【第五時限目】画像診断 ハイテク装置のCT、MRIも、がん検査の万能選手ではない

構成●吉田燿子
発行:2004年3月
更新:2019年7月

X線カメラが螺旋状に回転するヘリカルCTのハイテクぶり

こういうプラスのイメージを描いて気持ちを少しでもリラックスさせるのはとてもいいことですね。

このほかに、よく使われる画像診断法としては「超音波検査」があります。超音波を人体に照射し、その反響パターンをコンピュータ画像として映し出すこの方法は、安価で無害なのが最大のメリット。ただし、脳や肺、腸など、中に気体のつまった臓器や骨の検査、肥満した人の検査など、“不得意科目”が多いのも事実です。画像も漠然としているので精度はイマイチですが、手軽にできることもあって、“手始めに行う診断法”として重宝されているようです。

さて、ここまでは一般的な画像診断法について勉強してきました。しかし最近は、画像診断の世界でも技術革新が進み、日進月歩のめざましい進化を遂げつつあります。

そのひとつが、CTスキャンのハイテク版ともいえる「ヘリカルCT」です。これは、患者さんの体の周囲でX線カメラが螺旋状に回転し、360度の方角から撮影するというもの。その3D立体画像の精度の高さたるや、ヘリカルCTのハイテクぶりを物語るに十分です。

もちろん、スゴイのは画像だけではありません。通常のCTスキャンやMRIでは、体内を1センチ刻みの輪切りにして断層撮影するため、その狭間にある腫瘍を見落とす危険が常につきまとっています。でも、螺旋状にくまなく体内を撮影するヘリカルCTなら、そんな心配はご無用。ただし、かなり小さな腫瘍も摘発できる反面、情報量が膨大なだけに高度な読影技術が求められるという面もあります。

“名医”をめざせ医学生! 私もがんばります!!

さらに、現代の画像診断法の最高峰ともいえるのがPET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)です。これは、陽電子を出す放射性物質を静脈に注射し、これが体内の電子と結合して出したガンマ線をとらえて、コンピュータで映像化するしくみです。

この方法は、他の画像診断とはまったく異なる診断技術です。他の画像診断は臓器や組織の“形”をとらえるのに対して、“働き”をとらえます。細胞の代謝がさかんな部分が“ホットスポット”として映し出され、腫瘍が悪性か良性かから、がんの進行具合、再発の様子までわかるというのですから、いかに画期的なものかわかるでしょう。

一昨年4月から肺がんや大腸がん、乳がんなど、一部のがんでこのPETが保険診療できるようになりましたが、残念ながらまだ普及が遅れています。原因は、大がかりで高価な装置にあります。ただ、数年前なら数10万円もした検査費用も、いまなら保険診療だと2~3万円、保険なしでは10数万円ぐらいですむようになっています。

それにしても、医療技術の進歩ぶりには目をみはるものがあります。現在、CTスキャンやMRIで発見できるがんは1センチが限度と言われていますが、ヘリカルCTやPETになると、0.5センチ程度の微小ながんを発見することも可能なのだそうです。

こうした診断法が普及すれば、早期発見で命を救われる患者さんの数も飛躍的��増えるでしょう。今は危険をともなう生検や手術によって行われているがんの確定診断も、いずれは画像診断だけで行えるようになるかもしれません。

しかし、いくら機械が発達しても、そこに映った画像をちゃんと読み取る目と技術を検査技師や医師が持ってくれないと宝の持ち腐れになります。今、勉強している医学生たち、がんばってください!

あなたの技術を高めるためなら、私は自分の子宮頸がんのCTスキャン画像をどんどん使ってもらいたいと思っています。婦人科の内診の見学も、事前に言ってくれれば考えます。ホ、ホントです…! 医学のためなら……が、がんばりますッ!!

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