病院と医科歯科大学病院の3カ所でやっているんですけれど、自分がそこの患者だったので、その辺を利用している部分もあります。何年も付き合っているので僕の信用もあるのかもしれません。単にボランティアとして申し込んだらたらい回しにされて、結局実現しないかもしれませんね。
俵 私もそう思います。他の患者会の方が同じようにできるかと言うと難しいでしょうね。
命の講演会
俵 それともう一つあなたたちのやっていることで面白いのは講演会ね、命の講演会。やってみて手応えはどうですか? 子供相手に話すということはあらゆる講演の中で最高に難しい。その辺りをどう克服されているのかなと興味があります。
大橋 胸が痛いんですけれど、1つ言えるのは、僕たちは先生でもプロの講演家でもないということ。講演するのは元患者がほとんどなので、自分たちが経験したことをありのままに伝えたいと思っています。そこから発展させてメッセージ性を強くするのは、正直まだ自信がないです。
そして、僕たちが講演に行くのは1度きりですから、学校の先生やご家族に協力してもらわなければ効果は続きません。そういう意味で学校の先生と保護者の方に出来るだけ協力してもらえるようにやっています。
俵 でもプロの先生であっても“性教育”と“命の問題”は難題ですからね。
大橋 そうですね。しかし、今いろいろな事件などが起きている中で、先生の側にも“命の問題”についての授業に関心があるようです。そうした授業の教材として、僕たちのケースも取り上げてもらえれば、と思っています。そして病気の種類にかかわらず、将来的に“患者が自分の体験談を話す”ということが自然に行われるようになれば嬉しいなって思います。
俵 講演活動の主旨としてドナーを増やしたいというアピールもあるのではないですか?
大橋 そうですね。例えば骨髄移植を体験した人が小学校で話をすることによって、結果としてドナー登録という制度を知ってもらえたら嬉しいです。
俵 いずれにしても“命の大切さ”を理解してもらうことは大変難しいですよね。講演したからといってその場で理解してもらえるはずもないし、相手によっても受けとり方が違ってきますし。子供ならなおさらです。
患者を経て医の道を目指す
俵 話は戻りますが、工学部で博士号をとってから医学部に編入されましたね。患者だったあなたが医者になることは、やはり患者の気持ちが分かるという点で大きなメリットですね。
大橋 まだなっていないので想像でしか言えませんが、おっしゃるようなメリットもあれば、逆にそれがデメリットになることもあると思うんです。
ただ患者さんに敬意は常に抱きたい。語弊があるかも知れませんが患者仲間は医者、家族、友人にもかえがたい存在だったんです。僕が一旦は見つかった3人のドナーに断られ、自暴自棄になり絶望していたときに励ましてくれたのが患者の仲間たちでした。『治る確率が5パーセント以下の治療に抗がん剤で苦しむだけの価値があるのかな』って言ったら、年齢的に移植を受けられない患者さんから『お前はそんなに若いのに、確率だの何だのの問題じゃないだろう』とこっぴどく言われて目が覚めたんです。その人は治療を受けることも出来ない。自分も辛かったはずなのに、理性を失っている僕のことを真剣に考えてくれていたんです。
僕は、人は死を目前にすると自分勝手になって他人を思いやるなんてできないと思ってました。ところが、亡くなっていく人たちの言葉の重さは厳かですらあった。人の最期に居合わせたことで人間の力を思い知ることができたんです。
俵 そう認識できたことは人生の大きな財産ですね。
大橋 ですから医者になっても人の“思う力”がどれほど大事であるか理解できる医者でありたいと思います。この部分は自分の中で絶対に折れない部分であると思います。
俵 最近はやりの言葉ではあるけれども、あなたは「患者から学べる」医者になれる気がします。医者の中には患者から何も学べない人も多い。患者が全て素晴らしいものかどうかは私にも分かりません。けれども、素晴らしいときはあるはずだし、あなたは自ら病んだことでそういうものを感じ取れる人になっていると思います。期待しています。頑張って下さい。
対談を終えて-俵さんの感想-
久しぶりで「若さ」をうらやましいと思った。大橋さんは若いから、人生の路線変更が出来るのだ。私が今から医師の学校へ行き直すことは困難だ。実現してネ、大橋さん。応援していますよ。
NPO法人血液患者コミュニティ ももの木
FAX:03-3484-5804
ホームページ
私たちの会は、何か決まった主旨のもとにみんなが集まり、活動していくタイプの患者会(例えば勉強会であったり、医療相談であったり……)の形はあえて取らずに、まず退院されている患者さんたちが一緒に気兼ねなく集まれるような場を設けることを基本としました。03年4月から特定非営利活動法人となり、院内ボランティア活動や、小中学校、看護学校での講演会、ホームページ等での情報提供を行っています。
1・2の3で温泉に入る会
〒371-0101
群馬県勢多郡富士見村大字赤城山1789-64 俵萠子美術館内
電話:027-288-7000
Fax:027-288-8700
※俵萠子美術館には「1・2の3で温泉に入る会」の役員は常駐しておりません。伝言などを残していただければ、追ってこちらからご連絡させていただきます。
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