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第3回 抗がん薬の副作用を中医学で緩和する 口内炎・脱毛編
水分をスムーズに排出するために
横方向へ水分をすべて流し終えたら、最後に、胃の経絡に乗せてスムーズに排出するために、顎関節から喉を通って甲状腺に流れる胃の経絡を、上から下へ、流れに沿って優しくマッサージしてあげましょう。顔全体から押し流した水分を集めて排出していく感じです。
方法は、人差し指を1本、横にした状態で、指の側面を耳の下にあて、首筋を上から下へ優しくなぞるようにマッサージします。右の人差し指で左側を、左の人差し指で右側を、ゆっくり何度も繰り返します。このマッサージは喉のむくみをはじめ、食道、気管支のむくみも軽減するので、せき込んだり、ものがつっかえて飲み込みづらいときにも効果的です(図3)(動画2)。

頭皮マッサージで脱毛を予防&緩和
最後に、頭皮のマッサージも行いましょう。実は、頭部は日常的に、むくみやすい場所。抗がん薬の影響を受けたら、さらにむくみは増幅してしまいます。ぜひ抗がん薬治療を開始する前からマッサージを始めて、むくみにくい状態を作り、脱毛の予防、緩和を心がけてください。ちなみに、このマッサージは頭痛の予防と緩和にも繋がります。
まず、5本の指をピアノを弾くような形に固定します。すべての指の腹を使って、額を起点に、毛流れに沿って、髪の毛をかき分ける要領で前から後ろへマッサージします。起点を額のてっぺんから始めて少しずつ左右にずらし、耳の裏まで。すべて、後頭部へ向かって水分を押し流すイメージです(図4)。

顔マッサージと同じく、頭皮の下にあるむくみを意識して、力は入れずに、後ろへ向かって何度も押し流します。少しずつ柔らかくなってきたら、むくみが溶けて水分になってきた合図。そこからさらに続けて水分を後頭部へ流し出しましょう。後頭部には膀胱(ぼうこう)の経絡が通っているので、そこから水分を排出させることができます。
ポイントは指の腹を使って、とにかく後頭部へ押し流すこと。シャンプーする際のマッサージは、その場所のむくみを溶かして水分にするだけ。そこから後頭部へ流し出してはじめて、むくみは解消するのです。
抗がん薬治療が決まったら、顔マッサージと頭皮マッサージを、ぜひ治療開始前から始めて、毎日、続けてみてください。きっと抗がん薬治療のつらい副作用をかなり軽減してくれると思います。
次回は抗がん薬の副作用対策の後編。首から下の症状、とくに足が弱って歩けなくなったり、手足がしびれるなどの症状を緩和する経絡アプローチについてお話します。(次号へ続く)
*本記事では「抗がん薬は胃にダメージを与える」ところからスタートしていますが、抗がん薬は飲み薬だけでなく点滴による投与もあります。点滴の場合、直接血液に作用して「血の機能低下」を起こし、気血不足を発生させるので、結局「胃の機能低下」と類似の作用を生み出し、がんの抑制につながることが考えられます。よって、副作用も同様のものが多くなります。
著書紹介

「胃のむくみ」をとると健康になる
今中健二著 サンマーク出版 1,400円(本体)
「水は飲むほど体にいい」に警鐘を鳴らす1冊。過剰な水分摂取が胃をむくませ、そのむくみが体中に伝わって不調が現われるのだという。その症状は、頭痛、腰痛、高血圧、糖尿病、生理痛、肥満、貧血、不妊症、肺炎、がん、緑内障など多岐に渡る。中国伝統医学のプロフェッショナルが教える究極の健康法

医療従事者のための中医学入門
今中健二著 メディカ出版 3,000円(本体)
整体観、陰陽五行学説、弁証理論など、複雑に思える中医学の概念を分かりやすく明快に解説。医療従事者はもちろん、家族の健康を気遣うお母さんたちにも知ってほしい中医学の知識を伝える。舌や顔色でわかる体質や対処法、それに合わせた食事や温度調整など、実際のケアに役立つ知識をまとめた1冊