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- 赤星たみこの「がんの授業」
【第三時限目】がんの再発と転移Ⅱ 再発・転移しても、可能性があるかぎり、あきらめない
同じ病院で主治医以外の医師に相談してみる
がんと向き合う上で大事なことは、東洋医学と西洋医学をうまく組み合わせることではないでしょうか。免疫力を向上させてがんの再発を予防するには、東洋医学が優れていると思うし、がんの検査や治療の面では、西洋医学のほうが優れていると思うのです。それだけに、お医者さんとよく相談して両方を組み合わせながら、最善の治療を受けることが大切です。
現代医療の最前線では、鍼灸や漢方薬などをはじめとして、東洋医学に理解を示す先生が増えています。とはいうものの、なかには東洋医学に否定的な先生がいるのも事実です。試してみたい療法があるのに、主治医の先生がどうしても相談に乗ってくれない……そんなときは、他の先生にセカンドオピニオンを求めるのもひとつの方法です。
私の場合、子宮頸がん手術後に、更年期障害に悩み、ホルモン療法を受けることを希望したのですが、当初、主治医はそれに慎重な態度をとりました。「*子宮とホルモンは関わりがあるから、できれば避けたほうがいい」という意見でした。しかし、次に同じ病院の若い先生に相談したら、「あ、いいですよ。今は世界的にホルモン療法をやる傾向になってますからね」と、すぐに薬を出してくれたんです。治療法についての見解は、同じ病院でも先生によってずいぶんちがうんだなあと驚きました。別の治療法や考え方を知りたいとき、別の病院に行く余裕がなければ、わざと曜日をずらして来院し、別の先生に診てもらうことも立派な「セカンドオピニオン」だと思います。
*編集部注=子宮体がんは女性ホルモンと関係がありますが、子宮頸がんはホルモンと関係していません
セカンドオピニオンの必要性
話がやや横道にそれましたが、前回と今回の2回で、がんの再発と転移のメカニズムについて、大体のイメージをつかんでいただけたでしょうか。その実態は今もなお神秘のヴェールに閉ざされた部分が多く、予防法や治療法が完全には解明されていないのが実情です。
でも、だからといって、簡単にあきらめるのはまちがっています。日進月歩の西洋医学の成果を信頼しつつ、東洋医学も含めて新しい治療の可能性を探っていく。そのときに大切なことは、胸襟を開いて主治医の先生と相談し、必要とあれば積極的にセカンドオピニオンを求めていくことではないでしょうか。患者として主体性を持ち、生きる意志を強く持って治療に取り組む、それが何よりも大切なことだと思うのです。
前回ご紹介した私の姉の乳がんのケースでも、セカンドオピニオンの大切さを認識する出来事がありました。姉は乳がんで2回の再発を乗り越えて現在に至っています。
最初の手術では原発の乳がんを取って、右の乳房を全摘。その4年8カ月後に、右の脇の下に小さなしこりが見つかりました。
そのとき、姉は県立病院に通っていたのですが、私は近くにある乳がん専門クリニックに行くよう薦めました。そのクリニックは乳がんに関しては最新の療法を手がけていて、抗がん剤なども県立病院とはちがうものも使っているようでした。
その後、姉は、県立病院の主��医の先生に、別の病院に行ったことを話したそうです。クリニックで扱っているという抗がん剤のことも話したら、その薬は県立病院ではまだ使われていなかった。すると、先生はその場で薬剤師に電話して、「○○病院ではあの抗がん剤を使っているのに、どうしてウチでは使えないんだ」と強く言ってくれたそうです。姉が主治医に他の病院で行われている薬のことを伝えたことがきっかけとなって、県立病院でも新しい薬がすぐに使えるようになったわけです。セカンドオピニオンを求めるのは自分自身にとっても大切なことだし、ほかの患者さんにとっても大切なことだと思います。
主体性を持ってがんと闘っていく
姉は乳がんが再発したときに、乳がん専門クリニックの先生から「病気と無理に闘わずに、がんと共存しながら10年間は元気に生きていける」と言われたそうです。でも、姉はそれでは納得せず、私にこう言ったのです。「10年じゃ短すぎる。私はまだ20年は生きて仕事がしたいの。そのためには何でもする!」と。
少しでも治る可能性があるかぎり、けっしてあきらめない――それが、がんとつきあっていくための基本的な心構えだということを、私はこのとき姉から教えられたような気がします。お医者さんに治療を任せきりにしていては、主体性を持ってがんと闘うことはできません。そのためには、患者さんが最新のがん検診や治療法の知識を深めていくことが必要だと思います。
次回からは具体的ながんの検査や治療方法について、皆さんと一緒に学んでいきましょう。
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