夢に向い、夢をかなえればがんを治す力が湧いてきます 「メッセンジャー」編集発行人・杉浦貴之/主婦・関水京子 × 鎌田 實

撮影●板橋雄一
構成●江口 敏
発行:2013年6月
更新:2018年8月

たまたまラジオで知ったホノルルマラソンツアー

鎌田 関水さん自身、万が一のことがあっても、きちんと自分の背中を息子に見せようと覚悟されたわけですね。ホノルルマラソンを走る話も、息子さんが持ちかけたんですね。

関水 ホノルルマラソンは朝日に向かって走る映像をテレビで見て、いつかは走りたいと、息子にも言っていたんです。

鎌田 もともと市民ランナーなんですか。

関水 いえ、全然(笑)。身体を動かすことは好きで、スポーツジムのスタジオで、ヨガやジャズダンスなどはやっていましたが、走ることは全然。でも、映像を見て、いつかはホノルルマラソンを走りたいと言っていたんです(笑)。

鎌田 それで、お母さんががんで打ちひしがれているときに、息子さんは「ホノルルマラソン、行こうよ」って誘ったんだ。杉浦さんの「メッセンジャー」が、がん患者さんのホノルルマラソンツアーを企画していることは、どうして知ったんですか。

関水 杉浦さんも「メッセンジャー」もまったく知らなかったのですが、たまたまNHKの「ラジオビタミン」という番組を聴いていたら、杉浦さんがゲストで出ていらして、ホノルルマラソンツアーのことを知ったんです。その日はちょうど家にいてラジオが聴けたんですが、翌日から抗がん薬の3クール目が始まり、入院しましたから、1日ずれていたら、ダメでした(笑)。

鎌田 村上信夫アナウンサーの番組、役に立っていたんだ。今は文化放送で「日曜はがんばらない」という番組を2人でやっています。奇遇だな。杉浦さんは以前、ホノルルマラソンを走ったんですね。

杉浦 学生時代の22歳のときに走って、とても感動しました。それで、病院に入院中も、がんを治して絶対もう1度、パートナーと一緒に走るんだと、心に決めていたんです。

鎌田 杉浦流イメージ療法ですね。そして、がん治療後、実際にホノルルマラソンを走ったんだよね。最初はパートナーはいなかったんだけど、3年後にはパートナーと一緒に走った。

杉浦 はい。彼女が先にゴールして待っていてくれて、私がゴールしたとき抱き合って喜びました。そして翌日、ハワイの教会で結婚式を挙げました。

ホノルルマラソンを走ってがん克服の力を得ました

「がん患者さんの秘めたパワーを教えられた感じです」と話す鎌田さん(左)。東京ステーションホテル内「アトリウム」にて

鎌田 その合計3回のホノルルマラソンの素晴らしい経験から、「メッセンジャー」でがん患者さんに呼び掛けるようになったんですね。

杉浦 ホノルルマラソンを走ると元気になれるんです。夢に向かい、夢をかなえることによって、本来の力が出てくるんです。私はがんになってから、ホノルルマラソンをまた走るという夢をかなえるまでに6年かかりました。その間、毎年、まだダメだ、まだ無理だと、自分で見送っていたんです。実際、体調も低空飛行で良くなりませんでした。6年目に、今年行けなかったら一生行けないと思って、一念発起して走ったら、自分が思っていた以上の力が出て、今までと違う自分がいると感じました。その気持ちを多くのがん患者さんにも味わってほしいと思ったんです。

鎌田 何年から始めたんですか。

杉浦 2010年からです。

鎌田 じゃあ、関水さんはその第1回のツアーに参加されたわけだ。何人ぐらいで行ったんですか。

杉浦 がん患者さんは20人ほどで、あとは看護師さんとかサポーターの人たちなど、総勢80人の団体でした。

関水 それまでは息子に「ホノルルマラソンに行こうよ」と言われても、具体的なイメージが湧かなかったんですが、杉浦さんのラジオを聴いて、目標がはっきりしましたね。

鎌田 フルマラソンにビビらなかった?

関水 いえ、マラソンは42.195キロですから(笑)。

鎌田 負けました。女は強い。資料を見て、関水さん年齢が書いてなかったから、40代ぐらいの人かと思ってた。

関水 いえいえ、去年還暦を過ぎて、今年61歳です(笑)。

杉浦 ホノルルマラソンのミーティングを東京でやったとき、抗がん薬治療を終えたばかりの関水さんが参加されました。帽子の下は髪の毛がなく、体調も悪そうでしたから、正直、無理じゃないかと思いました(笑)。

関水 そのとき、他のがん患者さんたちの話をうかがったら、ワクワクしてきて、どうしても行かなくちゃと(笑)。

ワクワク、ドキドキが元気になる道を拓く

鎌田 それで、実際に走ってみて、いかがでしたか。

関水 すごく楽しかったですぅ! ダイヤモンドヘッドのところで、ちょうど朝日が昇ってきて……。途中、水を飲んだら、お腹の調子が悪くなって、15キロぐらいからはほとんど歩きでしたね。ゴールまで7時間かかりました。

鎌田 途中でやめようとは思わなかった?

関水 やめるという選択肢はありませんでした。私より大変な状態で参加されている人たちに勇気をもらいましたね。ゴールでは息子とハグをしました(笑)。

杉浦 打ち上げのとき、息子さんが関水さんに、「ボクを産んでくれてありがとう」と言われたのが、とても感動的でしたね。

関水 私は最近、国内マラソンにも出ています。やはりマラソンを走ったあとの達成感というのは、日常生活の中では味わえないものです。読者の皆さんにもお勧めしたいと思います。

杉浦 自分がワクワク・ドキドキすることに素直に耳を傾けることによって、元気になる道が拓けてきます。がんを克服して元気になった人の光をいただき、自分の希望の光を強くしていけば、闘病生活が茨の道であったとしても、やがてがんになる前より楽しい日々がやって来ることを信じてほしい。

鎌田 いやぁ、きょうはがん患者さんの秘めたパワーを教えられた感じです。ありがとうございました。

「メッセンジャー」2005年1月創刊。3カ月に1回発行。1冊300円。定期購読6回分2500円(税 ・ 送料手数料込み)
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