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シリーズ対談 田原節子のもっと聞きたい ゲスト・西尾正道さん 初期治療から緩和ケアまで、がん治療に大活躍する放射線治療のすべて
患者が声をあげれば放射線治療はもっと良くなる

患者が声をあげ、よりよい治療を求めることで、
医療そのものも、システムも変わっていく。
医療を取り巻く社会環境も、
患者の力で変えることができる
田原 私たちには、何かできることはありますか?
西尾 患者さんには、放射線治療を受けて良くなりましたということを、もっとアピールして欲しいですね(笑)。
田原 いつも思うのですが、患者としての体験を重ねて、その果てにやっと、本当に自分にふさわしい医療にたどり着ける。発病したときに出合えたら、その人らしい道を歩き始めることができて、幸せだと思うんです。
西尾 放射線の情報は、これまであまりに出ていなかった。それを市民向けに出していこうということで03年暮れに、「市民のためのがん治療の会」を立ち上げました。僕のところに舌がんの治療に来た患者さんが会長さんです。
切らなくても放射線だけで治るはずの患者さんが、日本では実際に切られている。だったらセカンドオピニオンをしっかりやって、放射線治療をきちんと受けられるようにしたい。幸い協力医という形で、癌研やがんセンターや全国の主な放射線治療の専門医が協力してくれています。
田原 インターネット上だけの会ですか?
西尾 インターネットでもファクスでも受け付けています。セカンドオピニオンの回答書を返すだけでなく、必要ならば患者さんが在住している地域の専門医で設備も整った病院にサードオピニオンとして紹介もいたします。
田原 その人にふさわしい患者環境は、日本の中で探せば必ずあるわけですよね。にもかかわらず、そこからとても遠いところにいる人に、専門家が手をさしのべてくれるシステム、窓口がもっとあったらと思います。
西尾 患者さんに声を出してもらって、放射線治療をきちんと利用してもらおうというのが、この会の最大の目的です。
緩和治療は放射線と抗がん剤を上手に使い分けるのがコツ
田原 今、私は転移が出るたびに放射線のお世話になっていて、放射線で保持される生活、というのをしみじみ思います。でも、「姑息的」治療という日本語はちょっと……。
西尾 非常に言葉が悪いですね(笑)。緩和的という言葉もあります。
田原 緩和にも、「死ぬまでの間を埋める」ようなイメージがあるんですよ。
西尾 患者さんが亡くなるまでの間、苦しまないように、また一番希望され��生活を実現するためのものです。半年の人もいれば、田原さんのように5年という人もいるわけです。
田原 どこで治療から緩和に移ったらいいのかと思います。
西尾 骨転移も、抗がん剤ばかりでもやはり限界がある。放射線と抗がん剤をうまく使い分ける必要があります。
田原 腰椎の1番と2番に転移があって、昨年の5月に50グレイかけました。そこになんだか、違和感がある。これは何が始まったのかなと。
西尾 緩和的な照射では症状を取るのが目的で、がん細胞を根絶させるだけの線量を照射していないので、再発した可能性はありますね。
田原 たとえば60グレイを100パーセントとして40グレイかけたとしたら、残りの20グレイは、後からまたかけられるんですか?
西尾 40グレイしか照射していないので、まだ20グレイ照射できる余地はありますが、線量が少なすぎて照射しても効果はあまり期待できません。
田原 もし、この違和感が再発ならば、またかけることはあるんでしょうか。
西尾 同じところが再発したとすれば、障害を覚悟でかけるか、痛み止めを使うか。
田原 痛み止めの世界に入ってきてしまった(笑)。
西尾 頸部のリンパ節どうですか?気になっているんですが(首に触れる)。
田原 痛たた!
西尾 (首の後ろのほうに触れて)ここにはないですね。
田原 ないです。首のところは、私にとってはアラモ砦で、抗がん剤の効き目の大事な目安なんです。
西尾 そう考えられるということは、まだ余裕があるなぁ(笑)。硬くなっていますから、放射線は効きにくいかもしれませんね。
田原 取ってしまったほうがいいんですか?
西尾 そこがある限り、腫瘍マーカーは下がらないと思いますが、神経や静脈にはさわらない場所ですから、多少大きくなっても悪さはしないでしょう。
田原 見張り番として、置いといていいと(笑)。
西尾 今日、田原さんの姿を見ていると、まだまだ余裕がありそうです。
田原 第4コーナーを回っていますけれども、まだがんばれる?
西尾 はい。骨は、いくら「愛されちゃっても」大丈夫(笑)、放射線がかけられます。
市民のためのがん治療の会
入会申し込み・問い合わせ
〒186-0003
東京都国立市富士見台1-28-1-33-303
代表 會田昭一郎
ファクス:042-572-2564
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