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NPO法人生と死を考える会 副理事長/杉本脩子 悲嘆の先に見えてくるもの
つらいときには泣きたいだけ泣けばいい

杉本 何回か通ううちに、大切な人を亡くした後には心身ともにバランスを崩すのが普通で、自分をとり戻すのに1年や2年ぐらいかかるのは当たり前のことだと分かりました。簡単にスイッチを切り替えることはできないし、十分に時間をかけて悲しみ、嘆いても良いんだと思えました。
俵 そこではあなたの心を楽にしてくれた何かに出合った?
杉本 やはり、泣きたいだけ泣いていいんだ、それが普通なんだって思えたことでしょうか。私の話にただ何も言わずに『そうだよねえ』ってそのまま受けとめてもらえた。世間では『そんなに悲しんでないで』とか『そんなに泣いていると御主人もかわいそうよ』などと言われて、逆につらく感じたりしていましたから。
俵 当人は励ましているつもりなんでしょうけど、それがかえって苦しかったりするんですね。
杉本 それで私は泣きに泣いて、涙を流して流して……。そうすると本当にありがたいもので、その先に生きていく力が沸いてくる。
俵 泣き疲れると後に穏やかさがでてくるのね。
杉本 当時は、会の発起人の1人である作家の重兼芳子さんにもずいぶん助けて頂きました。重兼さんはお子さんを亡くされているんですが、私が苦しんでいた夏に河口湖で、流れ星を見ながら明け方まで話をしました。『お互いにありのままでいいんだ、ありのままを受け入れていこうよ、そうするとそれぞれの次のページが見えてくる、それだけゆっくり時間をかけようよ』って。
今の時代は何もかもスピーディーで強くて元気な人たちばかりの社会に思えて、つらいときにはそういう強い人たちと歩調を合わせることができなくなるんです。一緒に同じペースで歩いてくれる仲間がいたら、背負っている荷物は軽くなるような気がしました。
悲しみを抱えながらも笑いを取り戻すことが大事

く、日々培っていくものだと思います」
俵「私にとって死にはいろいろなイメー
ジがあってね、楽しくなるのよね」
俵 今は苦しんでいる方を支えてあげる側にいらっしゃるわけですが、そのときの経験はずいぶん役にたっているでしょう。
杉本 そうですね。大切な人を失くしたあとは気持ちの面だけでなく、身体にも精神にも生活にもいろいろな影響があるんですね。それらは受けとめるしかない、ということを身をもって知りましたから。でも1人で受けるにはあまりにつらすぎる。同じような苦しい道のりを歩む仲間や、少し前にその道のりを通って来た人がそばにいると感じられることは、独りぼっちとはとても違うと思います。多くの方は「どう��ればいいんでしょう」っておっしゃいますが、“すぐに立ち直らなくっていい、無理に乗り越えなくってもいい”と思っているんです。
悲しみのさなかには、トンネルの中に閉じ込められ出口は永遠に見つからないように感じますが、そんなことはありません。悲しみは消えることはありませんが、悲しみを抱えながらも笑いを取り戻すことはできるのですね。
俵 遺族のための分かち合いの会はどのくらいの頻度で開いているんですか?
杉本 月に3回です。他に月に1回は大切な方を自死で失くされた方のための会を開いています。
俵 分かち合いの会に行ったからといって、無理に説明したり質問されたりすることはないんですね。
杉本 もちろん話したくないことを話す必要はありません。聞いているだけでもいいんです。予約も必要ありませんから、その日の気分でおいでになって下さい。
俵 お話を聞いてわかりました。結局、大切な人を亡くすなどして悲しいときには、思う存分泣いていいんですね。それが自然なんですから。そういえば私も父が亡くなり、泣いて泣いて泣き疲れて『お父さんは私の心の中に生きているんだ』と思えた瞬間、それまでの悲しみを通り抜けた気がします。そして次のページが始まったんだと思います。あなた方の会の活動には素晴らしい意義があると思います。頑張って下さい。
対談を終えて-俵さんの感想-
乳がんの治療が一通り終わった(7カ月かかった)とき、いちばん読みたかった、いちばん聞きたかったのは“死”の話だった。しかし、いくら読んでも“死”はわからない。たった1つ決めたことは、死から目を背けない、ということだけだった。今度、杉本さんの会に出席してみたい。
NPO法人生と死を考える会
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ホームページ
私たちの会は、身近な人を失った悲しみを分かち合い、支え、そして誰にでも訪れる死を考え、行動する市民の集まりとして誕生しました。死別体験者や自死遺族の分かち合いの会や、さまざまな角度から生と死について学ぶための講演会や講座、学習会などを行っています。会の趣旨に賛同なさる方はどなたでも入会できます。
入会金:1,000円、年会費:4,000円
1・2の3で温泉に入る会
〒371-0101
群馬県勢多郡富士見村大字赤城山1789-64 俵萠子美術館内
電話:027-288-7000
Fax:027-288-8700
※俵萠子美術館には「1・2の3で温泉に入る会」の役員は常駐しておりません。伝言などを残していただければ、追ってこちらからご連絡させていただきます。
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