「糖質」の摂取が、がんに一番悪いと思います 福田一典 × 鎌田 實 (後編)

撮影●がんサポート編集部
構成/江口 敏
発行:2016年5月
更新:2018年8月


ケトン食のがん患者さんに 抗がん薬が劇的に効いた!

鎌田 早期がんの患者さんや、進行がんの手術をして病状がおさまっている患者さんにも、ケトン食は有効ですか。

福田 やってみる価値はあります。最近はケトン食に対する理解もかなり浸透してきました。昔からあった断食、絶食という療法も、結局はケトン体を上げるのが狙いで、要は脂肪を燃やしてケトン体を増やすことが大事なんです。

鎌田 福田さんのクリニックは国立がん研究センターのすぐ側にあり、多臓器にがんが転移して、がんセンターではこれ以上、手の施しようがないと言われたような患者さんが来られるようですが、そういう患者さんにもケトン食は有効ですか。

福田 結構、成績はいいですよ。3年ほど前、ある大学病院で見放されたがん患者さんが、私の『ブドウ糖を絶てばがん細胞は死滅する!』(彩図社)を読んで、ケトン食を摂られるようになり、その後、抗がん薬が劇的に効くようになって、現在もピンピンしておられる例があります。

鎌田 その人は何がんですか。

福田 頭頸部がんです。その他にもいろんなケースがありますが、膵がんなど難治性のがん患者さんが、もう他に治療法がないといった場合に、最近では、ケトン食と他の既存の薬を組み合わせる「ケトン食+α」というような治療法も注目され、アメリカでは臨床試験が行われています。

鎌田 いずれにしても、ケトン食は早期がん、経過のいい進行がんだけでなく、末期がんにも効果があるわけですね。見つからないところに転移したがん細胞も、ケトン食によって〝兵糧攻め〟できるわけだ。

福田 しかも同時に、ケトン体は心臓など循環器系にも効果はありますし、脳にもいい。プチダイエットで断食タイムなどを設けているのは、要するに糖質を抑えることによって、ケトン体を上げているのです。糖質過多の生活では、がん細胞にどんどん栄養を補給しているようなものですし、心臓系や脳にも良くないんです。

ケトン体を出せる体質は 甘いものを欲しがらない

福田さんの話をきいて「普段から糖分や炭水化物の摂り過ぎには気をつけていますが、ケトン食をやってみようかな(笑)」と話す鎌田さん

鎌田 そうすると、私が「疲れた」と言って、大福やケーキを食べるのは良くないことですね(笑)。

福田 がん患者さんなら、がん細胞にエサをやっているようなものですよ。

鎌田 ケトン食はがんの予防には効果があるんですか。

福田 私自身は効くと思っています。だから、私自���も日常的にケトン食を実践しているわけです。ケトン食でがんも認知症も予防して、元気に長生きしたいと思っているんです(笑)。糖質摂取を抑えれば、がんにも認知症にも糖尿病にもならないし、体脂肪も落とせます。

鎌田 疲れたときに、大福を食べたいなんて思わない?

福田 思いませんね(笑)。ケトン食を実践し、ケトン体が上がっていると、脳の働きが良くなり、論文を読む速さが全然違いますよ。

鎌田 そうか。「疲れた」と言って、テレビの前でアイスクリームを食べているようじゃダメなんだ(笑)。

福田 常にケトン体を出せる体質になると、甘いものを欲しがらなくなりますね。いずれにしても、長い間、がんを研究してきて、糖質の摂取ががんに一番悪いと思います。これはがん医療の領域ではすでに定説になっています。

鎌田 ケトン体を上げるために、「食べてもよい食品」と「食べるべきではない食品」は別表に示しておきますが、おさらいしておくと、納豆とか豆腐など、大豆類はお勧めですね。

福田 豆類で一番糖質が少ないのが大豆です。それから魚です。魚は糖質がほとんどゼロです。

鎌田 肉は脂身を除いて、時々。そして、中鎖脂肪酸のオイルを毎日、料理や飲料に少しずつ加えて摂る。私は父親が糖尿病体質でしたから、普段から糖分や炭水化物の摂り過ぎに気をつけていますが、ケトン食をやってみようかな(笑)。2回にわたってケトン食に関する興味深いお話、ありがとうございました。

表 糖質制限で食べてもよい食品と食べるべきでない食品

糖質制限を推奨している人の多くは、肉や乳製品を「いくら食べてもよい食品」に分類しているが、がん予防の観点から、動物性脂肪の多い赤身の肉や加工肉や乳製品は適度の摂取(少しならば問題ない)にとどめるのが望ましいと判断している(福田一典著『健康になりたければ糖質をやめなさい!』より改変)
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