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第16回 臓腑の問題ではない?! 腎がんと膀胱がん
腎臓の機能が低下するということ
水分の上げ下げこそが腎臓の働き。そしてこの力、とくに水を上へあげる力が弱まることが、腎臓、ひいては腎臓の経絡の機能低下なのです。
腎臓の働きが弱まると、体ではさまざまなことが起こります。
水分を上へあげられなくなると、まず顕著に表れるのが顔や髪の毛。顔の水分量が減るので、疲労顔になり、小ジワが増え、髪の毛はパサパサに。さらにすべてが下に垂れてきます。
これらはすべて老化現象の症状。水をあげる力が弱くなるという腎臓の機能低下は、年齢と比例して起こってくるものなのです。
症状はさまざまで、1つとは限りません。先述の症状に加え、口が渇くドライマウス、ドライアイ、記憶力の低下、乾燥した咳が止まらないなど、実にさまざまな症状が起き、その大半は「原因不明」とされたり、「更年期障害」などと言われることも多いようです。
大腸がん、婦人科がんなど、下腹部のがんの原因に?!
水分を上へあげられなくなっていくという腎臓の機能低下が起きると、体内ではどのようなことが起こるのでしょうか。
それらの水分が、体の下部、つまり下腹部や足に溜まります。すると、その部分が冷え固まり、むくみとなり、否応なく血行不良を起こします。
その先に起こる可能性が出てくるのが、大腸がん、婦人科がん、前立腺がん、といった陰のがん。水分が冷え固まってむくんだものが長時間停滞することで、組織を破壊し、潰瘍化していくと、ときに陰のがんへと移行するのです。
つまり、腎臓の機能低下によって体が水分の上げ下げを十分にできなくなるということは、部位を問わず、陰のがんすべてを引き起こしかねない状況になります。
ちなみに、腎臓・膀胱の経絡が体内の水分を上げ下げしているわけですが、その力をチャージしているのが腎臓、膀胱という臓腑。そういう意味で、臓腑とその経絡は繋がっていると考えていいと思います。
腎がん・膀胱がんの予防策と、陰のがんの予防策
ここまでをまとめると、腎がん・膀胱がんは、腎臓・膀胱の機能低下ではなく、むしろ、食べ過ぎや栄養過多、または化学物質の継続的摂取を原因とする胃の経絡疾患に関係することが多い。
一方で、水分の上げ下げという腎臓・膀胱の機能が低下してくると、水分が体の下部で冷え固まり、むくみとなって、将来的に大腸がんや婦人科がん、前立腺がんといった陰のがんの引き金になる可能性が出てきます。
つまり、腎がん・膀胱がんの予防策は、食べ過ぎないこと。喫煙しないこと。
そして、腎臓・膀胱の機能低下は年齢とともにある程度、避けられないので、陰のがんすべてを予防するためにも、水分を上へあげる手助けを、日々心がけることが重要と考えます。
水分を上へあげる方法とは
それでは、具体的に、水分を上へあげる手助けの方法を紹介しましょう。
ふくらはぎは「第2の心臓」。ふくらはぎ���筋肉を使うことで、水を上へあげるポンプを動かすことになります。もっとも手っ取り早い方法がウォーキング。太陽の光を浴びながらのウォーキングを習慣にすることが、何よりの対策です。そこに、無理のない程度でスクワットを加えるのもよいでしょう。
さらに積極的な対策をとれるなら、ヨガや太極拳がよいかもしれません。とくに、足を上にあげるポーズを取り入れていくと効果的だと思います(図3)。

運動が難しい場合は、横になって寝転がっているだけでも対策になります。そもそも人間が二足歩行しているから、何もかも下に落ちてしまうのです。敵は重力。横になって寝返りを打つだけでも、体内の水分はシャッフルされ、上へあがる手助けになるでしょう。寝転んで腰枕をし、足をあげて壁に預ける姿勢もよいですね(図3)。
ただし、ヨガにせよ、寝転がるにせよ、水分を動かすには、体を温めてむくみ(脂肪)を溶かして水分に変えてから行うことが重要。つまり、お風呂上がりがおすすめです。
著書紹介

「胃のむくみ」をとると健康になる
今中健二著 サンマーク出版 1,400円(本体)
「水は飲むほど体にいい」に警鐘を鳴らす1冊。過剰な水分摂取が胃をむくませ、そのむくみが体中に伝わって不調が現われるのだという。その症状は、頭痛、腰痛、高血圧、糖尿病、生理痛、肥満、貧血、不妊症、肺炎、がん、緑内障など多岐に渡る。中国伝統医学のプロフェッショナルが教える究極の健康法

医療従事者のための中医学入門
今中健二著 メディカ出版 3,000円(本体)
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