第13回 大腸がん対策は、水分を上にあげること

話・監修●今中健二 中医師/神戸大学大学院非常勤講師
取材・文●菊池亜希子
発行:2022年1月
更新:2022年1月


足りないのは、水分を上にあげる力

むくみは、水分の過剰摂取も1つの要因ではありますが、実はもっと大きいのが、体内の水分を上にあげる力が弱まっていることです。水分を上にあげるのは脾臓(ひぞう)と腎臓。つまり、それらが弱っていると、下半身にむくみを作り出しやすいと言えるでしょう。

さらにもう1つ、食べ物に気をつけ過ぎて、血液をサラサラにするものばかりを摂り過ぎていることが原因になることもあります。

ご飯やパンなどの糖質や肉類、添加物を避け、生野菜だけを摂り続けるといった食生活を続けていると、血液がサラサラになり過ぎて、必要な粘着力さえなくなります。すると、体内の水分は重力に任せて下に落ち、それらはむくみとなっていくのです。

糖尿病などで血液がドロドロの人には良いことも、健康で既に血液がサラサラの人にとっては、逆にサラサラにし過ぎてむくみを作り出してしまうこともあるわけです。

万人に良い健康法はありません。人それぞれ、自分の体質、もっと言うと、そのときどきの自分の体質に合った方法を選び取っていく大切さを心に留めておいてほしいと思います。

ウォーキングでふくらはぎを刺激しよう

大腸がんの薬物療法は、主に抗がん薬による化学療法です。ところが、のがんが見つかってすぐのときは、大腸が水浸しの状態なので、抗がん薬が効きづらい。まずは、水分をある程度、取り除いてから抗がん薬治療をすると、効果が出始めます。

水分を取り除くというのは、水分を上にあげること。水分を上にあげることのできる体になることが、自分でできる唯一の治療であり、対策でもあるのです。

では、そのためにはどうすればよいのでしょうか。

いちばん良いのはウォーキングです。ふくらはぎは「第2の心臓」と言われるように、心臓の経絡と膀胱の経絡が通っていて、水分を上にあげるポンプの役割を果たします。ですから、ふくらはぎの筋肉を刺激することで、下半身の水分を上にあげることができるのです。

急がなくていいので、胸を張って足を踏みしめながら歩いてください。歩きながら、腰から背中、後頭部にかけてジワッと汗が出てくる感じになると、水分が上に昇っている証です。

体力がある人は、坂道を登る、階段を上る、山を登るのもいいですね。太腿前方の筋肉を使うと、腹部近辺の水分を上にあげてくれる効果が期待できるのでおすすめです。

硫黄泉、ノニ、何より大切なのが日光浴

大腸がんでも、そうでなくても、水分を下に溜めてしまう体質(下半身がむくみやすい体質)である以上、いつのがんになってもおかしくない状態です。まずは、自力で水分を上にあげられる体作りを目指しましょう。

対策は唯一、水を上に押し上げること。ウォーキングが難しい方は、腰の下に枕か座布団を敷いて、足を壁に預けるように上にあげて寝転がってみるだけでも構いません。いわゆる、足のむくみ取りの体勢ですね。腰を傷めないために腰枕をすることを忘れずに(図2)。

硫黄泉も効果があります。また、ノニという果物は腎臓を強くしてくれるので、水分をあげることにも繋がるでしょう。よく酵素ドリンクなどに入っていますね。

そして、何より大切なのが、太陽の光に当たること。太陽光は表面の体温を上げるだけでなく、体の深部にまで入って内臓を温め、内臓近辺に溜まった水分を上に押しあげてくれます。つまり、太陽光を浴びながらのウォーキングが最適というわけです。

ウォーキングが難しい場合、窓際の間接光でも、レースのカーテン越しでもいいのです。とにかく太陽光を浴びましょう。

また、何らかの形で太陽のエネルギーを体の中に入れると、同じ効果が期待できます。例えば、入院していて病室に日が当たらないならば、太陽光を浴びて育った野菜を食べるのがいいですね。

実は、がんになるずいぶん前から、水分が下に溜まってきた予兆は体調に現れます。腰がすごく冷えやすくなったとか、足がだるくて頻繁にこむら返りが起きるとか。それらを放置するのではなく、その時点で水分を上にあげる手段を講じるようにすれば病を回避できることはとても多い。

まずは、今、体に何か異変がなくとも、毎日、ここからここまで歩くと決めて続けてみませんか? それだけで体は大きく進化するものです。(次号へ続く)

 

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