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日本骨髄腫患者の会 代表/堀之内みどり 最新の情報と会員の絆を武器に難病に立ち向かう
充実した顧問医師団

俵 メーリングリストの書き込みというのは1日にどのくらいあるんですか?
堀之内 平均すると7、8件ぐらいです。
俵 あなたはそれに毎日目を通すんですか?
堀之内 はい、でもあまり体験的な書き込みはしません。事務局からのお知らせが多いです。
俵 自分の状況を書いて治療法をどうしたらよいかとか、どの病院に行くとよいかとかそういうことをやりとりする?
堀之内 そうですね。入会してすぐの方はそういった質問をされる方が多いです。近くにお住まいの方や、発病したときの経過が似ている方たちから「うちの場合は――」と発言があります。そうやって情報交換をしているうちに仲間がいるのだと、気持ちが落ちついて治療にたち向かう心の準備ができていくのだと思います。そしてまた、新しく入られた方たちをあたたかい気持ちで迎え入れて、後から続く者へ手をさしのべる。その繰り返しではないでしょうか。
俵 そういえば、セカンドオピニオンのためのドクターのグループをお作りになっているでしょう? そういう方たちも参加されているのですか?
堀之内 顧問医師は今60人ほど登録して頂いていますが、その先生たちはメーリングリストに登録はしていません。顧問でお1人、24時間体制でサーバーの管理をしてくださっている先生がいらっしゃいます。セカンドオピニオンが欲しい場合は事務局に意思表示をしてくだされば、お住まいに近い先生をご紹介しています。
俵 セカンドオピニオンを希望する方はどのくらいいらっしゃいますか?
堀之内 件数としては月に1、2件あるぐらいです。ホームページに先生の名前を載せていますから、セカンドオピニオンとしてでなくても外来に直接訪ねることもできます。告知されてパニックに陥っている患者側からすれば、どの先生の所にいけばよいか分かってるのは心強いと思います。
俵 そうですね。それにしてもよくそれだけ多くの医師が顧問になってくれましたね。1人ひとりにお願いするのは大変だったでしょう?
堀之内 日本での研究の中心である日本骨髄研究会の幹事の先生を紹介してくださる方がいらして、主人が何度かお会いして懇意にしていただきました。それでその先生にお声をかけていただき現在の顧問医師団が集まりました。一から自分の足でお願いしてもこれだけの医師団は作れなかったと思います。
俵 なるほど、そういうことだったんですね。
患者会としては他に類を見ない*“堀之内朗賞”という賞を設けて研究助成金を出していらっしゃるのも医師側からすれば大きな魅力ですよね。その賞のお金はどうやって捻出するんですか?
堀之内 皆さんの寄付からです。
金額は決まっていなくて、その年に集まったお金から会の活動費を除いた金額になります。ここ4年間は毎年300万円お出ししたのですけど、年によっては200万円になるかも知れません。無理をしないで続けていきたいと思っています。
俵 賞の発案はあなたがなさったんですか?
堀之内 本部にはいろいろな賞があって、世界中の優秀な先生たちに、毎年研究費を助成しています。主人が亡くなった年に本部から提案をうけて今度は日本のドクターだけを対象とした賞を作ろうということになりました。表彰式は米国のASH(アメリカ血液学会)の期間中に行われます。
俵 そういう制度は医師にとっても励みになりますね。
*堀之内朗賞=堀之内朗氏を偲び、2001年に設置された研究助成金。多発性骨髄腫の完全治癒の早期実現を目指して心血を注がれている日本の医師、研究者を資金面からバックアップすることが目的
治療薬の早期承認を求める

最終回と聞いた堀之内さんから贈られた
チューリップの花束とともに
俵 今行政に対して“新しい抗がん剤をもっと早く認定してほしい”という運動をされていますね。
堀之内 今まで4回陳情をしています。
俵 何を陳情したんですか?
堀之内 治療薬である「サリドマイドの承認」「サリドマイド+ベルケイドの早期承認」です。昨年は「治療薬の承認環境のさらなる改革促進の他に特定療養費制度や保険適用対象薬の拡充」なども要望しました。
俵 サリドマイドやベルケイドは欧米では承認されているんですか?
堀之内 承認されています。現状では、薬耐性ができてしまって標準治療が使えなくなった患者には他に手立てがないんです。ですから1日でも早く新薬を使いたい、治験中の段階ではこういう患者会の声が早期承認を後押しすると思うのでこれからも要望を出していきたいと思っています。
俵 厚労省はこうした患者の生の声を真摯に受け止めてほしいですね。
それと、会報を見せて頂きましたが、総会には先生方もたくさん来られていますね。
堀之内 はい。1年に1回、丸1日かけて大阪と東京で交互に開催しています。昨年は、朝10時から「骨髄腫の基礎について」、骨髄腫は骨が悪くなるのでその「骨のケアについて」、「新しい治療について」、「セカンドオピニオンの受け方について」の講演をしました。テーマは基本をふまえながらも毎年いろいろ工夫しています。
午後は分科会で50人ぐらいの単位で、初診間もない方の部屋、看護者だけの部屋、サリドマイドの部屋とテーマ別に分かれて勉強会をしました。また、個別相談のブースをつくり、患者さんが直接先生に相談できるようにしました。これは事前に申込みが必要です。
俵 総会には会員しか入れませんか?
堀之内 一般の方でも結構です。新聞に告知を載せますので会員以外の方も毎年たくさん来られます。
俵 こうして伺っているとおたくの会は情報や対応がとても充実していて、同じ病気で苦しんでいる方はぜひ入会されるといいんじゃないかなと思いますね。日本の患者会の中でも資料の豊富さでは一番じゃないですか。
堀之内 全て読んでいるわけではないですけれど、自分でもすごいなあと思います。会の中に医療情報部と翻訳チームというのがあって、会員が訳した資料を顧問のドクター数名が監修してくださいます。ちゃんとコメントもつけてもらえるのでとても参考になります。ただアメリカの資料がいくらあっても、ご自分の主治医とうまくコミュニケーションがとれなければ意味がありません。
俵 大事な点ですね。日本でセカンドオピニオンというものが充分に浸透しているかと言えば、決してそうとは言えません。その過渡期の中で患者本人が学び、医者任せの治療から選ぶ治療へと移行することが求められる時代になりました。うちの患者会でもぜひセカンドオピニオンに対応してくださる医師を紹介できるようになりたいと思っています。
今日は新しい患者会のあり方についてとても参考になりました。ありがとうございました。
対談を終えて-俵さんの感想-
堀之内さんの会には、会費がないことを知って、うらやましく思った。寄付だけで運営されている。がんを病むと、お金がかかる。がんの薬は高い。医療費がかさむ。私の理想は、出せる人が出せる範囲で金を出す。出せない人は出さなくて済むという患者会だ。日本骨髄腫患者の会をお手本に、がんばっていこうと思う。セカンドオピニオンの顧問医師団を持つことも将来の私の夢だ。
インタビューシリーズを終わるにあたって、さまざまなことを教えてくださった患者会の皆さまに心から感謝したい。同時に、このご縁を活かして、日本の医療をよりよいものにするため、連帯の場を育てていきたいと思う。
長い間のご愛読を、ありがとうございました。
国際骨髄腫財団日本支部 日本骨髄腫患者の会
〒184-0011
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Fax:042-381-0279
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骨髄腫の患者さん同士が病気に関する情報交換をしたり、お互いの悩みを相談したりできる場を提供し、世界の骨髄腫に関する情報をいち早くお届けしています。メーリングリストを通じての情報の共有や、骨髄腫に関する情報の翻訳・開示、ガイドブックの作成、年1回セミナー開催、募金活動などを行っています。
1・2の3で温泉に入る会
〒371-0101
群馬県勢多郡富士見村大字赤城山1789-64 俵萠子美術館内
電話:027-288-7000
Fax:027-288-8700
※俵萠子美術館には「1・2の3で温泉に入る会」の役員は常駐しておりません。伝言などを残していただければ、追ってこちらからご連絡させていただきます。
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