鎌田實の「がんばらない&あきらめない」対談 『泣き笑い健康法』著者・吉野槇一さん VS 「がんばらない」の医師 鎌田實

撮影:板橋雄一
発行:2010年3月
更新:2013年9月

関連遺伝子を持っていてもストレス次第で発病しない

鎌田 私は内科医ですから、ストレスが絡む病気として、潰瘍性大腸炎など胃腸病を想起しますが、糖尿病などにもストレスが絡んでいると思われるケースがありますね。40代で糖尿病を発病した人が、「遺伝だからしようがないか」と言うケースでも、なぜ40代で発病したかを調べていくと、この2~3年、ものすごいストレスを受けていた、ということがあるわけです。もちろん、遺伝子があるから発病するわけですが、もしストレスがなければ発病しなかったかもしれない。糖尿病の遺伝子を持っていても、生涯発病しないで、90歳以上まで生きる人もあり得ますよね。

吉野 あり得ると思います。糖尿病の関連遺伝子を持っていても、環境因子を無、または軽減することによっては発病しないケースもあります。環境因子の主なものに精神的ストレスがあります。私の専門である関節リウマチでも、その関連遺伝子を持っていても、発病しない人がいます。関連遺伝子はビンゴの穴の1つで、そこが埋まっていたとしても、残りの穴が埋まっていなければ、ビンゴにはならないわけです。精神的ストレスはビンゴの穴の1つですね。

鎌田 高血圧も精神的ストレスと関係していますね。

吉野 はい。精神的ストレスが加わると、血圧は上がりますからね。

がんになっても落ち込まず楽しいことに熱中すべき

吉野槇一さんと鎌田實さん

鎌田 『泣き笑い健康法』にも少し出てきますが、医学の分野で笑いの効果を広く認めさせたノーマン・カズンズというアメリカのジャーナリストがいます。私は、彼の養女になった笹森さんという広島の被爆者の女性と知り合いで、チェルノブイリなどにも一緒に行っていますが、彼女はこれまでに3回ほどがんになっています。お父さんから「笑え」と言われたからといって、いつも笑っています。いつも笑っていたから、がんを克服できたと信じている。私は『泣き笑い健康法』を読んで、それは間違いではなかったと感じました。

吉野 精神的ストレスががんを悪化させ、笑いがストレスを取ることはたしかです。その方ががんであっても、いつも笑うことができたということは、その方の心にゆとりがあったということだと思います。心にゆとりがなければ笑えません。このようなときにはビデオとか映画を観たりしてまず泣くことです。そして、心にゆとりが出てきたら笑って��さい。無理して笑うとかえってストレスになります。

鎌田 たしかに、彼女には生活のゆとり、心のゆとりがありますね。

吉野 心にゆとりのある人は、楽しいことにも熱中できるのです。

鎌田 がんになっても落ち込まないで、旅行に行ったり、映画を観たり、音楽を聴いたり、本を読んだり、楽しいことに熱中すれば、がんを克服する道が開ける。

吉野 そのほうがよほどいいと思います。閉じこもったらダメです。

鎌田 大いに笑い、泣く人は治る率が高く、内に閉じこもってしまう人は治りにくい。

吉野 関節リウマチ患者さんでも、くよくよしている人より、「私、リウマチよ」とあっけらかんとしている人のほうが、経過が良いですね。病気と闘う強い気持ちを持ちながら、ノー天気にしている人がいいですね。

鎌田 しなやかに柔軟に病気と闘うことが大事だということですね。本日は、がん患者さんにも大変ためになるお話を、ありがとうございました。

(構成/江口敏)

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