がん情報の上手な活用の仕方 〝情報戦〟の最前線にいる新聞記者として、自らも確かな情報を集めるがん患者として

文:本田麻由美 読売新聞記者
発行:2005年5月
更新:2014年1月

こんなとき、ここにアクセス

では、どうやって欲しい情報を探すのか。個人的な体験からいくつか具体的なホームページなどを紹介しましょう。

治療法を調べたい

私が今、患者になったら、まずアクセスしたいのが、世界のがんに関する最新情報が無料で読める「がん情報サイト」です。今年2月に神戸市臨床研究情報センターが開設したもので、米国立がん研究所(NCI)が推奨する治療法など最新成果をインターネットで公表している「PDQ(The Physiciancs Data Query)」(がん治療情報データベース)を日本語に訳し、毎月更新しています。臨床試験で有効と判断された治療法が、がんの種類ごとに詳しく書かれており、まさに国際的な標準治療の指針と言えるでしょう。医師と治療法を考える材料として、大変役立つと思います。

このサイトでは、抗がん剤や副作用治療薬などのリストもあり、日本で承認されているかどうか明示しているのも特長です。抗がん剤の副作用に関する相談を受けることも多いですが、このリストにのっている薬剤名などをチェックして、治療で使ってもらえないか主治医に相談してみてはどうでしょう。さらに、京都大などのがん治療成績や国内で実施されている臨床試験の一覧もあります。今後、より多くのがん専門病院の治療成績や在宅ケアを行う医療機関の一覧表も盛り込まれる予定だといい、幅広いサイトへの成長も期待できます。

「キャンサーネットジャパン」の「がん情報ライブラリ」は、私も患者になったときに利用しました。乳がんの情報などが充実しており、海外のがん診療ガイドラインの翻訳も読めます。

そのほか、日本医療機能評価機構の「Minds(医療技術評価総合研究医療情報サービス)」では、厚労省と日本の学会が作成している「診療ガイドライン」を公開していますが、まだ一部の疾病のみ。また、国立がん研究センターのホームページでは、「がんに関する情報」は基礎知識として役立ちますが、「治療情報」は一般書程度のものにとどまっていて「PDQ」には及びません。

専門医はどう探す?

「抗がん剤の副作用がすさまじい。専門医はどこにいるのか」「放射線治療を受けることになったが、私の担当医が専門医かどうか調べられないか」――。これらも、読者から最近届いた問い合わせの一部です。抗がん剤の副作用や放射線の過剰照射が心配で、専門医への期待が大変高まっているのを感じます。

2002年の医療法改正で専門医の広告が可能となった際、各学会は専門医のリストを明示することになりました。そのため、各学会のホームページで認定者リストを公表しています。放射線治療の専門医に関しては、「日本放射線腫瘍学会」が認定医と認定施設の名簿を出しています。乳がんのマンモグラフィ検診については、「精度管理中央委員会」で、画像の読影医や撮影���師の認定者リスト、認定施設リストを掲載しています。

一方、抗がん剤などがんの薬物療法などを専門とする医師については、現在、「日本臨床腫瘍学会」と「日本癌治療学会」がそれぞれ独自に専門医制度をつくり、今秋から来春にかけて第1回の試験・認定を行う予定なので、現在は正式な名簿はありません。ただ、「同じような専門医制度が並立するのは患者にはわかりにくい」として、一本化を求める声も上がっています。

また、日本の専門医制度は、各学会が独自に整備して医師を認定しており、レベルがバラバラという問題があります。これを改善して、質の担保を統一化しようとの動きも医学界で出始めてはいますが、早急な対応を期待したいと思います。

病院を比較したい

全国的にがん医療の質の向上を図る目的で、厚労省は2001年から「地域がん診療拠点病院」の指定を始めています。要件は「我が国に多いがんについて、地域におけるがん診療連携の拠点病院としての役割を果たすことのできる専門的医療体制を有すること」とされ、厚労省は既に指定された病院の一覧を公表しています。しかし、本当に名前と住所だけ。まだバラバラな各拠点病院の医療体制については、「日本医療情報公開推進協議J-MIDC」が、専門外来や治療成績の公開状況を調査、公表しています。また、独自の基準を定め、がんの種類別に「全国優良病院」を提案しています。

このほか、読売新聞の「病院の実力」調査では手術件数などの実績から、日経新聞と日経メディカルの「がん治療の実力病院」調査では生存率などのデータを集計して、病院情報を提供。

セカンドオピニオンの実際は?

闘病中の“情報戦”を闘う最大の武器と評した「セカンドオピニオン」ですが、「何を準備したらいいのか分からない」「どこへ行けばいいのですか」などという相談を受けることが大変多い状況です。そんな疑問に、「セカンドオピニオン・ネットワーク」のホームページが分かりやすく答えてくれています。中でも、「がんのセカンドオピニオンを上手に取るコツ」のページでは、セカンドオピニオンを取るまでの流れや医師に聞くべきことなどをまとめる「整理メモ」、様々な機関による「がんの相談電話窓口」なども紹介しており大変便利です。「市民のためのがん治療の会」では、まだ数の少ない放射線治療専門医によるセカンドオピニオンサービスを実施しています。

闘病生活を前向きに

患者・家族は誰でも、治療だけでなく「これからの生活はどうなるの?」「医療費はどれくらい?」「何でも語れる患者グループはどこにあるの?」といった悩みを抱えているもの。そういった悩みに応えるサイトに、患者会やセルフヘルプグループを検索できる「いいなステーション」があります。

私自身、当初は「相哀れむ」ような患者会は好きではないと思い込んでいましたが、患者だからこそ分かり合えることも多いと実感し、見直すようになりました。

かながわ・がんQOL研究会」のように誰でも参加できる講演会などを開催している団体もたくさんあります。同研究会では、がんとつきあう方法など患者・家族のための冊子も配布しています。

また、静岡がんセンターの「患者さんの悩みと解決法」のページでは、がん体験者の悩みや医療費負担等に関する実態調査の報告書や「がんよろず相談Q&A集」などが読めます。

ここに挙げたホームページなどは、あくまで私個人の主観によるもので、もっと有用なサイトなどがたくさんあると思います。リンク機能などを通じて自分のお気に入りページを見つけるなどして、納得して治療を受け、生活できるよう“情報戦”を乗り切りましょう。

本文中に紹介しているホームページ


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